 年末ギリギリになってまたもや大きな訃報が飛び込みました。ピエール・バルーが82年の生涯を閉じました。本来であれば、当方よりも深く長く彼の音楽や人物に親しんだ人がてりとりぃ周辺にはいると思いますが、僭越ながら本稿では、彼の最も有名な曲「SAMBA SARABAH」の聴き比べをすることで、哀悼の意を評したいと思います。(2017年1月6日更新分/選・文=大久)
Samba Saravah (from Un Homme Et Une Femme)
映画『男と女』の挿入歌「サンバ・サラヴァ(男と女のサンバ)」。有名な話ですが、この曲は完全ライヴ録音、というか思いつきの一発録りで、しかも録音物はバーデン・パウエルの自宅のオープンリールのテープに入れられたショボいものしかありませんでした。それが映画他で大活躍するのですから、奇跡というのはやはりあるのだな、と感じてしまいます。
Elis Regina / Samba da benção (1968)
ヴィニシウス・ジ・モラエスが書いた元の曲は「Samba da Benção(祝福のサンバ)」という曲ですが、それの仏語ヴァージョンを作るようヴィニシウスにうながされ、バルーが作ったのが「Samba Sarabah」。こちらは原詞をジャズ・スウィングのスタイルでエリス・レジーナが取り上げたもの。
Baden Powell / Samba Da Benção
演奏を手がけたのは勿論バーデン・パウエル。ピエール・バルーが彼と知り合ったことから映画「男と女」の成功もあり、「サラヴァ」レーベルも生まれました。上記のエリス・レジーナは82年に、バーデンも2000年に亡くなってます。ピエール・バルーも遂にそちらの世界へ仲間入りすることとなりました。
Pierre Barouh and Baden Powell / Samba Saravah (from Saravah) (1969)
映画『サラヴァ』の中での、ピエール・バルーとバーデン・パウエルのデュエットによる「サンバ・サラヴァ」ライヴ演奏。新しい音楽=ボサノヴァの誕生に乾杯!という内容の曲であることにまちがいはないのですが、歌詞中「悲しみのないサンバは酔えないワインのようなもの。そんなものは欲しくない」という部分もあります。
Pierre Barouh / Samba saravah (2013)
最後は2013年のライヴ。お元気そうというか、バリバリじゃあないですか。しかし2016年12月28日、5日間の入院治療の甲斐なく心臓発作で逝去。享年82。奥さんである潮田敦子さんが公にしました。90年代以降よく東京・堀之内にある公民館で小規模なライヴを行なっていたピエール・バルー。一目みておけば、との後悔にかられています。
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