幼少の時分から、東映の「ヒーロー大集合」もの、東宝の「怪獣大集合」ものが大のお気に入り。そして、ことポップ・ミュージックの範疇においても「二大スター、夢の共演」といった企画には今もって特段の興味をそそられてしまう。有り体な企画ものゆえ、それらは必ずしも名作、名演とはいえないものに仕上がってしまう訳だが、それでもなお、「共演」しているという事実だけで何度も聴き直してしまう。良い部分を少しでも抽出しようとしてしまう。豪華共演ならではの「妙」と言おうか。ぜひ皆様も、耳をそばだて、何度もリピートしてそれを楽しんで戴きたい。(2013年1月25日更新分/選・文=関根)
Frankie Valli & the 4 Seasons - Beach Boys / East meets West (1984)
犬猿の仲と言われた両グループ唯一の共演作。マイク・ラヴとフランキー・ヴァリが交互にヴォーカルを担当、随所に両グループのハーモニーが折り重なるという楽曲構成となっている。オーラスにはブライアン・ウィルソンのパートまで用意されておりさすがに涙腺も緩むが、発表年の時勢をかってアレンジが完全に80'sのそれになっているのが残念なところ。ボブ・クリュー=ボブ・ゴーディオ作品ながら楽曲のひねりも今ひとつだ。「ドント・ウォーリー・ベイビー」や「オーパス 17」のアレンジを思い浮かべながら、この曲のあるべき姿を何度夢想したことか。いっそこの作品のヴォーカルトラックのみを使用した別ヴァージョンを山下達郎氏に制作して戴きたい、と、これまた夢想。
Brian Wilson / What Love Can Do (2007)
米・ディスカウント・ストア、ターゲットから発売された『ニュー・ミュージック・フロム・アン・オールド・フレンド』に収録された、バート・バカラック&ブライアン・ウィルソン、驚きの共作曲。どちらがどのパートを担当したのかは定かではないが、ABメロ~サビにブライアン。サビ直前とサビ終結部にAOR期のバカラックを感じるのだが、いかがだろうか。ブライアンのヴォーカルは何かを突き抜けたような艶と伸びがあり、楽曲全体の完成度も感動的なほど高レヴェルだ。
Michael Franks / Never Say Die (1983)
ジャジーなAOR~ソフト&メロウの二大巨頭と言えば、マイケル・フランクス、ケニー・ランキンの名を即座に挙げる方は多いはず。そんな二人がマイケル・フランクスのアルバム『パッション・フルーツ』収録の2作品で共演していることは意外なほど知られていない。もっとも、ここでのケニー・ランキンは完全にバックヴォーカルに徹しており、クレジットを見なければそれと気づけないのも無理からぬ事実ではある。──以上を踏まえ、耳をそばだて、あるいはヘッドフォンでこの楽曲をじっくりと聴いて戴きたい。声質が似ていることから判別は容易ではないが、Aメロのカウンターヴォーカルがケニー・ランキン、そして後半の大サビでは二人の見事なハモりを聴き取ることができるはずだ。
Ivan Lins y Luis Alberto Spinetta / Muchacha Ojos de Papel (1984)
中南米音楽を日常的に親しむようになった今、イヴァン・リンスとスピネッタが共演していたという事実を知った時には、特段の驚きがあった。ブエノスアイレスはルナパークで開催されたこのライヴ。イヴァンはスピネッタが69年、アルメンドラ時代にものしたヒット・チューンを共に歌唱。終盤に向かうにつれ、観客の興奮が高まって行く様子が存分に伝わってくる。鳴り止まない拍手、怒濤のように湧き上がる人々の合唱。ポルテーニョのみならず、これが歴史的名演であることは誰の耳にも明らかだ。
Lio & France Gall / Be My Baby(1984)
60年代イエ・イエを先導したフランス・ギャルと80年代フレンチ・ニューウェイヴの立役者リオのコラボレイト映像。新旧のフレンチ・アイドルが王道の60's・ガール・ポップ作品をカヴァーするという、これは正に企画ものの極み。リオはこの時22歳、デビューから4年目と油の乗った時期。一方のフランス・ギャルは36歳、夫ミシェル・ベルジェ・プロデュースの下、コンテンポラリーなポップ~ロック作品を精力的に発表し続けていた時代にあたる。往年のフランス・ギャル特有の歌声はさすがに影を潜めてしまったが、ここでは活きのいい後輩と楽しそうに踊る彼女の姿を素直に楽しもう。
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