やっぱマックイーンといえばトライアンフを乱暴に駆って欲しいなあ、なんてことも考えるわけですが、それでも68年の映画『華麗なる賭け』は、彼にとっての代表作のひとつでもあるのも事実。そして同映画はミシェル・ルグランの美しい音楽でもよく知られる作品で、ノエル・ハリソンが歌う主題歌「風のささやき」はルグランの名前を知らない人でも聞いたことがある、という程の歴史的名曲ですよね。今回はその映画音楽のスタンダード「風のささやき」のバリエーションを集めてみました。(2012年9月14日更新分/選・文=大久)
Dorothy Ashby / The Windmills of Your Mind (1969)
ジャズが精神性を帯び始めた60年代末、「ハープ奏者」という珍しいスタンスでありながらも、カデットというレーベルに見事なマッチングを見せたドロシー・アシュビー。69年のアルバム『DOROTHY'S HARP』で「風のささやき」をカヴァーしています。もちろんプロデュースはリチャード・エヴァンス。エレピはオデル・ブラウン。ファンキーです。そして美しいです。
Oscar Peterson Trio / The Windmills Of Your Mind (1970)
ルグラン本人との交遊も知られる、ジャズ・ピアニスト、オスカー・ピーターソンの名作『WALKING THE LINE』(70年)収録の、「風のささやき」のカヴァー。スリリングで激しさを加味した演奏なので、本家のイメージとは離れたものかもしれませんが、『華麗なる賭け』がサスペンス映画だ、と考えると、これはアリですよね。それにしてもドイツMPS、凄く音がいいですねえ(MPSはMOST PERECT SOUNDの頭文字から来てるそうなので、当然なんですが)。
Barbara Lewis / The Windmills of your Mind (1970)
アトランティックR&Bのディーヴァとして有名なバーバラ・ルイスですが、こちらはスタックス・レーベルに移籍後に発表した、70年作『THE MANY GROOVES OF』収録の「風のささやき」のカヴァー。後にギャングスターがこのヴァージョンをサンプリングしたことで、ヒップホップ・ファンにも馴染みのあるトラック。スタックスにしては珍しい、ちょっと湿り気のあるドラムの音色が最高ですね。
Rigmor Gustafsson / The Windmills of your Mind (2006)
スウェーデンの女性ジャズ・ヴォーカリスト、リーグモル・グスタフソン(とお読みするのだそうです)。現代の北欧ジャズのスターとなった彼女ですが、2006年にミシェル・ルグラン作品集『ON MY WAY TO YOU』を発表(発売はドイツのACTというレーベル)していますが、そこに収録された「風のささやき」のカヴァー。そして正統なジャズ・アレンジなのにファンキーなのも嬉しいところ。
Sting / Windmills of Your Mind (1999)
最後は、1999年のリメイク版『華麗なる賭け』の主題歌となった、スティングのカヴァー・ヴァージョン。リメイク版のサントラは大半がビル・コンティによるインスト曲でしたが、それでもやはりこの曲は外すわけにはいかなかったようです。そりゃあそうですよね。スティングは2010年のミシェル・ルグラン音楽活動50周年記念コンサートにも出演し、「WHAT ARE YOU DOING FOR THE REST OF YOUR LIFE」を共演してもいます。
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