てりとりぃ放送局アーカイヴ(2015年11月20日〜2015年12月4日分)

 先日ある方と「機材ヲタク」に関する話題を交わした際に「これ知ってる人日本で殆どいないんですよ」という話になりました。それはイギリスのHHというブランドのアンプなのですが。これだけモノにも情報にも溢れまくる現在の日本ですが、おそらく日本でこれ知ってる人は100人以下、持ってる人は一桁なんじゃないかと思います(いずれも推測値)。ちなみにウチにはこのアンプが2台ありますが、知り合いの某ギタリストはこれを4台もってましたね(笑)。(2015年11月20日更新分/選・文=大久)



T. Rex / 20th Century Boy (1973)

 HHというメーカーは楽器用だけでなくPA用機材を製造・発売していたイギリスのブランドで、そう、なんと言ってもこのHHのIC-100というトランジスタアンプはあのT-REXのマーク・ボランが死ぬまで使用したことで有名です。マーク・ボランと言えば、VAMPOWERでもORANGEでもSOUND CITYでもなく、このHHなのです。というわけで「20TH CENTURY BOY」のライヴ動画。誰でも知ってるこの曲ですが、実は同曲の生ライヴ映像は、おそらくこのTV番組での映像しかないと考えられます。

Sweet / Fox On The Run (1975)

 HHは1968年創業、その社名は創業者の名字(ハリソン&ヘラルド)から引用されたものですが、自社のロゴには「HEAD & HEART」と印字された通り、ダブルミーニングを持っていました。イギリスで製造されたもっとも初期のトランジスタアンプであり、ICなのに「真空管アンプの音も出せる」ことがウリとされていました。で、こちらは75年のスウィートのPV。ええ、メンバー全員がHHのアンプを使ってますね。
Dr. Feelgood / She Does It Right (1975)

 75年の動画をもうひとつ。実はHH IC-100というアンプはマーク・ボラン以外にももう1人、有名な使用者がいます。それはウィルコ・ジョンソン(Dr.フィールグッド)です。先日、某ロック・ギタリストの人とこのアンプの話題になった時に、当方が「あれってウィルコ・ジョンソンが使ってたんだよ」と教えたところ、その彼は目を丸くして「なるほど!合点がいった!」と言ってました。
Buzzcocks / What Do I Get? (1977)

 同様に、パンク・バンド、バズコックスもHHのアンプを愛用していました。ジャンル的に節操がないように思えますが(笑)、実はそこには理由があります。HH IC-100は当時楽器用アンプとしてとても安価で、さらにトランジスタアンプであることが幸いして耐久性にも優れていました。今回動画を載せていませんが、アラン・ホールズワースやジェネシスのスティーヴ・ハケットもHHのアンプを使っていた事があります。
HH IC 100 guitar amp combo

 さて、じゃあどんなアンプなのさということで、アンプとギターの素の音を紹介する動画です。デモ演奏してる人のルックスとプレイから、どうしても有名な英国のギタリストを思い出してしまいますが、ピート・タウンゼントとHHはまったく関係ありません(笑)。ギターアンプといえば真空管だよね!という思い込みは(当方を含め)今も根強く残っていますが、歴史を振り返れば「実はそうでもないんだな」ということがお分かりいただけるかと思います。
*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。




 今年ももう終わりですね〜なんていうつまらない台詞が安易に飛び交う季節。またもやとんでもないニュースが飛び込んできました。10月25日、あのデヴィッド・ボウイがなんと新作を来年1月8日に発表する、と宣言。同時に先行シングルは11月に発売とも発表。時代はネットの時代です。雑誌が印刷されるのを待つまでもなく、ニュースは一瞬で世界を駆け巡りました。で、ここでは来年まで待てないという早漏気味の重症ボウイ患者の為に、その処方箋を先に披露してみようと思います。(2015年11月27日更新分/選・文=大久)


David Bowie / Blackstar (2015)

 曲名は「★」と書くのが本当です。作ってたら11分を越える曲になっちゃったけど、iTunesでシングル配信するには10分以下じゃないとダメだから頑張って短くした、とはプロデューサーのトニー・ヴィスコンティの弁。「(iTunesは)まったく糞な仕様だ」とも言ってます(笑)。まったく70近くにもなって、とんでもないことやらかしますね、ボウイさんは。

Donny McCaslin / Fast Future (2015)

 「Blackstar」は、スピリチュアル・ジャズなんかに親しんだ方であればそれほど驚きには値しない音なのかもしれません。ただ現在の「新世代ジャズ」がテクノやエクスペリメンタル系ヒップホップといったサウンドを完全に昇華した上に成り立っていることを考えると、やはり興味深いですね。こちらはボウイの新作に参加したサックス奏者、ドニー・マカスリンの最新アルバム。

Performance Spotlight: Mark Guiliana (2015)

 実はボウイの新作「★」に参加したミュージシャンは、ほぼ全員が上述ドニー・マカスリンのアルバムに参加したメンバーでもあります。ボウイは「若いジャズのミュージシャンの斬新な発想を思い切り楽しんだ」とのこと。で、なんといっても注目は、このとんでもないドラマーです。ジャズの最先端ドラマーとして知られるマーク・ジュリアナ。2016年早々に自身のカルテットで来日することも決定してます。
David Bowie / Sue (Or In A Season Of Crime) (2014)

