てりとりぃ放送局アーカイヴ(2013年10月4日〜2013年10月18日)

 先日iPhoneとYouTubeを使った曲探しの記事を書いた真鍋です。今回は放送局のスペースをお借りして、僕が実際に見つけたイイ曲を紹介いたします。これらの曲を聴いていると、日本で言うところの“歌謡ポップス”が同時期に世界各地でも生まれていたという事実を改めて思い知らされます。現地の言葉、現地の音楽と結びついたポップスの調べ、ワールド・ミュージックともちょっと違う、初めて聴いた気がしない不思議な感覚をどうぞ。(2013年10月4日更新分/選・文=真鍋新一)


Golden Kids / Hej, pane zajici!

 ザ・ピーナッツの動画を観ていたら同じ女の子2人組ということでオススメされたのがこちら。実際はさらに男性1人を含む3人組でした。タイトルが読めずに国さえ特定できなかったのですが、チェコ語のわかる友人のおかげでようやくチェコスロヴァキアのグループであることがわかりました。現代の女の子たちがパーティーの余興でこの曲を歌うホームビデオや「歌ってみた」的な動画も多数見つかるので、彼の国では超有名曲のようです。

Marta Kubišová & Helena Vondráčková / Oh, baby, baby

 先ほどのGolden Kidsから男性を抜いて、ヘレナ・ヴォンドラチェコーヴァとマルタ・クビショバのデュエットで歌われている1曲です。こちらのがよりピーナッツ的というか、寄り添って歌う姿が素敵です。シルエットの使い方も世界共通ですね。などという穏やかな話はここまでで、実は彼女たちはその後政府の弾圧によって解散させられたとのこと。「プラハの春」を背景とするチェコのポップス史、思ったよりも調べがいがありそうです。

Rosy Armen / Yes mi siroun

 またしても共産国家のお座元、アルメニアの女性歌手です。アルメニア語で書くとՌոզի Արմեն。さっぱり読めません。見つかった動画にはフランス語で歌っている曲が多いのですが、このあたりの事情はよくわかりません。でも何故英語やイタリア語ではなかったかをあれこれ考えてみると面白いです。ルグランの「おもいでの夏」を歌っている動画もありました。今も現役バリバリで歌っています。

Telah Jatun Cinta / Ida Eliza

 東南アジアからもひとつご紹介しましょう。こ、このイントロはどう聴いてもDeep Purpleの「Black Night」……しかし別にカバーというわけではなさそうです。とはいえイントロのインパクトは絶大で、気の抜けたキーボードソロにほんの一瞬感じるジョン・ロードへのリスペクト、音量では圧倒的に不利なのに頑張ってロックしているパーカッションのみなさんに拍手を贈りたい! 詳細は一切不明。うーんロックだ。

Studio Uno 1966 puntata 15 prima parte Rita Pavone、Gino Paoli

 パソコンで作業するときなど、YouTubeの長時間動画にはよくお世話になっています。こちらは先ごろ亡くなったトロヴァヨーリの動画を探していたとき一緒に見つけたイタリアの音楽番組「Studio Uno」で、司会は『黄金の7人』のテーマをカバーしていたミーナ。番組名で検索すると1回分(1時間!)の動画がいくつも出てくるので、今回は見やすい長さのものを選びました。広いスタジオにいっぱいのダンサー。これぞエンタメであります。



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 第3弾、となる初期ヒップホップ特集。いまだに「ヒップホップ=チェケラッチョ」みたいなマヌケなパブリックイメージが蔓延ってるのが、個人的にちょっと我慢できなかったりもするんですよね。当方が尊敬している某ベテラン・ギタリストの方は「僕に言わせれば、今のヒップホップはもはやヒップホップじゃないですけどね」と断言されていましたが、諸手を上げて激しく同意します。さて、今回は「イギリスにおける初期ヒップホップ」の特集。「まだヒップホップがニューウェイヴだった時代」の音楽をお楽しみ下さい。(2013年10月11日更新分/選・文=大久)


