てりとりぃ放送局アーカイヴ(2012年5月11日〜2012年5月25日分)

 クラシック音楽の敷居の高さにときどき躊躇する方というのは多いんじゃないかと推測します。実は当方もそのクチでして、聴けばそれなりに楽しいのに、のめり込むほどになったことがあまり無いんです。でもその「それなりに楽しい」のキッカケというべき機会は巷に豊富に溢れていますよね。というわけで当方は、こんなカンジでムソルグスキーに親しんだりしています。今回の聴き比べのお題はもちろん「展覧会の絵」から「THE OLD CASTLE」です。我ながら邪道、ですよね。でも楽しいですよ。(2012年5月11日更新分/選・文=大久)


Berlin Philharmonic Orchestra conducted by Karajan / Ilvecchio Castello (1986)

 もちろん「展覧会の絵」はラヴェル編曲によるフルオケのバージョンが一番有名ですよね。というわけでカラヤンの指揮によるベルリン・フィル1986年の映像。余談ですが、年末年始になると東京MXテレビではカラヤンのコンサートを連日バンバン放送するわけですが、ご覧のように重々しい映像(ただしこの音と映像はアテフリだとのこと)でして、とても厳粛なムードにさせられます。


Emerson, Lake And Palmer / The Old Castle (Blues Variation) (1971)

 ELPが「展覧会の絵」をまるまるレパートリーにしていたことは、そんなにプログレ・マニアでもない当方でも昔から知ってましたが、いざ聴いてみればこんなカンジのヘヴィー・サイケなオルガン・ロックだったわけで、スンナリと楽しめましたね。生粋のキザ野郎、キース・エマーソンは、当方がお会いした時はすっかりフクヨカなオッチャンでしたが、最近も日本の某雑誌編集長に恋の悩み相談をするくらい(笑)少年の心をもったロック・スターです。

Isao Tomita / The Old Castle (1975)

 シンセサイザー奏者、冨田勲が1975年に編曲した「古城」のシンセサイザー・バージョンです。おそらく当方の百倍くらい濱田編集長がお詳しいハズですが、もともと1966年、手塚治虫が「展覧会の絵」からインスパイアされた実験アニメーションを制作した際に冨田勳は管弦楽バージョンとして同曲を編曲し、そのアニメのために提供しています。そちらの手塚アニメ版は現在手塚プロ公式HPにて見る事ができます。


Orlando Riva Sound / Disc Mussorgsky (1977)

 ドイツのシンセ・ディスコ・ユニット、ORSは、アマンダ・リア、ジョルジオ・モロダー、後にはラトーヤ・ジャクソン等とも共作をしたクリエイター、アンソニー・モン率いるユニットですが、彼らの77年のデビュー盤『MOON BOOTS」にこのムソルグスキー「古城」のディスコ・アレンジ曲が収録されています。同盤はアメリカではサルソウルから発売されクラブ・ヒット。2001年にイタリアのメリディアン・プロジェクトというフィルター・ハウスのアーティストがこの曲をサンプリングしています。


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 いつもこの「放送局」ではカヴァー曲を紹介することが多いんですが、別に「カヴァーこそ至高」などと言うつもりは全くありません(ただとっかかりにしやすいから、という理由でしかありません)。それと全く同様に「オリジナルこそ究極」などというつもりもありませんが、今回はオリジナルにあえてこだわって曲を紹介してみようと思います。ロックともソウルともジャズとも呼べるこの時代の音楽は、その古くささも含めて面白いんですよね。(2012年5月18日更新分/選・文=大久)


Santo & Johnny / Sleep Walk (1959)

 59年に2週連続全米1位になったインスト「SLEEP WALK」。数々のカヴァーが残されてますが。イギリスであればシャドウズの、アメリカであればヴェンチャーズの、80年代以降であればストレイ・キャッツ/ブライアン・セッツァーのレパートリーとして馴染み深いと思います。知り合いのドイツ人に聞いたところ「老若男女誰でも知ってるオールディーズ」と言ってました。日本での知名度を考えると、ちょっと意外ですよね。なんとオリジナルのサント&ジョニーの動いている動画があります。音源もライヴです。


Roy Brown / Good Rockin' Tonight (1947)

 40年代後半に、スロー・ブルース(と当時は呼ばれたのだそうです。でもプレスリーの登場以降急速にこのスタイルは廃れたとのこと)、ジャイヴ・スウィングのシンガーとして人気があったロイ・ブラウンの人気曲です。もちろんこの曲はエルヴィスの代表曲にもなり有名ですが、当方的にはロバート・プラント率いるハニードリッパーズの「ROCKIN' AT MIDNIGHT」(一部歌詞と題名を変えてるが同じ曲)が思い起こされます。


Phil Phillips / Sea Of Love (1959)

 ハニードリッパーズと言えばこの曲を出さないわけにはいきません。なんとロバート・プラントの「一番有名な曲」はツェッペリン・ナンバーでもグラミーをとったカントリー作品でもなく、この「SEA OF LOVE」なんだそうです。他にもイギー・ポップ、トム・ウェイツ、キャット・パワー等もカヴァーを残してますね。フィル・フィリップスのオリジナルは59年にチャート2位まで上がった大ヒット曲ですが、印税は買い取りだったそうで、本人はちょっとだけまとまったお金を受け取ったあとは一銭も得ていない、とのこと。

Tiny Bradshaw / The Train Kept A-Rollin' (1951)

