てりとりぃ放送局アーカイヴ(2013年12月27日〜2014年1月10日)

 年末です。最後の「放送局」はやはり初音ミクで締めちゃおうかな、と(笑)。2013年、今年もやはりVOCALOIDは倍々ゲームのように拡大を続けました。我々日本人はこの「倍々ゲーム」にすでになれてしまった感もありますが、2020年東京五輪のセレモニーは、やっぱ初音ミクしかいねえだろ、という当方の考えは、すでに確信と化しつつあります。そんなワケで「2013年の初音ミク」特集です。(2013年12月27日更新分/選・文=大久)


The End au Châtelet

 今年の5月、渋谷慶一郎×初音ミクという組み合わせで制作・公開されたオペラ『THE END』。同オペラは今年の11月、1862年創設という歴史と伝統を誇るフランス「シャトレ座」でも上演されました。その模様を伝える宣伝動画がこちら(そのシャトレ座による公式HPはこちら)。日本でいうなら銀座にある歌舞伎座(1889年開設)で「初音ミク」が公演やるようなモンですからね。さすがですね。

天空で踊る初音ミク 雲中ライブ

 日本に話を戻しますが、昨年(2012年)の末に、冨田勲×初音ミクという組み合わせで新作オペラ「イーハトーヴ交響曲」が公開されました。その模様はサントラCD&DVDで今年商品化されましたが、こちらはその冨田勲×初音ミクの映像を、本物の「雲」で上映してみよう、というプロジェクトによって実践された実験映像。エアコン会社のダイキンが技術協力だそうです。まだ「オオッ!」というレベルではないようですが、夢、膨らみますねえ。

ODDS&ENDS / ryo(supercell) in マジカルミライ2013

 2013年8月30日、横浜アリーナになんと15000人という観客を集めて、初音ミク「マジカルミライ2013」が催されました。同公演の映像は某地上波深夜放送にて流れ、SMAPのリーダーNクンが「マジ信じらんねえ/こんなライヴ行って何楽しいの?」というオールドファッションなコメントを残しました。んふふ。若いですねえ。SMAPのコンサートも、ある意味VOCALOIDみたいなもんじゃないですか(笑)。

[HATSUNE MIKU V3 ENGLISH] DAISHI DANCE / LET ME FLY

 個人的には一番のビッグ・ニュースがこれでした。VOCALOID「初音ミク」は2013年に最新ヴァージョンが発売されました。遂に「英語版」が登場です。同時に(なんと発表後6年後にして初めて)MAC版も登場しました。残念ながら現時点では、英語の発音にはあまり上手く馴染んでいるとは思えませんが、それでもマック・ユーザー、そして英語圏の人に門戸を広げたことはとんでもなく大きな飛躍です。そしてこちらのデモ音源は、なんと(浜崎あゆみ、中島美嘉等とのコラボでも知られる)DAISHI DANCEが手がけています。


トヨタ アクアCM 「日本のハイブリッド紅葉・朝靄」

 最後は最新のトヨタ「アクア」のTV-CF。ピアノを演奏しているのは、ニコニコ動画やYOUTUBEでピアノ演奏(主に「弾いてみた」系)を披露している同人音楽家、まらしぃ氏によるものです。曲はご承知のとおり初音ミクの代表曲「千本桜」。ちなみに同CMの前作は、同じくまらしぃ氏による「CHOCOLATE DISCO」(PERFUME)のカヴァー演奏が使用されています。ちょっと前に当コーナーでも「2013年の和モノ」という特集をやりましたが、やはり皆さん考えることは同じようで。



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 新年ですね。そんなこととは一切関係なく、脈絡もなく、シンプリー・レッドの特集、をやってみます。もちろん90年代を中心に、世界的な大ヒット曲を多数もつモンスター・グループでしたので、知らないという方は殆どいないと思われますが、フロントマンのミック・ハックネルという人は、面白い人なんですよね。その音楽志向というか、音楽変遷が。今回はそんな彼のキャリアをおさらいしてみました。(2014年1月3日更新分/選・文=大久)


Frantic Elevators / Holding Back The Years (1982)

 ミック・ハックネル22歳。パンク・バンド、フランティック・エレベーターズは79年にデビュー。まったく陽の目をみることはありませんでしたが、このパンク・バンドのラスト・シングルはこんなシンプルでソリッドなバラード・ソングでした。衝撃的なジャケットでも有名ですが、それよりも何よりもこの曲は85年にシンプリー・レッド名義で再録音され、ヒットを記録したことの方が知られてますよね。

Simply Red / Stars (1991)

 「MONEY'S TOO TIGHT」(ヴァレンティン・ブラザーズ)や「IF YOU DON'T KNOW ME BY NOW」(ハロルド・メルヴィン&ブルーノーツ)で世界的に知られるようになった「ホワイト・ソウル・バンド」シンプリー・レッドは、他にも多くのソウル・カヴァーを残していますが、91年、全曲オリジナルの『STARS』も大ヒット。やはりなんと言ってもこのリズムです。既にご承知のように、屋敷豪太氏がこの時期同バンドに正式加入。まさにワールドワイドなビートを披露しています。
Simply Red / Never Never Love (1995)