Adam And The Ants / Ant Rap (1981)

 イギリスにおいて、その歴史はロック・フィールドから始まりました。この前年、ブロンディーという米東海岸のニューウェイヴ・バンドが思い切りラップを使った「RAPTURE」という曲を大ヒットさせて以来、ラップは「最先端の」ポップ・ミュージック・トレンドとなりました。最初にイギリスのポップ界にこれを持ちこんだのは、マルコム・マクラーレンではなく(彼と仲違いした)アダム・アントの方でした。

Malcolm McLaren / Buffalo Gals (1982)

 とはいえアダム&ジ・アンツはやっぱりロケンロー世界のアイドルです。本格的なヒップホップをやらせるのは無理がありますよね。てなわけでマルコム本人がアーティストとしてデビュー、NYの本格的ヒップホップを思い切りブチ撒けたこの「BUFFALO GALS」は、永遠のヒップホップ・クラシックビーツとなりました。ピストルズの曲やれやあ!という観客のヤジに耐えながらシコシコとダブ・ビーツを探求していたP.I.L.も素敵ですが、マクラーレンのこのダイナミズムはもっと素敵です。

Futura 2000 / The Escapades of Futura 2000 (1982)

 さて、ピストルズと人気を2分したもう一方のパンクの雄、ザ・クラッシュはこんな形でヒップホップ創世記に大きな爪痕を残しています。NYのグラフィティ・アーティスト、FUTURA 2000がレコード・デビュー(発売はビル・ラズウェルが所属したセルロイド)した際に、バックトラックを担当したのはクラッシュでした。キース・ヘリングやバスキアとも親交の深かった彼ですが、後にはUNKLEという名義で再デビューしたり、スプレーアートの達人としてユニクロのCMに出演したことでも知られると思います。

Captain Sensible / Wot! (1982)

 ピストルズ、クラッシュ、ときたら当然こちらも出さないワケにはいきません。ダムドのキャプテン・センシブルが82年にソロ名義のセカンド・シングルとしてリリースしたヒップホップ曲。ちなみにソロ・デビュー曲は「南太平洋」でおなじみのスタンダード「HAPPY TALK」のカヴァーで、そちらは全英1位になってしまったという、どこまでもオチャメで豪快なキャプテンさんの、ファンキー・ラップは最高です。

Wham! / Wham Rap! (Enjoy What You Do?) (1982)

 しかしこうやってみると、82年は英国ヒップホップの大当たり年ですね。並んでるアーティスト名はヒップホップ・ヒストリーと無縁な人達ばかりですが。こちらはワム!82年のデビュー作にも収録された、その名もマンマ「WHAM! RAP」というシングル曲。グランドマスター・フラッシュ・スタイルのオールドスクールですが、クリクリ・パーマとライダース・ジャケットでこの曲をやっちゃうあたりがワム!らしいですよね。


Les Rythmes Digitales / (Hey You) Whats That Sound ? (1998)

 最後に90年代末のクラブ系サウンドの突然変異とも言える変わり種を。思い切り時代錯誤なこのエレクトロ・ヒップホップは、当時のクラブ・ミュージック最先端レーベル、ウォールオブサウンドから発売された曲で、ジャック・ル・コントというインチキな仏語名を名乗る男によるひとりファンク・ユニット、レ・リズム・ディジタルの98年作。モロ80年代初期テイストなのは音だけではなく、彼の憧れのアーティストが「ニック・カーショウ」というくらい、本気で時代錯誤な人でもあります。発表当時彼はまだ21歳。素晴らしいですね。ちなみにこの曲のドラム・トラックは、80年代にワム!が実際に使ったリズムマシンそのものを入手し、使用した、とのこと。


