てりとりぃ放送局アーカイヴ(2012年9月28日〜2012年10月12日分)

 今回のミシェル・ルグラン来日公演は、ピアノ・トリオでのステージ、それから新日本フィルとの共演ステージ、という構成だそうなので、随分アダルトなものになると思われます。が、今回の「放送局」は、ミシェル・ルグラン関連のファンキー・トラックを集めてみました。“ルグラン・ジャズ”ならぬ“ルグラン・ファンク”ていうカンジでしょうかね。(2012年9月28日更新分/選・文=大久)


Michel Legrand / Un Homme Est Mort (1972)

 近年レア・グルーヴとして脚光を集め、アナログ復刻もされた72年録音の『パリから来た殺し屋』(英題:THE OUTSIDE MAN)のテーマ・ソング。あきらかに米国のブラック・シネマ音楽の影響下にあるアレンジで、同時期のハービー・ハンコック作品を思わせるわけですが、ミシェル・ルグランの楽曲にファズ・ワウが登場する、というだけで痛快です。

Michel Legrand / Onyx Bar(1972)

 『パリから来た殺し屋』のサントラはアルバムが存在せず、音盤化されたのは7インチのAB面2曲のみなのだそうです。フルCD化されたら嬉しいなー、とは思いますが、じゃあそのCD化は一体誰の仕事かと言えば、そりゃあ世界広しといえど濱田編集長その人しかいないわけで(笑)。さて、こちらはそのB面曲「ONYX BAR」。エロい喘ぎ声が挿入されたこの曲は70年代的なキッチュさがプンプン漂うファンク曲ですね。

Michel Legrand / The Deep Blue C (1972)

 ベル・レコードに残されたルグラン音源はファンキーなものが多いですよね。こちらはアルバム『BRIAN'S SONG』(72年/イギリスでは風車ジャケで、タイトルも『THEMES & VARIATIONS』と変更)収録曲「THE DEEP BLUE C」。アコギがザンザカザンザカとかき鳴らされる中でのオーケストラ・アレンジという、なかなか珍しい構成も聴き所ですが、所謂一般的な「ジャズ・ファンク」とは一線を画すそのアレンジは、今もってなお斬新でもあります。

Michel Legrand / Rockin' Chair (1973)

 73年の映画『愛のそよかぜ/BREEZY』のサントラより。流麗なストリングス・アレンジで知られるルグランですが、こちらのようにファンキーなブラス・アレンジの曲も得意ですよね。主題歌「BREEZY'S SONG」はシェルビー・フリントの歌唱による、メロウなアコースティック・ソングですが、それに続いて登場するのがこのブラス・ファンクだ、というのも面白いですよね。

Michel Legrand / Pieces Of Dreams (1975)

 『ミシェル・ルグランの世界』という邦題のついたアルバムは2作存在しますが、こちらは75年イギリス録音で、原題『THE CONCERT(コンチェルト)LEGRAND』の最後に収録された1曲。オリジナルは『美しき愛のかけら』という映画の主題歌(70年/主題歌はペギー・リーが歌唱)。同盤はサンプリング・ループ・ネタとしても知られる一枚です。スカイ・ハイ・プロダクションを思わせる、壮快なアレンジが素敵です。

Michel Legrand / Les Baladins Du Siecle D'Aujourd'Hui (1978)

 ルグランは78年にディスコ・アルバム『DISCO MAGIC CONCORDE』を出しています。アレンジを手がけたのはエルヴェ・ロア。当方は全く知らなかったのですが、イージーリスニング関係の作品を沢山制作してる人で、クインシーの御弟子さん筋にあたるアレンジャーとのこと。そしてルグランの実の息子さんなんだそうです(ネタ元は、もちろん濱田氏)。あまりディスコ音楽としては評価がよろしくないアルバムですが、この曲はチャーミングなリフ(「MR. BIG STUFF」を思い出させますね)がイカしたファンク曲。

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 トニーノ・リッチ監督の同名イタリア映画とはまったく関係ありません。80年代の終わり頃から90年代初頭にかけて、イタリアで大人気を誇ったバラエティー番組「コルポ・グロッソ」は、ドイツ、イギリスでも「TUTTI FRUTTI」というタイトルで親しまれたのですが、日本でも90年代末に「ねむれナイト コルポグロッソ」という番組名で放映されました。番組の詳細はこちらをご覧頂くとして、今回はその伝説のセクシー・クイズ・バラエティー「コルポ・グロッソ」の名曲集です。不快に思われる方もいるかもしれませんので先にお断りしますが、それなりにエロいので、お子様には見せないで下さい。(2012年10月5日更新分/選・文=大久)


Sigla Colpo Grosso

そういえば最近はTV番組で女性の胸を映すことは御法度ですもんね。同番組のオープニング映像ですが、実はこれでも、同番組の映像の中ではとてもお洒落で節度ある映像です。「コルポ・グロッソ」は番組アシスタントの「CIN CIN GIRLS」は勿論のこと、クイズ回答者の一般人まで(獲得ポイントを稼ぐために!)、男女を問わずにノリノリでストリップ・ダンスを披露する、という奇妙奇天烈なクイズ番組でした。

