遂に傘寿の大台に乗ったミシェル・ルグラン。ここでは彼の膨大な記録映像のなかから、気ままに選んだ6本をご紹介。古くは60年代から最新のもので一昨年の取材映像まで。実のところ意外にも多くのライヴ映像が商品化されているが、その大半が現在は廃盤。いずれ「ミシェル・ルグラン・ライヴ大全」的なDVDをまとめたいと夢想しつつも、なかなか敷居は高そうだ。(2012年2月24日更新分/選・文=濱田)
Michel Legrand Is Music
まずは2010年に制作された音楽ドキュメンタリーのティーザー映像から。クインシー・ジョーンズ、トニー・ベネット、バーブラ・ストライサンド、ペトゥラ・クラーク、ジョニー・マティス、ノーマン・ジュイソン、ジョン・ヴォイト等々ゆかりの人々に取材を敢行するも、素材チェックの時点でミシェルのお気に召さずティーザーだけが公開され、本編はお蔵になったという貴重なもの。彼のドキュメンタリーは過去にも複数制作されたが、とりわけ秀逸なのがフランソワ・レシャンバック監督によって撮られたTV特番(未ソフト化)。こちらはヘンリー・マンシーニやジーン・ケリー、エディ・バークレイら今や鬼籍に入った大御所との共演が見ものだ。権利関係から今後もソフト化の見込みはないが、別項のルグラン講座(全5回)のいずれかで上映予定。
Michel Legrand / 1964 (1965)
イエ・イエ・ガールズを従えて、歌い、踊る、若き日のミシェルの勇姿。才気煥発、あり余るエネルギーを放ちながら自慢の喉を披露している。本国で放送されたTV特番からの一幕(エンディング・パート)で、本編ではほかにサッシャ・ディステルやフランシス・ルマルク、コリンヌ・マルシャン、ソフィ・ドーミエ、ナナ・ムスクーリら楽曲提供した歌手が大挙して出演している。
Elis Regina e Michel Legrand / Summer Of 42 (1972)
毎年ブラジルで気の置けない仲間とのセッションを行うのが恒例のミシェル。今も年に数週間はブラジルで休暇を過ごすという彼が、今年没後30年を迎えた、在りし日のエリス・レジーナと共演した映像。歌うはミシェルの代表曲のひとつ「おもいでの夏」。ブラジルといえば、一昨年、イヴァン・リンスとアルバム制作に着手し、数曲共作したそうだが、結局企画は(本人らの意志とは別の理由で)頓挫した模様。
Sarah Vaughan and Michel Legrand (1972)
1972年、ロスのスタジオで歌うサラ・ヴォーンとミシェル。同年メインストリーム・レーベルで制作された『SARAH VAUGHAN SINGS MICHEL LEGRAND』はデイヴ・グルーシンやレイ・ブラウン、チャック・フィンドレイ、チャック・レイニーら辣腕ミュージシャンが脇を固めた。ここで歌われたのは映画「おもいでの夏」主題歌「SUMMER KNOWS」と「SWEET GINGERBRED MAN」の2曲。エリス・レジーナのヴァージョンとの聴き比べをお楽しみあれ。
Oscar Peterson, Michel Legrand & Claude Bolling / Watch What Happens (1984)
才能を認め合う3人のピアニスト、ミシェルとオスカー・ピーターソン、クロード・ボリンが組んでピアノの連弾を披露したプログラム「GRAND PIANO」は、米国を中心に各地で喝采を浴び、それに感化されたのが、前田憲男、佐藤允彦、羽田健太郎の三者による「トリプル・ピアノ」だった(とは筆者が生前の羽田氏から聞いた逸話)。オスカー&ミシェルによる名演「WATCH WHAT HAPPENS」はジャック・ドゥミ監督映画「シェルブールの雨傘」のサイド・テーマ曲。もとは同監督作「ローラ」のために書かれたものだ。。
Michel Legrand & Stephane Grappelli / How High The Moon(1984)
最後はミシェルがポール・ミスラキと並び尊敬して止まなかった名ヴァイオリニスト、ステファン・グラッペリとの共演映像。グラッペリ、実はピアノの名手でもある。ロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールで行われたコンサートからの映像で、曲は1940年のミュージカル『TWO FOR THE SHOW』のために書かれた「HOW HIGH THE MOON」。グラッペリはノンクレジットながらミシェルのオーケストラ・アレンジのアルバムやサントラの録音に度々参加している。
*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。 |
|