 ジャズ/ブルース/ジャイヴのシンガー、タイニー・ブラッドショウの一世一代のヒット曲です。この曲ははジョニー・バーネットがR&Rトリオ時代にカヴァー(56年)し、それをベック在籍時のヤードバーズがカヴァー(65年)し、そしてそれをエアロスミスやらシナロケやらモーターヘッド等がカヴァーし、ということでR&Rのスタンダードになった曲です。タイニー・ブラッドショウは58年に53歳で亡くなっていますが、死の直前にはロイヤル・ティーンズ「SHORT SHORTS」のカヴァーも残しています。

Royal Teens / Short Shorts (1958)

 そんなワケで「SHORT SHORTS」のオリジナルを。日本ではすっかり金曜深夜のテーマ曲になったこの楽曲は57年発表作ですが、動画は58年の映画『LET'S ROCK』に出演した際のもので、演奏は口パク。当初はてっきりこのギターが(当時14歳だった)アル・クーパーかと思ってたんですが、映画の時には殆どバンドには参加していなくて、ここでギター弾いてるのは別のビリー・ダルトンという方だそうです。偉大なる一発屋のロイヤル・ティーンズですが、ボブ・ゴーディオ(P)はこの後フォー・シーズンズに、アル・クーパーはその後ロックの大物になったのは有名ですね。

*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。


 歌に「踊り」は付きものです。よね? と自分で判っていながらも、音楽オタクである当方はなぜか踊りっていうモノにまったく詳しくありません。技術的にどうとかは勿論ですが、ミュージカルがどう、という世界にも馴染みがないんです。「群舞」なんていう言葉も、槇村さとる「ダンシング・ジェネレーション」で知ったくらいですし。スイマセン。それなのに「踊り」をテーマに動画を集めてみました。つまり「そっちの道に詳しくなくても、問答無用にコリャスゲエと思えるもの」をご紹介したいなあ、と思ったわけです。お楽しみいただければ幸いです。(2012年5月25日更新分/選・文=大久)


Spencer Davis Group / Keep On Running (Live 1966)

 スティーヴ・ウィンウッド18歳。お若いですねえ。バンドのデビュー・ヒットとなったこの曲は65年発表ですが、動画は翌66年、フランスのTV番組に出演して演奏した時のもの。バンドの演奏などどこ吹く風、とばかりにシャカリキに踊るチェック柄のお兄さんお姉さん方のモンキー・ダンスの熱に圧倒されたかどうかは定かではありませんが、演奏中ウィンウッドはファズを踏むのに失敗していますね(笑)。白黒動画なのに、やけに目がチカチカしてしまいます。


Mina / Tristeza (1968)

またまた登場イタリアの歌姫ミーナ嬢のテレビ出演時のパフォーマンスです。個人的に「これがマツケンサンバのネタなんじゃねえの?」と思い込んでいるのですが、真偽の程は定かではありません。花魁(おいらん)ルックでスパイラルの傘をグルグルと回しちゃう群舞の皆さんのおかげで、またしても見てるコッチの目が回りそうです。曲はブラジリアン・クラシックの「トリステーザ(Tristeza/Goodbye Sadness)」です。最後のキメ・ポーズを間違えて、ハニカミながら足を組み替えるミーナ嬢の、なんと可愛らしいことでしょう。

Instant Funk / Got My Mind Made Up (1979)

さあ、強烈なダンス動画が登場です。サルソウルの看板ファンク・バンド、インスタント・ファンクの大ヒット曲(米ダンス/R&B両チャートで1位)の公式PVです。が、恐ろしいことにこのPVはヴォーカルを全部カットした長尺インスト版で曲が披露されており、不気味なメイクと衣装をまとったメンバー達が曲中延々とフリースタイルのダンスを披露する、という奇妙奇天烈この上ないビデオになっております。一体当時のサルソウルの人達/NYのシーンの人達は何を考えていたんでしょうか。妄想するだけで楽しくて仕方ありません。


Kylie Minogue / Dancing Queen (at Sydney Olympic 2000)

「ダンシング・クイーン」は言わずもがなの「完璧な名曲」ですが、ここではシドニー五輪の閉会式でカイリー・ミノーグが披露した感動的なカヴァーを。コレ凄すぎです。多勢のダンサー達が出てきますが、そんなのに一切目を向ける暇もなく、威風堂々同曲を歌うカイリー嬢に釘付けになります。この曲をこれだけ本気カヴァーできる歌手ってのは、他にはいないでしょうね。余談ですが、2012年スーパーボウルのHTショウではマドンナが(可愛らしい服装で)頑張ってましたけど、数で押し切ろうとするあの姿勢はいただけません。この動画を見て反省してもらいたいです。

みくみくにしてあげる♪【してやんよ】(2009)

上で偉そうな事を言っておきながら、最後はゲテモノです。申し訳ありません。これは「初音ミク」を起用したGOOGLE CHROMEのTV-CFの中でも使用された映像(※実はまったく同じではありません。新しく作り直した「ほとんど同じ動画」がCM内では流れていました)で、表題曲を実際に人間が踊ってみた、という設定の動画。世界中のYOUTUBEユーザーが「この女の子は誰?」とコメントをつけてるのが面白いですが、実際にはこの少女(小倉唯/当時14歳)は右のアニメのモーションアクターを担当したタレントなので、このダンスの「元ネタ」ということになります。後ろの痛車とか、ネギとか、タイトルや歌詞とか、いろいろと註釈を入れたほうがいいのかもしれませんが、それはまた別の機会に。

*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。