「スターダスト」。これ以上のはねえだろ、というくらいスタンダード・ソングの王道中の王道曲ですよね。今回はその「スターダスト」の聴き比べなんですが、この曲が生まれてから、それほど時間が経っていない時期のモノに限って選んでみました。今では「ジャズ・バラードの定番」的に扱われますが、まだそんなカンジに受け止められる前のもの、です。よってシナトラもナタリー・コールも平井堅も出てきませんが、純粋にこの名曲のメロディーとアレンジをお楽しみいただければ、幸いです。(2013年5月31日更新分/選・文=大久)
Isham Jones / Star Dust (1930)
「GEORGIA ON MY MIND」や「HEART AND SOUL」でも有名な作曲家、ホーギー・カーマイケルによって1927年に作曲された「STARDUST」。実はこの曲は彼が夜中星空の下を歩きながら元カノのことを思い浮かべて作曲した、という話が残されています。ったく(笑)。最初の録音は27年10月31日で、カーマイケル本人が友人等とスウィング調で録音したインストで、シングルのB面曲でした(Gennett 78, 6311-B)。ちょっと前までその音源はYoutubeにもあったんですが、今消えてしまったようなので、ここでは30年に録音されたアイシャム・ジョーンズによるセンチメンタルなスウィング版を。
Bing Crosby / Star Dust (1931)
この曲に歌詞が付けられたのは、1929年。作曲家のカーマイケル自身のアイデアだったそうですが、作詞をしたのはミッチェル・パリッシュという人で、後に「ムーンライト・セレナーデ」にも歌詞を付けた人です。ヴォーカル曲としてこの「STARDSUT」を有名にしたのは、31年、最もスロウなバラードとしてこの曲を歌い上げたビング・クロスビーでした。この歌ヴァージョンが大ヒットしたことにより、以降「バラードの大定番」として数多のシンガーに取り上げられるようになりました。
Coleman Hawkins, Django Reinhardt, Glappelly / Stardust (1935)
ジャンゴ・ラインハルトは生涯2度「STARDUST」を録音しています。コチラはちょうどパリに移住していた時期のコールマン・ホーキンス(SAX)とのセッションで残された35年5月2日録音ヴァージョン。個人的に、最も好きな「STARDUST」のヴァージョンはコレなのですが、ちょっと面白いのはピアノを担当しているのがあのステファン・グラッペリだ、ということでしょうか。ジャンゴは同年11月25日に、ガーネット・クラーク(P)とのセッションでも同曲を残しています。
Hoagy Carmichael / Star Dust (1942 / Decca)
さて、メガ・ヒットとなった「STARDSUT」ですが、作曲者ホーギー・カーマイケルは33年にはピアノ・ソロ・バージョンを、そして42年に自ら歌をフィーチャーして再録音を残しています。よりスロウなバラード・アレンジで、しかも歌入りのヴァージョンで、というワケですね。元々NYのティンパン周辺の人でしたが、この頃は西海岸のLAに移り住み、ジャズ・クラブの箱バンでピアノを弾いていたそうです。この42年版では自ら歌と口笛も披露しています。それにしてもこの42年録音版、メチャ難しいメロディーに変わってますね。
美空ひばり / Stardust (1953)
最後にオマケ。個人的に「STARDUST」と言えば「北野ファンクラブ」のOPを忘れることは出来ません。歌っていたのは美空ひばりで、番組では『ナット・キング・コールをしのんで ひばりジャズを歌う』に収録の65年録音版が採用されていましたが、こちらはその12年前、彼女が16歳の時に残したテイク。訳詩は藤浦洸、アレンジは馬渡誠一。ナット・キング・コールが歌った(57年)よりも先に取り上げていたことになりますね。
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