てりとりぃ放送局アーカイヴ(2016年10月28日〜2016年11月11日分)

 デッド・オア・アライヴのピート・バーンズが先日57歳で亡くなりました。彼の人生はそれはもう地獄へまっしぐら、と言えそうなものでしたが、57年間まっしぐらに「REBEL REBEL」の世界で生き続けたことは驚きに値します。本稿では彼のバイオとか音楽遍歴を追う事を避けますが、今回はデッド・オア・アライヴの初期音源特集。PWLサウンドで有名なDOAですが、初期はゴリゴリでドロドロなゴス・パンク系だったんです。(2016年10月28日更新分/選・文=大久)


Dead or Alive / I'm Falling (1980)

 80年発表のデビュー曲。ピート・バーンズは77年に最初のバンドを(ジュリアン・コープ等と)組んでいますが、そのバンドはシャム69の前座を一回担当したのみで解散したとのこと。何度もメンバーの入れ替えを行い、インディーで最初に出したシングルがこれでした。既にこの頃からKC&サンシャイン・バンド「That's The WAy」等をレパートリーにしてたそうです。


Dead Or Alive / Flowers (1980)

 そのデビュー・シングルのB面曲がこちらの「Flowers」。動画は初期のTVライヴ・パフォーマンスですが番組名が特定できません、すいません。いわゆるドアーズ・ワールドのニュー・ウェイヴ的解釈、ということで間違ってはいないと思うんですが、バンド・メンバーに全員後を向かせてしまうていう発想は、ジム・モリソンにはなかったでしょうね・・・

Dead or Alive / Number Eleven (1981)

 セカンド・シングル。持ってる持ってる。なんていうんでしょうか、ストラングラーズ的なハチャメチャさあり、ロキシー・ミュージックmeetsインスパイラル・カーペッツていうか、イギリス版G-Schmittていうか、そういう「洋楽好きの男の子が最初に飛びつく要素」が満載のサウンドですよね。
Dead or Alive / It's Been Hours Now (1982)

 82年のTVライヴの映像。この前年くらいからバンドは(そう、まだバンドでした)BBCのジョン・ピールの番組等でフィーチャーされるようになり、注目が集まっていました。またこの折りカルチャー・クラブのボーイ・ジョージと共に、アンドロジナス・キャラクターの旗手としても話題となったピート・バーンズ。御承知のように、グラサンをかけたパーカッショニストが彼の(長年の)パートナー、スティーヴ・コイ。

Dead or Alive / The Stranger (1982)

 インディー期最後のシングルで、チャート7位を記録した、彼らにとって初めてのヒット・シングルになります。このヒットを受けてバンドはエピックUKと契約、翌年メジャー・デビューとなります。で、その後は既に御承知のようにダンサブルなシンセポップに梶を切ったデビュー・アルバム、その次にPWLと組んで世界的大ヒットをかっとばしたセカンド『Youthquake』へと連なります。




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 久々の聴き比べ特集。今回は有名なシンセ・ポップ・クラシック「POPCORN」です。ムーグ・シンセサイザーを駆使した曲はこの10年ほど前からありましたが、多くの人の耳に届けられた最初のシンセ・ヒット曲という意味ではこの曲が筆頭にあがるのではないでしょうか。まあ日本ではCMソングとして有名なので、あまりアーティストとかカヴァーものに注目が集まらないのも仕方ないことですが。(2016年11月4日更新分/選・文=大久)


Gershon Kingsley / Popcorn (1969)

 オリジナルです。ガーション・キングスレイという作曲家が69年に作った『MUSIC TO MOOG BY』収録曲ですが、彼はムーグ・シンセ奏者4人を集めてカルテット(ファースト・ムーグ・カルテット)を結成してしまったというド変態です。まるでクラフトワークの出現を予言したかのようなアティテュードと楽曲ですね(実際この曲を「クラフトワークの曲だ」と勘違いしてる人が世界中にいます)。

Hot Butter / Pop Corn (1972)

 そのキングスレイのグループのメンバーだったスタン・フリーというシンセ奏者が自身のインスト・バンド、ホット・バターを結成しこの曲をカヴァー。欧州各国で軒並み1位を獲得、アメリカやオーストラリアでも大ヒットし、世界で200万枚以上のミリオン・セールスを記録。動画はTOTPのダンスものですが、ポップコーンていう名のダンスって、60年代に既にあったんですよね。

