てりとりぃ放送局アーカイヴ(2015年9月18日〜2015年10月2日分)

 80sポップ・ソングの名曲「JUST CAN'T GET ENOUGH」の聴き比べをやってみます。まだディペッシュ・モードをヴィンス・クラークというシンセ・ヲタクが牽引していた時代、81年の発表曲ですがヴィンス・クラークはこの曲を最後に同バンドを脱退しています。その時にはディペッシュ・モードがその後全米のスタジアムを満員にするようなビッグ・バンドになるとはヴィンス・クラークにも想像できなかったでしょうね。もちろん当方にも想像できませんでしたが(笑)。(2015年9月18日更新分/選・文=大久)



Depeche Mode / Just Can't Get Enough (1981)

 元曲です。おそらく世界中のピコピコ打ち込み少年達が殆どカバーにトライしただろうと思われるシンセ・ポップのクラシック中のクラシック。もちろん1981年当時MIDIという規格はありませんでした(正確に言えば、この年規格が生まれましたが製品化されたのは2年後)。今でも「機械が演奏する」ことに無条件で拒否反応を示す人がいますが、だいたいフレットのついたギターを弾くことだって意味としては一緒ですけどね。世の中オカシなもんです。

Gap TVCM "Everybody In Leather" (1999)

 さて、この「JUST CAN'T〜」は20年近くを経て急に再評価されることになります。きっかけはアパレル・ブランドGAPのTVCMに使用されたことでした。「再評価」と書きましたが、実はこのCM自体は結構批判されることも多いものです。ようは「誰でも知ってる名曲を、誰でも知ってるイケメンの有名人に歌わせて、大量露出する」というCMのオシツケがましい面を強調してしまったものだったから、でした。そんな批判はともかく、新しい世代にこの曲が広まったきっかけであったことも間違い有りません。
Nina Madhoo / Just Can't Get Enough (2005)

 もちろんGAPという大手ブランドだけのパワーではありませんが、世界中でこの曲が再認知され、多くのカヴァーを生むことになります。こちらはニーナ・マドゥーさんという女性名義のボサ・カヴァーで、日本制作音源。ご覧のように、日産マーチのCM用に制作された音源です。ニーナ・マドゥーさんが歌う「JUST CAN'T〜」は3種あり、「私らしくBlue」篇(05年)、「私らしくSherry」篇(05年)、「私らしくYellow」篇(06年)とあり全部別オケの音源で、全部日産のCMコンピCDに収録されてます
Anna Tsuchiya / Just Can't Get Enough (2007)

 歌い手が変わっても、日産マーチはこの曲をCMに使い続けました。2年以上使ってたんだから結構凄い話ですよね。で、こちらは土屋アンナ嬢によるロック・カヴァー・ヴァージョン。「私らしくRed」篇(06年)で使用されました。シングル「黒い涙」のカップリングに収録されています。
The Saturdays / Just Can't Get Enough (2009)

 09年、オリジナル以上に大ヒットしてしまったカヴァーが生まれました。サタデイズというおチャラけ5人組女性アイドルグループによるカヴァーなのですが、全英2位の大ヒットを記録。元々は「COMIC RELIEF」というチャリティー企画で発売されたシングルですが、まさかヴィンス・クラーク(作曲者)はこんな形で巨額の印税を受け取ることになるとは想像できなかったでしょうね(笑)。
"Just Can't Get Enough" from Celtic Park (2011)

 最後はオマケの飛び道具動画。「JUST CAN'T〜」はサッカーのチャント(応援歌)として近年使用するチームが急増しています。こちらは以前中村俊輔が所属していたことでも知られるスコットランドのセルティックFCの応援歌。ただし、タイトルからも察しがつくように、基本的にはファンが不満を表明してチームを鼓舞する曲なわけですが。同チームはこの曲を09年から使用しているので、中村俊輔はこの曲を知らずに退団したことになりますね。



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 案の定再々結成クリムゾンは進捗が延び延びになってるようで、やっぱりね、いう不可解な納得感を感じる昨今ですが(笑)、今回はクリムゾン特集。以前にも機会があるごとにクリムゾンの特集をやったことがありますが、またやります。今回は名作『クリムゾン・キングの宮殿』をカヴァーで振り返るという主旨で、あえてバラバラなジャンルからカヴァーを集めてみました。余談ですがこのジャケを超える作品、あるんでしょうか?当方にはいまだに見当たりません。(2015年9月25日更新分/選・文=大久)


The Guitar Circle of Europe / 21st Century Schizoid Man (2012)

 動画の最初に変な儀式みたいなのがありますが、楽曲は3:44くらいから始まります。ギター・サークル・オブ・ヨーロッパは80年代にフリップ先生が主催していた学校「ギター・クラフト」がその後発展したアマチュアのアコギ・ギター・オーケストラ。フリップ先生はこの学校の運営資金を捻出するために自身の機材を売り払ったりして、結構大変そうではあります。どうでもいいことですが、女性の生徒さん、初めてみました。そういえば近年では西村雅彦氏のカヴァーでも話題になった曲ですが、邦楽で同曲カヴァーといえばフラワー・トラヴェリン・バンドか人間椅子か、ですよねやっぱ。
Opus III / I Talk To the Wind (1992)

