てりとりぃ放送局アーカイヴ(2016年8月26日〜2016年9月9日分)



 個人的なことですが、最近新しいキーボードを買いました。かなりの安物で、取り立ててコレといった特殊な機能もなく、ただのMIDIマスターキーボード変わりでしかありません。が、それにしても最近のキーボードは使いやすいですね。グリグリとツマミなんか回さなくても、自在に音色を操れます。ところが本稿を書いてる人間はヘンテコなキーボードも大好きだったりします。今の時代こういうはを使うことすら難しいのですが、それでもフェティッシュなその魅力は永遠です。(2016年8月26日更新分/選・文=大久)


Optigan Musical Instrument

 1970年に、画期的なキーボードが発明されています。なんと左手のボタンでリズムや伴奏をワンボタンで操作し、右手で主旋律を奏でる、という1人バンドが可能なキーボード=オプティガンのことです。なんと恐ろしいことに、このオプティガンはリズムや伴奏のプリセット・サウンドが「アナログ・レコード」なのです! レコードを再生し、そのスピードを変えることでキーやテンポを変えるというとんでもない構造でした。世界には「オプティガン用のリズム・レコードを収集する」という恐ろしい人種の人も存在します。

Vako Orchestron Optical Disc Playback Sampler

 そのオプティガンを進化させたキーボードとして、VAKOオルケストロンというものもあります。もはやシンセサイザーじゃないか、と思わせる音色ですが、実はこのキーボードも音源は「アナログレコード」です。この動画をみれば、その音色アナログ・レコードをホイホイと入れ替えて、音色をササっと変更している場面が確認できます。クラフトワークが一時期これを使用していたことで有名ですね。

Birotron B90

 以前メロトロンの特集を本稿でやったことがありますが、基本的にそれと同じ原理=音源が録音されたテープが周り、それを再生することで発音するキーボードとして、このバイオトロンもあります。こちらはメロトロンほど有名ではなく、というかまったく知られていない部類の鍵盤楽器です。70年代にこのバイロトロンはあのイエスのリック・ウェイクマンの出資と協力によって興されたのですが、メロトロンとは異なりこちらは「8トラ・テープ」を再生して発音する仕組みでした。

Chamberlin M1 Demonstration Video

 さて、チェンバリンです。チェンバリンも内蔵テープを再生して発音するメロトロン方式の鍵盤楽器ですが、メロトロンの大元にもなった「元祖」です。ただしこちらは1948年の開発以降、ジャンジャンとイノベーションを繰り返し、1970年代には最も信頼度の高いモデル「M1」が発表されています。音色が10数種になり、かつエフェクトまでかけられるという画期的なもの。まあこの動画は音とかどうでもよくて、赤いドレスのお姉さんだけを見てればいいんですが(笑)。

I Love The 1970s - The Stylophone

 最後はスタイロフォン。オモチャの電子オルガンです。1960年代末に発売され、イギリスのお笑い芸人が宣伝に一役買ったことで大ヒット商品となりました。専用のタッチペンでパッドに触れると音がでる、というモノシンセですが、なんといってもこのオモチャはデヴィッド・ボウイがヒット曲「SPACE ODDITY」で使用し、広告にも登場したことで知られます。もちろん当時はイギリス製でしたが、内蔵スピーカーがインド製だったりして、なかなか面白い構造です。


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 古今東西カヴァー曲がオリジナルを大幅に上回る認知を得てしまうことはよくあります。どっちが偉いかなんて話は全くもってどうでもよくて、ただ真正直に手続きを経てカヴァーすればいいんです。最近は勝手に変な権利を主張する輩とか、勝手に無許可でカヴァーする人がいるのでなかなかこういう話も通じにくい世の中になってきましたが。で、今回は「オリジナルのほうが忘れられがちな」名曲5選。(2016年9月2日更新分/選・文=大久)

James Ray / I've Got My Mind Set On You (1963)

 1987年、ジョージ・ハリソンの大復活シングルとして大ヒットしたこの曲は、1962年にルディー・クラークという作家により作曲され、同年ジェイムス・レイというR&Bシンガーによって歌われた楽曲でした。ジェイムス・レイの一番有名な曲はこれではなくて、同62年にヒットした「If You Gotta Make a Fool of Somebody」という曲のほうなのですが。

Racey / Kitty (1979)

 ヒット請け負い人、マイク・チャップマンの手による「Mickey」。もちろんトニー・バジルのヒットで有名なパワー・ポップですが、元々はレイシーというロック・バンドのために用意された曲で、当初はタイトルも「Kitty」でした。キティーからミッキーへ、という変遷はそのまま男性曲から女性曲へ、という目的がハッキリしたもので、もちろん日本でも有名な子供向けキャラのソレからインスパイアされています。