 国民的バンドとなった彼らですが、『STARS』発表後に屋敷氏はバンドから抜けています。個人的には残念ですが、それでもシンプリー・レッドはシンプルに素晴らしいママでした。ちょうどこの曲発表のころ、ロンドンのウェンブリー・アリーナで満員の観衆を前に歌う彼らのライヴを見ましたが、そりゃあもう「紳士淑女のアイドル」でした。なぜそんな表現をしたかと言いますと、同じ頃にウェンブレーでライヴを見たUB40は「ティーン女性達のアイドル」だったからです(笑)。
Simply Red / Sunrise (2003)

 ブリットポップなぞどこ吹く風。ソウルマン、ミック・ハックネルのオサレ度はハンパありません。大ネタのモロ使いをさせても、シンプリー・レッドな音楽をちゃんと完成させます。ホール&オーツ「I CAN'T GO FOR THAT」はこの頃既にヒップホップの定番サンプル・ネタでしたが、ここまでドンズバでマッチさせた例は殆どないですよね。この曲を収録した『HOME』はバーニー・ウォレル、ジェイムス・ギャドソン、ジョー・サンプル、鈴木賢司、屋敷豪太等が参加。
Simply Red / Something Got Me Started (2005)

 シンプリー・レッドは『SIMPLIFIED』というタイトルのセルフ・リメイク・アルバムを05年に発表していますが、こちらはその中の1曲。91年にクラブ・ヒットを記録したガラージ・ハウス・ナンバーですが、この再録ヴァージョンでは完璧なブラジリアン・サウンドに変身。ちなみに今回紹介してる動画でシンプリー・レッド名義のものは、すべて公式にアップされたもの。いいですねえ。素晴らしい時代になったものです。
Faces / Stay With Me (2012)

 さて、最近もこんな活動で世間を賑わせているミック・ハックネル氏。世界中が注目してたフェイセズの再結成は、結局ミックがボーカルに加入することで実現しました。このメンバーで来日もしてるのでご承知の方も多いと思われますが、そりゃあ「全盛期のロッド・スチュワート並みの歌唱力」を持つ現役シンガーは彼くらいしか思いつきませんもんね。余談ですがロン・ウッドを指して「高いギターを弾かせても安い音を出すギタリスト」と言った人がいましたが、この動画、まさにその通り(笑)。


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 本来ポップスよりも遥かに長い歴史を持つジャズ・ミュージック。しかしポップスの誕生以降、そのエッセンスを取り込むことでジャズは延命を図ってきた、という面は否めないと思います。そう書くとまるでジャズ批判のようにも受け取れますが、むしろ逆に「そういう姿勢こそがジャズじゃん?」とも言いたいわけです。そんな当方の戯言はともかく、今回は「ギンギンのロック・ナンバーをジャズでやってみた」というカヴァー曲を特集してみました。(2014年1月10日更新分/選・文=大久)


Cæcilie Norby / Life On Mars? (1996)

 父もジャズの作曲家だった、というデンマーク出身のボーカリスト、セシリア・ノービー。95年にブルーノートと契約、こちらはその翌年に発表されたブルーノートからの2作目に収録された、ボウイ「火星に生活?」のカヴァー。前作にも「野生の息吹き」のカヴァーなんかが入っていたりして、ああ、なるほどやっぱ大好きなのねん?なんてことも知れて楽しい限りです。ウフフ。
Paul Young / The Jean Genie (2006)

 80年代にはまさに一世を風靡したブルーアイド・ソウルの人気シンガーでしたが、90年代以降はあまりヒットに恵まれてませんね。それはともかく彼の最新作にあたる06年発表のカヴァー集は、なんと全曲スイング・ジャズという企画盤。ソフト・セル、メタリカ、ジョージ・ハリソン、ドン・ヘンリー、エミネム、ブルース・スプリングスティーン、ほかまったく脈絡のないハチャメチャな選曲も最高ですが、こんなボウイ曲にもトライしてます。

Bojan Z / Ashes To Ashes (2007)

 こちらもボウイ・カヴァー。セルビア出身のピアニスト、ボヤン・Z氏。旧ユーゴ軍所属時にも軍のバンドでピアノを担当していたそうですが、除隊後88年にパリへ移り、音楽家として活動を開始。エレピを多用するスタイルでも注目を集めている彼ですが、こちらの「ASHES TO ASHES」でもアコピ&エレピの両刀使いが堪能できます。
Karen Souza / New Year's Day (2011)

 ブエノスアイレス出身の美女シンガー、カレン・ソウサ。彼女の取り上げる曲はいっつもニューウェイヴ臭がギンギンに漂うトラックばかりで、楽しくなります。こちらは彼女のデビュー盤に収録されたU2のカヴァー。既にご承知の通り、この曲は1983年1月1日という(ポーランドという国にとって)特別な1日を歌った曲でして、よく「新年だから」といって日本ではこの曲がラジオでオンエアされたりしますが、正直いかがなものか、と考えてしまいます。
Bryan Ferry / Back To Black (2013)

 2013年、個人的に最も驚いた新作はブライアン・フェリー・オーケストラのアルバムでした。元からアーリー・ジャズ好きであることは有名でしたが、いや、ここまでマジなアルバムつくるかね?しかもインストで、っていう(笑)。 1930年代にタイムスリップさせられるようなアルバムですが、こちらの動画はフェリー本人のヴォーカルをフィーチャーしたスイスでのライヴ映像。曲はもちろん06年にエイミー・ワインハウスがヒットさせた曲のカヴァー。


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