 「IT'S A FINE DAY」(JANEのカヴァー)のヒットで知られるオーパス・スリー。その「IT'S〜」に続いて発表されたのはこちらのクリムゾンの名曲カヴァーでした。まだトランス・テクノという言葉がなかった時代ですが、その後ダッチ・トランス他多くの道標となったダンス・トラックであるのは間違いないと思われます(あのロバート・マイルスが世界的ヒット「CHILDREN」を出したのはこの4年後ですし)。

Hector / Epitaph (1975)

 フィンランド・ロックの大御所、ヘクトル(英語読みだとヘクターですが、駐日フィンランド大使館によればヘクトルとカナ表記する模様)による75年のカヴァー。エピタフと言えばもうそれはピーナッツか西城秀樹かフォーリーブスか、というカヴァーがいずれも超有名ですが、あまり欧米ではカヴァーされてない曲なんですよね。

fayray / Moonchild (2005)

 90年代末にデビュー。吉本興業所属のSSWということで一時期頻繁にTV露出もあったfayray嬢。彼女は70年代ロックが大好きな親御さんの影響で、こういうドロドロなクラシックも大好きだという変わった女性らしく(笑)、なんと05年発表のカヴァー・アルバムでクリムゾンの「MOONCHILD」をカヴァーしちゃってます。すごい。
Doc Severinsen / In The Court of the Crimson King (1970)

 今回の特集はオリジナル盤そのままの曲順でならべてありますが、もちろん最後はオリジナル・アルバムの表題曲。カヴァーしてるのはアメリカのジャズ・トランペッター、ドク・セヴァリンセン。彼は50年代から活躍を続ける人ですが、ポップス作品をビッグバンドでカヴァーする作品を多数残しています。こちらは70年のアルバム『DOC SEVERINSEN'S CLOSET』の冒頭曲ですが、同作のプロデュースはドン・セベスキー。


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ザナドゥ」。同名ディスコが日本でディスコ・カルチャーの名所となっちゃうくらいに、80年前後のディスコに大きな影響を与えただけでなく、全世界でNo.1を獲得しまくった名曲です。オリジナルはもちろんイギリスのエレクトリック・ライト・オーケストラ(以下ELO)とオーストラリア出身のオリヴィア・ニュートン・ジョン(でも実は彼女も生まれはイギリス)のコラボ曲。で、今回は世界中でカヴァーされまくったこの曲を、各国代表別に紹介してみます。(2015年10月2日更新分/選・文=大久)


Karin Glenmark / Xanadu (Swedish / 1980)

 まずはこちら。オリジナル発表の同年に早速発売されたスウェーデン語のカヴァー。歌うのはカリン・グレンマークさんという女性で、彼女は後に兄妹デュオのジェミニというユニットでちょっとだけ脚光を浴びた女性(ジェミニはABBAの男性メンバー2人が楽曲提供&プロデュースしたため)。
Ireen Sheer / Xanadu (German / 1980)

 イギリスとドイツのハーフですが、ドイツで活動した女性シンガー、アイリーン・シアーによるカヴァー。彼女は60年代に歌手活動を開始、72年にデビュー、以来現在も元気に歌ってらっしゃるようで、過去40年間にわたってあのユーロビジョン・ソング・コンテストの常連さんでもあります。

Bezinky / Pár nápadu (Czech / 1981)

 チェコスロバキア(当時)の3人組女性グループ Bezinky(すいません読みが曖昧なので欧文表記します)によるチェコ語カヴァー。チェコの大物ビッグバンド・プロデューサーでもあるガスタヴ・ブロムが見いだしたグループですが、デビュー作は全く売れず、ディスコファンク路線に活路を見出したのが本曲収録の2ndでした。
Menudo / Xanadu (Puertorico / 1981)

 プエルトリコのアイドル・グループ、メヌードは日本でもお馴染みですよね。70年代後半以降現在まで卒業・新加入を延々と繰り返すアイドル・グループで、あのリッキー・マーティンを輩出したことでもお馴染み。またあのモーニング娘。結成時に「メヌードを参考にしなさい」と福田一郎センセがつんく氏に助言したという話もよく知られているところかと。
The Fevers / Xanadu (Brasil / 1981)

 こちらはブラジルで64年に結成されたロック/ポップ・バンド、フィーヴァーズ。79年に彼らはディスコ・ヒットのカヴァー・アルバムを出していますが、こちらは81年録音曲。現在までに40枚近いアルバムを出している6人組ですが、詳細を知りませんスイマセン。今度麻生センセに聞いておきます。
松田聖子+河合奈保子/ザナドゥ (日本/1981)

 日本代表はもうこの2人しかありえません。この豪華デュエット(番組は81年「レッツゴーヤング」/日本語訳詞は森雪之丞が担当)以外にも、岩崎宏美(80年/リサイタル宏美・22才の愛)、河合奈保子(82年/ブリリアント~レディ奈保子イン・コンサート/訳詞は小谷野宜子)、沢田富美子(82年/イン・コンサート/通販のみの発売)等がコンサートでカヴァー。麻倉未稀も85年にカヴァーを残しています。




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