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 今回は「エヴァンゲリオン」音楽特集。なんですが、アタマから話し始めたらちょっとキリがないっスという程に当方はエヴァ・ヲタクなので、ここでは趣向を変えて「小ネタ集」です。本来ならベートーベンとか「カノン」とかジョン・バリーとか「ヘイ・ジュード」とか、大ネタは沢山あるのですが、今回は完全に重箱のスミをつつくようなネタばかりを拾ってあります。興味ある方のみ、お付き合いいただければ幸いです。余談ですが当方のiPodには常にエヴァ「青盤」「赤盤」が全部入っています。(2013年10月18日更新分/選・文=大久)


八代亜紀/残酷な天使のテーゼ

 演歌の女王 MEETS エヴァンゲリオン。既にご承知のように、任天堂WiiUの宣伝用に制作されたこの映像は、八代亜紀がエヴァ主題歌「残テ」を絶唱する、という、それだけでインパクト絶大なものでした。そういえば97年、当時人気絶頂・結婚直前の安室奈美恵さんが芸能人カラオケ番組(「夜もヒッパレ」のこと)に出演し「魂のルフラン」を歌ったことがありますが、そちらは意外性という意味ではあまりインパクトは感じられないものでしたね。

【エヴァQ】シンジとカヲルの連弾曲フルバージョン弾いてみた

 最新公開作「Q」の劇中挿入歌でもあるピアノ連弾曲を、姉妹で実際に演奏してみた、という動画です。ピアノ連弾に関して、当方個人は「映画の中でも必要のなかったシーン」と思っていますが、濱田編集長を含めあそこは「象徴的なシーン」ととらえることでご納得の方が多いようです。さて、おそらくピアノ・スキルという意味ではもっともっと完璧なカヴァーを披露する別なチャレンジャーの方もいらっしゃるのですが、後ろ向きのピアニスト姉妹、というだけでなんだかいろいろ妄想をかきたてられます(笑)。

 PRIDE GP2004 FINAL「小川対ヒョードル」煽りV

 声優・立木文彦氏はもちろんエヴァの碇ゲンドウ役でも知られますが、PRIDE煽りVの人としてもおなじみですよね。格闘技イベント「PRIDE」にて、選手紹介の目的で制作された試合ごとのトレイラー映像にはいくつもの名作が残されましたが、こちらは04年のPRIDE GP、小川直也vsエメリヤーネンコ・ヒョードル戦の煽りV。オフコース「心はなれて」のストリング版から「THANATOS」のピアノ版(=「涙」)と繋がるこちらのV、何度見ても号泣します。当時バッシングを受けていた小川直也が挑んだ一世一代のガチ大勝負。試合の結果は、あまりにも残酷なものでしたが。


End of Evangelion - Alternate Live Action Sequence Part 2

 97年の夏は「EOE」の夏でした。とても暑かったことを覚えています。いまだにその暑さを強烈に思い出させるほどに衝撃的な映画だった「EOE」ですが、観客全員をポカーンとさせるほどの絶望感を植えつけた同作のクライマックス部分では、実写映像と共にバッハ「主よ人の望みの喜びよ」が流れました。で、こちらの映像は映画本編では不採用となった実写パートで、後に予告映像として劇場/TV-CFとして使われたもの。今みても、全く意味不明(笑)。

Yoko Takahashi / Fly Me To The Moon (4 Beat Ver) (1995)

 エヴァのエンディングと言えば、このスタンダード曲です。ちなみにこの「FLY ME TO〜」はアレンジを変えて20バージョンほど制作され、TV版エヴァのEDとして毎週オンエアされました。それらはほぼ全て音盤化されているのですが、高橋陽子さんが歌うこの「4 BEAT VERSION」のフル音源は、たった一度しか世に出されていません。しかもそれは95年に発売されたCDSのカップリング曲、としてで、現在もこの音源を入手するにはその短冊型CDシングルを入手するしかない、という珍しい例になっています。


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