「スタジアム・ロック」という言葉が使われたのは1980年代中盤でした。デカい球場で音楽をやることに批判的なアーティスト側からの発言でよく使われたのですが、そもそもスタジアムのために書かれた楽曲などこの世に1曲たりと存在していません。こんにちそのことをよく示しているのがプロディジーかも、なんて思いつきまして、今回はプロディジーのライヴ映像特集です。プロディジーはクラブ・ミュージック・シーンから登場した奇才集団ですが、今や世界で最も人を集めるバンドであることはご承知のとおり。今これを出来るアクトがプロディジーしかいない、という点も見逃せません。(2014年3月21日更新分/選・文=大久)
The Prodigy / Firestarter (1997)
大ヒット作『FAT OF THE LAND』発売の後に、プロディジーはロシアのモスクワ「赤の広場」でライヴをやっています。この日集まった客は一説には20万人、と言われています(でも20万人を正確にカウントする方法が果たしてあるのでしょうか?)。どうでもいい話ですが、イントロで流れるセリフは、ジャッキー・チェンの映画「酔拳」の英語吹き替え版で流れる「お師匠さん」の声、そしてこの曲のワウ・ギターのフレーズは4ADのギター・バンド、ブリーダーズの音源からのサンプリングです。
The Prodigy / Breathe (2009)
09年、アイルランドでのフェスの模様です。この模様はライヴDVD「WORLD'S ON FIRE」に収録されていますが、公式にYOUTUBEにもアップされています。プロディジーがロックかどうかはこの際置いとくとして、1人のPCオペレーター、2人のフロントアジテーター、そして2人のアテフリ演奏家(そう、ギターとドラムの2人は、演奏はしつつもその音は殆ど会場には流れていません)だけで、10万人の観客を熱狂させるわけです。文字通り、会場は揺れています。
The Prodigy / Smack My Bitch Up (2009)
まあプロディジーの楽曲はいつもそうなのですが、堂々とタイトルや歌詞に言及することが倫理的にかなり難しい(笑)ものばかりでして、こちらの曲はタイトルもPVも当然のように世界中で放送禁止に。ですが英国のみならず欧州各国で必ず1位になってしまうという。動画はドイツのロック・フェス「ROCK AM RING」でのライヴ。13万人が集まったと言われています。この曲でいつもフロントマンのキース・フリントは客席の中で客を煽ります。余談ですがキース・フリントは大の親日家で、タトゥーは日本製。奥さんも(DJ GEDO SUER MEGA BITCHというステージネームをもつ)日本人です。
The Prodigy / Invaders Must Die (2009)
09年グラストンベリー・フェスでのライヴ。3日間で20万人が来場、とのことなので、この会場には7万人くらいいるという計算になるでしょうか。いずれにしろ、日本ではほぼ開催が不可能なコンサートですね(奇麗に椅子が並べられた日産スタジアムに6万人集めるのとは、ワケが違います)。第一プロディジーのライヴは壮絶な爆音で、激しすぎる照明のためにステージ上のアーティストなんて見えやしません(笑)。客席は皆発煙筒炊きまくりますし、モッシュ&ダイブの嵐、ですし。
The Prodigy / Omen (2009)
そうなんです。ライヴとかいいつつも、ステージの上のパフォーマンスなんて客席からは見えないし、演奏はオケ流すだけだし、パフォーマーはガナリ立てるだけだし。お行儀の良い音楽ファンからは手厳しいご意見をいただくことになりそうですが、彼らのライヴの何が素晴らしいかは、客席にいる数十万人のランランと輝く目が証明していますね。動画は09年、ワイト島フェスでのライヴ映像。
*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。
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