ヒトコト劇場 #59
[桜井順×古川タク]
買いもの日記[6] 最近好きになったのだ。
学生の頃はカントリー音楽の良さがわからなかった。スカスカな音、どれを聴いても同じに聴こえ、なかなか馴染めず、レコード屋に行ってもカントリーの棚はいつもスルーしていた。それが最近、カントリーが好きになったのだ。やはりそれは小坂一也の歌うカントリーが好きになったからかもしれない。今までカント
リーの浅い部分しか聴かず、本当に音のいいカントリーを聴いたことがなかった。抜けたギターやヴァイオリンの音、ヨーデルのような力の抜けた歌唱法。それは天気のいい昼の時間に聴くには最高の音楽だった。初めてハワイアンにはまったときと同じような感覚。カントリーにもハワイアンにつながる何かがある。
カントリーやヒルビリーをもっと知りたい。と思っても何から聴いたらいいのかわかない。とりあえず西荻窪の『ファンレコード』へ行き、カントリーコーナーを探す。 今までスルーしていたコーナー。これが今まで見たことのないレコードばかりで何を買ったらいいのかわからない。日本ではカントリーの人気がないのか、カントリーの日本盤は驚くほど安い。それが幸運だった。ハンク・ウィリアムスにジョニー・キャッシュ。テックス・リッター、ハンク・スノウ。ビル・ヘイリーやコニー・フランシスがカントリーを歌ったものまである。それに当時のヒット曲ばかり集めたオムニバス盤も当時を知らないぼくにはとても勉強になる。どれも300円から高くて800円。勢い余ってフランキー
・レインまで買ってしまった。気づいたら42枚。知らないレコードをたくさん買うのはワクワクしてとても楽しかった。自分の好みかどうかは置いておいて、当時流行った誰もが知ってるカントリー音楽の中で、ぼくが知らない音楽があまりにも多すぎた。何度も聴いているはずの『カウライジャ』も改めて聴くと今のぼ
くの好みだった。 しかし数あるカントリー音楽の中で自分の好みの音に出会うのは難しかった。ぼくの好きな音は古いカントリー、とくにSP盤の中にあることに気がついた。ハンク・ウィリアムスはもちろん。ウェイン・レイニー、レフティ・フリッゼル、フレディ・ハート。あの乾ききった音が好きなのかも
しれない。女性や男性の混声デュオの音楽も好きだし、ブルース、と付いた曲にも自分の好みの音楽が多い。しかしまだまだ知らない音楽ばかりで、今まで手をつけてこなかった音楽を知るのは楽しい。テンガロン・ハット、貝殻ボタンのシャツにウェスターン・ブーツ。そういうイメージばかりが今まで頭に浮かんでいたのはもったいなかった。 (馬場正道=渉猟家) ーーーーーーーーーーーー ハンク・ウィリアムス「カウライジャ」(1952年)
チャーハンロード
久しぶりに新宿の模索舎を除いたところ、前々からB級グルメの指南書として注目していた「デウスエクスマキな食堂」の最新号が出ていたので、入手した。いつもは、パラパラと立ち読みするだけだったが、今回、買う決め手となったのは最新号のタイトル文字「街道でチャーハンを食う」と表紙のドアップなチャーハンの写真だ。 今回の特集は東武東上線・池袋~下赤塚間の川越街
道沿いにある中華飯店を13店紹介している。全頁オールカラーで、嫌が上でも食欲がそそり、直ぐにでもチャーハンが食べたくなってくる。川越近辺のカレー屋にはしょっちゅう行くのだが、この中で紹介している店には、まだ一度も行った事が無い。しかし、「たかがチャーハン、されどチャーハン」で、ここで紹介しているチャーハンは十人十色。ラーメン同様に、これだけバラエティに富んでい
るメニューもそう多くは無いだろう。 チャーハンというと、一時、良く通ったのが〝有楽町・慶楽〟。スープチャーハンが有名だが、普通のチャーハンでも十分美味い。映画や野音の帰りに良く寄ったものだが、あのスープに入ったチャーハンの上に鎮座するプリプリの海老を思い浮かべるだけで幸せな気分になる。 また、チャーハンというと、どうしてもラーメンも一緒に食べたくなるのが人情だ。そんな貴殿には、いわゆる半チャンラーメンの出番。老舗だと〝神保町・さぶちゃん〟と言う事になるが、ここは〝下北沢・眠亭〟を推したい。甲本ヒロトがメジャーになる前、バイトしていた所としても有名だが、なんといっても名物は「ラーチャン」につきる。いわゆる半チャンラー
メンなのだが、飽きのこないシンプルなチャーハンとあっさり系のラーメンスープが絶妙に合う。いつも、今回はラーチャン以外を頼もうと勢い込んで行くのだが、結局、ラーチャンの魅力にいつも負けてしまい、他のメニューがいつになっても食べられない。 しかし、今回のチャーハン特集はヤバイ!少なくても、下記の3店は、近々に訪れたい。〝中板橋。白龍〟、〝練馬・丸栄〟、〝練馬・幸楽〟。特に“丸栄〟のカレーチャーハンは、最速訪問すべく、ただ今スケジュール帳と日程調整に入ったところである。昔、太田道灌が川越城と江戸城を結ぶために開発したと言う川越街道。今後、チャーハンの名店が並ぶチャーハンロードとして、注目される日も近いかもしれない。 (星 健一=会社員)
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