 2011年末、ディス・モータル・コイル(以下TMC)のボックスが発売になりました。が、残念ながらメディアで取り上げられることは殆どありませんでした。24ビットHDCDで、ジャケもワザワザ日本の一九堂印刷で最高級の紙ジャケを制作、という採算度外視の「アート」の箱。知らない人が見れば、ただのブキミな真っ黒い箱でしかありませんが。今回はたったアルバム3枚で伝説になった偉大なユニットTMCの特集。過去に彼らが取り上げたカヴァー曲を集めてみました。耽美、ですね。(2012年12月21日更新分/選・文=大久)
This Mortal Coil / Another Day (1984)
ブリティッシュ・フォークの雄、ロイ・ハーパーの70年作のカヴァー。この曲はピーター・ガブリエルやケイト・ブッシュもカヴァーしていますね。ちなみにTMCはあの4ADレーベルの社長(とはいえ当時まだ30歳の)アイヴォ・ワッツ・ラッセル自身によるスペシャル・プロジェクトで、メンバーは決まっていません。とにかく「社長の好きなことをやる」という豪快なプロジェクトでした。スゲエ。
This Mortal Coil / Song to the Siren (1984)
ティム・バックリー、1970年作のカヴァー。ヴォーカルを取るのは同じ4ADの人気バンド、コクトー・ツインズのエリザベス・フレイザー。あのデヴィッド・リンチ監督が映画『ブルー・ベルベット』のためにどうしてもこの曲を使用したい!と懇願するもあっけなく拒否され、代わりに新規制作されたジュリー・クルーズの曲がヒットした、なんてことも知られています。
This Mortal Coil / My Father(1986)
英インディー・チャートでNO.1、半年以上チャートインしたという記録を作ったファーストから2年後に発売されたセカンドから。ジュディー・コリンズ68年発表曲のカヴァー。ヴォーカルを担当しているのは、後に「MAKE IT ON MY OWN」のクラブ・ヒットでUKソウルの人気シンガーとなったアリソン・リメリック。彼女がスタイル・カウンシル『OUR FAVOURITE SHOP』への参加の後にやった仕事がこの作品への参加、でした。
This Mortal Coil / Late Night (1991)
3作目、TMC最後の作品で、最高傑作(で間違いないと思います)となった91年の『BLOOD』より、シド・バレット69年作のカヴァーです。このPVにも映っている女性がこの曲のヴォーカルですが、彼女は80年代〜90年代にラフ・トレードで活動した耽美系グループ、シェリアン・オーファンのヴォーカリスト、キャロライン・クロウリー。この名作を最後に、TMCは幕を閉じることになりました。
The Hope Blister / Spider And I (1998)
が、なんと98年、社長のワガママふたたび。同じ主旨で今度はTHE HOPE BLASTERという新ユニットで、作品が発表されました。こちらはその『…SMILES, OK』収録の、ブライアン・イーノの77年作のカヴァー。同アルバムは全曲カヴァーで、他にもデヴィッド・シルヴィアン、ジョン・ケイル等の「イカニモ」なカヴァーを収録。しかしアイヴォ・ワッツ・ラッセルは翌99年に4ADの一切の権利を譲渡し、その後アート/写真に関する出版事業へと転身しています。
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