Robert Hazard / Girls Just Wanna Have Fun (1979)

 1983年シンディー・ローパーのデビュー・ヒット曲としてお馴染み「ハイスクールはダンステリア」(註:その後この曲の邦題は前述のそれではなく、原題のカタカナ表記に変更になったとのこと。ふーん、馴染みないですけどねえ)は79年にロバート・ハザードという男性ロック・シンガーにより作曲・演奏されたものでした。自身はヒットに恵まれませんでしたが、08年に59歳で亡くなっています。

Bruce Woolley / Video Killed The Radio Star (1977)

 ご存知バグルスの大ヒット曲。この曲のライターにトレバー・ホーンズ、ジェフ・ダウンズと共にブルース・ウーリーという男性の名を見つけた方は御承知だと思いますが、元々はブルース・ウーリー&ザ・カメラ・クラブというバンドのために制作された曲でした。このバンドにはトーマス・ドルビーも在籍していましたが、その2年後ホーン&ダウンズの2人ユニット、バグルスによって再レコーディングされたのが件のヒットとなりました。

Ray Kennedy / You Oughta Know By Now (1980)

 最後にこれを出すのは卑怯な気もしますが、八神順子「パープル・タウン」の元となった曲です。そのいきさつは既に皆さん御承知だと思うので特筆しませんが、オリジナルはこんなハードロック色バリバリの、まるで「ダサいアルカトラス」といった風情を醸し出した(笑)曲だったんですね。この曲、後に女性メタル・バンドのヴィクセンが、さらにはあの小柳ルミ子もカヴァーしています。

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 マーク・キングっていうベーシスト。有名ですよね。レベル42でベッキンベキンにチョッパーかましてたお兄さんですが、勿論ボーカリストとしても同バンドで大活躍。ブリティッシュ・ジャズ・ファンクをシーンの最前線に持って行った立役者でもあります。昨今は「レベル42歌謡」とか「シャカタク歌謡」なんて言葉が使われたりすることもあるんですが、そのボキャブラリーの是非はともかく、今回はそんな日本でも大人気のマーク・キングのプチ特集です。(2016年9月9日更新分/選・文=大久)


Level 42 / Starchild (1981)

 まずはバンド最初の大ヒット曲。この曲は英ジャズ・ファンク界隈で大人気で、2000年位にはあのMOUSSE T率いるペパーミント・ジャムからリミックス・シングルが出たりもしてましたね。それにしてもベースの位置が高い。当方は基本的にロック野郎なので、ベースの位置が高い人をあまり信用しできないという病気にかかってますが(笑)、それはともかくマーク・キングを経由して「アレンビック」を知ったという人も多いかと思います。

Level 42 / Lessons In Love (1986)

 んで、全英3位となったレベル42最大のヒット曲です。シャレオツですねえ。86年当時はシャカタクの人気が一段落して、最新のオサレ・サウンドがレベル42になった時期、にあたると思います。この後スウィング・アウト・シスターが出てきて(87年)、その後一気に世代交代することになりますが、生演奏でこれを出来ちゃうのはやっぱり凄いです。

Mark King Slap Solo

 さて、そのバカテク・ベーシスト、マーク・キングのソロ演奏の動画。アホですね。アホみたいにバカ上手というのもそうですが、持ってる楽器もアホっぽい。そしてベースでそんなことやって何が楽しいのか凡人には理解不能という意味でもアホっぽいです。でも彼に影響されてチョッパーやったりアレンビックのベース持ったり、光るネックのベースに憧れたという人も多いハズ。

David Bowie / Tumble and Twirl (1984)

 こちらはあまり知られてないもの。ボウイが84年に発表したアルバム『TONIGHT』には「TUMBLE AND TWIRL」というラテン・ファンクな曲が収録されていましたが、ここでチョッパーを披露しているのはマーク・キングでした。ただしアルバムではノンクレジットでしたが。それにしてもボルネオ・ホーンズ、最高っスね・・・

Swing Out Sister feat. Level 42 / Breakout & Forever Blue at Prince's Trust (1989)

 最後はこちら。89年のプリンス・トラスト・コンサートは、多くのバンド演奏をレベル42が担当しました(勿論自分たちの持ち歌も演奏してますが。たとえばこちら)。で、こちらの動画はちょっと今振り返ると珍しい、スウィング・アウト・シスターがレベル42の演奏でヒット曲を披露するというライヴ動画。そりゃあこの2ユニットの食い合わせは最高です。ただし80年代限定の「食い合わせ」ですが。



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