 以前も当欄で触れましたが、ボウイがジャズに最大接近したのは、14年に発売したこのシングルでした。この曲ではマリア・シュナイダー・オーケストラにほぼ全ての音楽的イニシアティブを委ねた形でしたが、このセッションでミュージシャンと知り合いになり、今回の新作の制作へと動いていった形になります。新作は2015年1〜3月に録音されたとのこと。新作にはこの「SUE」も収録されますが、この動画とはことなる新録音テイクになる模様。
The Last Panthers | Extended Preview of New David Bowie Track "Blackstar" (2015)

 先行発売された新曲「★」は、発売日である11月20日に初公開されました。それはイギリスのスカイTV制作によるドラマ「ラスト・パンサーズ」の冒頭でフル放送されたものでした。つまりこの曲は同ドラマの主題歌ということです。ドラマの監督ヨハン・レンクが新曲「★」のPVも制作しています。アルバム「★」には「LAZARUS」という曲も収録されていますが、これは現在公開中の同名舞台のためにボウイが書き下ろした曲で、その舞台はあの「地球に落ちてきた男」の現代解釈版という脚本を持った舞台でした。


*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。





 うーん、毎年この時期に恒例でやってる、英デパート「ジョン・ルイス」の「クリスマス・シーズンCM」なのですが。もちろん今年も以下にて紹介しますけど、毎年毎年CMの規模がデカくなりすぎて(発表後2日で700万回再生とか。つまり世界中がこのCMを毎年注目するようになってしまった結果ですが)、今年はややその「臭い」がキツイなあ、と思ってしまいました。今回はそのジョン・ルイス最新XマスCMに加え、いくつか世界のCMをご紹介。(2015年12月4日更新分/選・文=大久)


John Lewis Christmas Advert 2015

 「Man On The Moon」と題された、最新CMです。ええ、ファンタジックで、映像も美しくて、心が温かくなって、そういう意味じゃ文句ないですよ。ないんですけど、なにも「特別な」ものがないといいますか、心に刺さるものがないんですよね。いいんですけどね。それはこの動画のコメント欄にウザったいほど羅列された宣伝リンクからも感じてしまいます。BGMは94年のオアシス「HALF THE WORLD AWAY」のカヴァーで、歌うのはノルウェー出身、現在19歳のシンガー、オーロラさん。
Aldi Christmas Advert 2015

 こちらは創業国ドイツをはじめ、現在アメリカ他世界中に店舗を構えるディスカウント・ストア、アルディの2015年クリスマスCM。映像の世界は全部お菓子の国の出来事です、というシンプルな構成と、「好きなものはなんでも揃ってる」というコンセプトがとっても分かりやすくて。ええ、こちらのほうが嫌味がないですね(笑)。

TK Maxx Christmas 2015 TV Advert

 TKマックス(アメリカのデパート・チェーンTJマックスが、商標の問題でアメリカ以外でチェーン展開する際に使う名前)が製作したクリスマスCM。「隣人を愛せよ」などと書くとやけに重々しいカンジがしますが(笑)、ただシンプルに、お隣りさんにもささやかなXマス・プレゼントなんてどうですか?というほのぼのCMです。

PayPal UK Christmas Advert 2015

 「No Presents」と題されたこのCM。あのPAYPALが英国向けに製作したCMです。PAYPAL、ええ、当方もよく利用します。昔PAYPALがなかった時代にはマネーオーダーだバンクワイヤーだウェスタンユニオンだと面倒くさい手続きを沢山踏んだものですが、PAYPALのおかげでもうそういった手続きはほぼ不要になりましたもんね。そんなことより恐ろしいのはこのCMの中身です。見た目は幼い兄弟ですが、親の行動や仕草をつぶさに観察し、おかしいな、どうなってんだ?と疑心暗鬼に陥るというCMです。まさに「見た目は子供、頭脳は大人」というカンジです。
Coca Cola / Share The Goods (2013)

 こちらは今年のものではなく、2年前に作られたCMです。ハンガリーのブタペストで収録された、コカコーラ「SHARE THE GOODS」キャンペーンCM。「ただでコーラを飲むか、何かいいことを誰かとわかちあうか」という選択を迫られるわけですが、結果は動画の通り。コカコーラ側も「サンタはどこにでもいる」というコメントを付けていますね。このCMを元ネタにした某キャンペーンCMもあるのですが、そちらは別の機会に。
Flashmob of British Army musicians

 クリスマスなので、クリスマスらしい動画を最後に。英国陸軍音楽隊によるフラッシュモブ動画です。フラッシュモブ、つまりドッキリ動画なワケですが、ブリティッシュ・アーミーはこれがどうも大好きらしく(笑)、英陸軍公式YOUTUBEチャンネルにはコソボの動乱とかの物騒な映像にまぎれて、この音楽隊のフラッシュモブ動画が沢山アップされています。演奏してる曲はデヴィッド・エセックスの「WINTER TALE」。


*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。