唐突ですが、ドラムマシンの特集をやってみます。ドラムマシン。リズムボックスと呼んでも、ビートボックスと呼んでも構いません。とりあえず機械がビートを生み出すものを全部指していますが、ここでは音楽用途でビートを生み出す機械に限定しています。クオンタイズがどうとかベロシティーがどうとか、音楽知識のある人に限ってウンチクというものが増えてしまいますが、マシンは人間の代用品ではない、ということを再認識する一助になれば、幸いです。(2016年1月29日更新分/選・文=大久)
Chamberlin Rhythmate Tape Loop Drum Machine
このメカメカしい&仰々しいルックス。素晴らしいですね。世界最初のリズムボックスは1930年に開発されたリズミコンという巨大な箱で、スタンリー・キューブリックの映画「DR.STRANGELOVE」(64年)のサントラで使用されたことで知られますが、とても実用的とはほど遠いものでした。で、こちらは1957年に開発されたリズメイトというリズムマシン。なんとあのメロトロン同様にテープに吹き込んだ音声をヘッドで読み取り発声するという仕組みです。PCM音源のドラムマシンと同様の考え方が、既に1957年にあったという証拠ですね。 Wurlitzer SideMan - 1950s Tube Drum Machine
1959年、ピアノやオルガンで有名なウーリッツァー社がサイドマンという名のドラムマシンを発表しました。まるでタイヤのホイールを全自動洗車マシンが回転して掃除してるかのようなパターン(ワルツ、ボレロ、タンゴ、マーチ、チャチャe tc)の生成機構に、胸がキュンキュンしてしまいます。もちろん音源増幅には真空管を使用。いや、ホントにこういうの素晴らしいですよね。
KEIO DONCA-MATIC DE 20 - Analogue Rhythm Machine from 1966
世界からやや遅れる形になりましたが、60年代になって、当然日本の電子機器メーカーもリズムマシンの製造に打って出ます。日本初のリズムマシンは京王技研(現在のKORG社)のドンカマチック。そうです、一般に「ドンカマ」という単語を日本の音楽シーンで有名にしたその大元のマシンです。最初のモデルは1963年発表、そちらはセミオートでしたが、66年に全自動のモデルとなりました。プリセット・パターンは20種。 Maestro Rhythm King MRK-2
60年代後半、アメリカのマエストロ社(ギターで有名なGIBSON社傘下の、電子機器部門の子会社)がこのリズムキングという名のリズムマシンを発表しています。既にこの頃になると、より小型に、そしてより多くのプリセットパターンを持ったリズムボックスが世界各社から発売されていましたが、このリズムキングは初期のリズムマシンとして最も有名な類いのモデルです。というのも、スライ・ストーンが69〜70年代にかけてこのリズムマシンを使って多くの楽曲を作ったからです(註:スライは他のモデルも使用しましたが、アルバム『暴動』でこれを使用したことで有名です)。 EKO ComputeRhythm drum-machine from 1972
上で「より多くのプリセットパターン」と書きましたが、勿論音楽制作に使用するパターンは100や200では足りる訳もありません。そこでパターンを自作できる(=自分でシーケンス・パターンを作れる)マシンが生まれます。これでやっと「ドンカマ」の時代が終了するわけですね。こちらはイタリアのEKO社が1972年に発売したドラムマシン。パターンが光る! それだけでなく、穴をあけたカードでパターンを保存/読み込みすることまで可能! 素晴らしい。もうこの動画見てるだけで当方は絶叫してしまいそうなほどに、心臓がドギマギします! 音はショボイですが、これを越えるルックスを持ったリズムマシンを他に知りません。是非このマシンを完全復刻して欲しいです。
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