80sポップ・ソングの名曲「JUST CAN'T GET ENOUGH」の聴き比べをやってみます。まだディペッシュ・モードをヴィンス・クラークというシンセ・ヲタクが牽引していた時代、81年の発表曲ですがヴィンス・クラークはこの曲を最後に同バンドを脱退しています。その時にはディペッシュ・モードがその後全米のスタジアムを満員にするようなビッグ・バンドになるとはヴィンス・クラークにも想像できなかったでしょうね。もちろん当方にも想像できませんでしたが(笑)。(2015年9月18日更新分/選・文=大久)
Depeche Mode / Just Can't Get Enough (1981)
元曲です。おそらく世界中のピコピコ打ち込み少年達が殆どカバーにトライしただろうと思われるシンセ・ポップのクラシック中のクラシック。もちろん1981年当時MIDIという規格はありませんでした(正確に言えば、この年規格が生まれましたが製品化されたのは2年後)。今でも「機械が演奏する」ことに無条件で拒否反応を示す人がいますが、だいたいフレットのついたギターを弾くことだって意味としては一緒ですけどね。世の中オカシなもんです。
Gap TVCM "Everybody In Leather" (1999)
さて、この「JUST CAN'T〜」は20年近くを経て急に再評価されることになります。きっかけはアパレル・ブランドGAPのTVCMに使用されたことでした。「再評価」と書きましたが、実はこのCM自体は結構批判されることも多いものです。ようは「誰でも知ってる名曲を、誰でも知ってるイケメンの有名人に歌わせて、大量露出する」というCMのオシツケがましい面を強調してしまったものだったから、でした。そんな批判はともかく、新しい世代にこの曲が広まったきっかけであったことも間違い有りません。 Nina Madhoo / Just Can't Get Enough (2005)
もちろんGAPという大手ブランドだけのパワーではありませんが、世界中でこの曲が再認知され、多くのカヴァーを生むことになります。こちらはニーナ・マドゥーさんという女性名義のボサ・カヴァーで、日本制作音源。ご覧のように、日産マーチのCM用に制作された音源です。ニーナ・マドゥーさんが歌う「JUST CAN'T〜」は3種あり、「私らしくBlue」篇(05年)、「私らしくSherry」篇(05年)、「 私らしくYellow」篇(06年)とあり全部別オケの音源で、全部日産のCMコンピCDに収録されてます Anna Tsuchiya / Just Can't Get Enough (2007)
歌い手が変わっても、日産マーチはこの曲をCMに使い続けました。2年以上使ってたんだから結構凄い話ですよね。で、こちらは土屋アンナ嬢によるロック・カヴァー・ヴァージョン。「私らしくRed」篇(06年)で使用されました。シングル「黒い涙」のカップリングに収録されています。 The Saturdays / Just Can't Get Enough (2009)
09年、オリジナル以上に大ヒットしてしまったカヴァーが生まれました。サタデイズというおチャラけ5人組女性アイドルグループによるカヴァーなのですが、全英2位の大ヒットを記録。元々は「COMIC RELIEF」というチャリティー企画で発売されたシングルですが、まさかヴィンス・クラーク(作曲者)はこんな形で巨額の印税を受け取ることになるとは想像できなかったでしょうね(笑)。
"Just Can't Get Enough" from Celtic Park (2011)
最後はオマケの飛び道具動画。「JUST CAN'T〜」はサッカーのチャント(応援歌)として近年使用するチームが急増しています。こちらは以前中村俊輔が所属していたことでも知られるスコットランドのセルティックFCの応援歌。ただし、タイトルからも察しがつくように、基本的にはファンが不満を表明してチームを鼓舞する曲なわけですが。同チームはこの曲を09年から使用しているので、中村俊輔はこの曲を知らずに退団したことになりますね。
*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。
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