個人的なことですが、最近新しいキーボードを買いました。かなりの安物で、取り立ててコレといった特殊な機能もなく、ただのMIDIマスターキーボード変わりでしかありません。が、それにしても最近のキーボードは使いやすいですね。グリグリとツマミなんか回さなくても、自在に音色を操れます。ところが本稿を書いてる人間はヘンテコなキーボードも大好きだったりします。今の時代こういうはを使うことすら難しいのですが、それでもフェティッシュなその魅力は永遠です。(2016年8月26日更新分/選・文=大久)
Optigan Musical Instrument
1970年に、画期的なキーボードが発明されています。なんと左手のボタンでリズムや伴奏をワンボタンで操作し、右手で主旋律を奏でる、という1人バンドが可能なキーボード=オプティガンのことです。なんと恐ろしいことに、このオプティガンはリズムや伴奏のプリセット・サウンドが「アナログ・レコード」なのです! レコードを再生し、そのスピードを変えることでキーやテンポを変えるというとんでもない構造でした。世界には「オプティガン用のリズム・レコードを収集する」という恐ろしい人種の人も存在します。
Vako Orchestron Optical Disc Playback Sampler
そのオプティガンを進化させたキーボードとして、VAKOオルケストロンというものもあります。もはやシンセサイザーじゃないか、と思わせる音色ですが、実はこのキーボードも音源は「アナログレコード」です。この動画をみれば、その音色アナログ・レコードをホイホイと入れ替えて、音色をササっと変更している場面が確認できます。クラフトワークが一時期これを使用していたことで有名ですね。
Birotron B90
以前メロトロンの特集を本稿でやったことがありますが、基本的にそれと同じ原理=音源が録音されたテープが周り、それを再生することで発音するキーボードとして、このバイオトロンもあります。こちらはメロトロンほど有名ではなく、というかまったく知られていない部類の鍵盤楽器です。70年代にこのバイロトロンはあのイエスのリック・ウェイクマンの出資と協力によって興されたのですが、メロトロンとは異なりこちらは「8トラ・テープ」を再生して発音する仕組みでした。
Chamberlin M1 Demonstration Video
さて、チェンバリンです。チェンバリンも内蔵テープを再生して発音するメロトロン方式の鍵盤楽器ですが、メロトロンの大元にもなった「元祖」です。ただしこちらは1948年の開発以降、ジャンジャンとイノベーションを繰り返し、1970年代には最も信頼度の高いモデル「M1」が発表されています。音色が10数種になり、かつエフェクトまでかけられるという画期的なもの。まあこの動画は音とかどうでもよくて、赤いドレスのお姉さんだけを見てればいいんですが(笑)。
I Love The 1970s - The Stylophone
最後はスタイロフォン。オモチャの電子オルガンです。1960年代末に発売され、イギリスのお笑い芸人が宣伝に一役買ったことで大ヒット商品となりました。専用のタッチペンでパッドに触れると音がでる、というモノシンセですが、なんといってもこのオモチャはデヴィッド・ボウイがヒット曲「SPACE ODDITY」で使用し、広告にも登場したことで知られます。もちろん当時はイギリス製でしたが、内蔵スピーカーがインド製だったりして、なかなか面白い構造です。
*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。
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