Ragazze Tutti Frutti / Cin Cin

アシスタントのCIN CINガールズ改めTUTTI FRUTTIガールズによる、番組のメインテーマ曲。なんといっても当方がこの番組に夢中になったのは、ユーロ/イタロ・ダンスがこんな形で残っていたなんて!という音楽面が大きかったです。番組中イタリア語で「CDも発売されるよ」なんてテロップを見つけたときは狂喜したものです。その番組を見て15年ほど経った現在でも、そのCDをいまだに発見できていませんが。ちなみにこちらは番組中同曲を披露するガールズの動画です。

Ragazze Tutti Frutti / Il Boat Del Mambo

同じくCIN CINガールズによる、ファンカラティーナ・トラック。これらの曲以外にも、同番組は音楽(&ダンス)を多分に取り入れたバラエティ番組なので、多くのオリジナル曲が残されているのですが、どれも80年代ダンス・サウンドの「オイシイとこどり」な、ウキウキ・ソングばかりで最高です。初期には(後に人気歌手/女優となった)エイミー・チャールズも在籍していました。

Amy Charles / Crazy For You

番組のお色気を担当するCIN CINガールズはオーディションで選考されたそうなのですが、その時の応募条件は「素人であること」。つまり、このエイミー・チャールズも同番組出演時はシロートさんだっとことになります。なので、マドンナ「CRAZY FOR YOU」のカヴァーを披露するこちらの動画でもお判りのように、歌は上手ではありませんでした(笑)。ちなみに同番組では彼女がシンディー・ローパー「TIME AFTER TIME」もカヴァーしてることが確認できます。

C'hai presente Colpo Grosso, Umberto Smaila

最後は番組エンディングの、司会者ウンベルト・スマイラによるおマヌケで最高なヒップホップ・ファンク。ご覧のように一応エロエロにエロい番組ではありますが、ほとんど(性欲、という意味での)セクシャリティを感じさせない、どこまでも陽気でバカっぽく「楽しい」番組でした。「暑いか・寒いか」等といったクイズ形式でもわかるように、殆どクイズ番組としては意味のないプログラムでしたが(笑)。

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 以前「本人が登場する教則ビデオ」という動画の特集をやったことがありますが、今回は「楽器のデモンストレーション」レコード音源を集めてみました。演奏してるのは有名な人もそうでない人もいますが、実は「こんなとんでもない新製品ができました」という宣伝に終止するこれらの音源はある意味「音楽の裏歴史」とも呼べるモノでもあります。現代ではその役割は完全にYOUTUBEというメディアに取って代わりましたが、やってることは50年前と全く変わりないんですよね。(2012年10月12日更新分/選・文=大久)



Maestro Fuzz-Tone FZ-1 Demo Record (1962)

 1962年、世界初のファズ製品として発売された、ギブソン/マエストロ・ブランドのFUZZ TONE FZ-1。この機材が「ぶっ壊れたミキシング・コンソール」のサウンドを元に開発されたのは有名ですが、ともかく、このファズこそが全ての「歪み」の元となるものです。当方はチッポケな「ファズ屋」でもあるので、この機材に関していくらでも喋り続けることが出来ますが、それは別の機会に(笑)。

Cry Baby Wah Wah Demo Record by Del Casher (1967)

  1966年、アメリカのトーマス・オルガン社の工房にて「アンプの回路修正を模索」している最中に、ワウワウが開発されました。「これ、足踏みペダルに入れたら面白いよね」と言ったのは、デル・キャシャーというギタリストでした。結果、足踏みワウ・ペダルは翌年商品化されました。こちらはそのデル・キャッシャーによるワウ・ペダルのデモ演奏レコード。日本人はこれを「ワウ」と言いますが、英米では勿論「ワーワー」と呼びます。ちなみにドイツでは「WHA WHA」とか「WOW WOW」と書いたりもします。

Moog Synthesizer Demonstration Record (1971)

 シンセサイザーの元祖、ともいえるロバート・モーグ博士の開発したMOOGシンセサイザーのデモ・レコード。当時のMOOGシンセはモジュラー・タイプであり、単体では楽器の体を成しませんが、組み合わせて使う事により「様々な」音色を作り上げられる電子機器でした。開発されたのは64年ですが、69年時点でのシステム価格は最低システムでも220万円(当時)したそうです。シンセ・アルバム『スイッチト・オン・バッハ』(68年)の成功を受けて世界に広まったこの楽器は、今も大人気の機材ですね。

Rhodes Piano Demo Record by Herbie Hancock

 正確な発表年が不明なんですが、こちらは70年代に頒布された、フェンダー・ローズのデモ演奏レコードで、何と言ってもあのハービー・ハンコックによる演奏を収録している、という驚きの1枚です。75年には同機種はフェンダー社から枝分かれしたローズ社での製造/販売となるので、それ以降の音盤、ということになりますが、そんなことよりも「WATERMELON MAN」がこんな形で聞けるのは嬉しい限りです。


成毛滋/GRECO ROCK GUITAR METHOD

 最後は至高の「オッサンホイホイ」ネタ。70年代にGRECO製ギターについていたロックギター教則カセット音源。最初期のものはソノシートが、次にカセットが添付されました。成毛滋氏(07年没)は洋楽の情報が少なかった70年代に日本で圧倒的な影響力を誇った人ですが、その大半がこのカセットによるものなのは間違いないでしょう(現在は氏の教義に関して「事実と違う」ことが多々指摘されるようになりましたが)。音源は72年に文化放送スタジオで収録、冒頭のバンド演奏は成毛滋(G)、高中正義(B)、つのだひろ(DR)。

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