Caravelli / Popcorn (1972)

 「ジェットストリーム」でもお馴染みのイージーリスニング界の雄、カラベリ。ポップコーンから松田聖子までなんでもゴザレのカラベリ先生です。早速72年にフルオーケストラ・バージョンで「Popcorn」をカヴァーしています。カラベリ先生の本名がクロード・ヴァゾーリだ、なんてことを当方はたった今知りました。

Crazy Frog / Popcorn (2005)

 時代を現代に移します(とはいえもう10年も前のことですが)。世の中を舐め切ったチンコガエルことクレイジー・フロッグが2005年にカヴァーを発表。クレイジーフロッグの曲作ってる人はホント世の中を舐めてます。で、間違いなくヒットさせているところが恐ろしいわけでして、しかも発売がテクノ/ハウスの名門ミニストリー・オブ・サウンドというところまで恐ろしいわけですが。
Muse / Popcorn (2009)

 さてさて、何と言ってもこの「Popcorn」の近々のカヴァーで有名なものは、現代ロック界の温故知新バンド、ミューズによるものでしょう。こいつらホントに馬鹿。09年のシングル「Resistance」のカップリング曲でしたが、今でもライヴでこれやると大ウケです。そりゃそうだ。誰でも知ってるメロディーですし、あの大袈裟ロックバンドのミューズがやるからまた更に大ウケです。最高ですね。


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 K-TEL。洋楽ファンなら知らない人はいないっていうほど歴史と人気のある「特殊な」レコード会社です。実はレコードだけじゃなくていろんな便利グッズを売ってた、元祖TVショッピング会社でもあるのですが、やっぱり音楽もの、それもK-TEL独自コンピレーションが有名ですね。1962年に創業したこのK-TELのコンピレーションCM特集です。(2016年11月11日更新分/選・文=大久)


K-tel Records "Super Bad" commercial (1972)

 K-TELは今では「インチキ臭いベスト盤を買ってに安価で出すウサン臭いレーベル」と思われがちですが、そんなことはないんです。ジャケはいつもウサン臭いですが。こちらはその時代の最先端ソウル・ヒット曲を集めた『Super Bad』というイカシたタイトルのコンピのTVCM。なんと御大アイザック・ヘイズ先生ご本人がCMに登場、素敵なナレーションを披露。最高っす。

K-tel Records "Super Bad is back" commercial (1973)

 上記『Super Bad』の続編コンピ『Super Bad is Back』のTVCM。こちらはなんとジョー・サイモン本人が登場。それだけでなく、ミリー・ジャクソン姉さんがガッツリCMで歌ってます! 余談ですが、シカゴ出身のコーラス・グループCHI-LITESは、そのカナ表記がいつも別れますよね。で、是非ジョー・サイモンの発音を聴いて下さい。ええ「シャイ・ライツ」と言ってます。今まで「チライツ」とか「チャイライツ」とマヌケな表記を用いてきた音楽評論家の方は懺悔して下さい。


K-tel Records "Mind Bender" commercial (1976)

 上の『Super Bad』シリーズはいわゆるディスコ前夜のソウル曲コンピですが、ディスコ時代を経て、当然のようにこんなコンピが出ています。白黒ジャンル関係ない、この時代のこの音を集めたものです。タイトルもイカシてますよね。ニール・セダカとオハイオ・プレイヤーズとキッスとサルソウル・オーケストラが1枚に入ってるんですから、素晴らしいですよね。

K-tel Records "The Best of Bowie" commercial (1980)

 そしてデヴィッド・ボウイ。K-TEL独自編纂のこのコンピは、ボウイにとって初めての「キャリア全部を総括した」ベスト盤でした。少しヘンテコな曲(ミックス違いだったり強引なエディットだったり)も入っててマニア泣かせの一枚ですが、なんとこのベスト盤は全英3位になってしまいました。凄いぞK-TEL。
K-tel Records "Modern Dance" commercial (1981)

 いやあもうキュンキュンしますね。このジャケとCM。80年代初期のダンス・サウンドとはこういうものでした。そしてこんなケバい化粧をした不気味な顔のオニイさんやオネエさんがイカしてたわけです。奇怪な髪型、奇怪なジャケ。これこそが80年代の英国最先端だったのです。


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