てりとりぃ放送局アーカイヴ(2012年8月3日〜2012年8月17日分)

 ロンドン五輪、ご覧になりましたか? 国によって/競技によって/個人によってこの「スポーツの祭典」に関しての受け止め方は違うでしょうが、それでも「祭典」であることに代わりはなく、そして「祭りに音楽は付きもの」です。近年ではやや形骸化した感もありますが、開催国が威信をかけてプレゼンする開会式/閉会式は「祭典」の象徴でもあります。今回はそんなスポーツ・セレモニーでのパフォーマンス動画を集めてみました。今回は「五輪編」です。(2012年8月3日更新分/選・文=大久)


84 Pianos Playing Rhapsody In Blue (1984)

1984年、ロサンゼルスで行なわれた五輪の開会式。このイベントではロケットを背中に背負ったアンチャンが空を飛んでやってくる、という「ロケットマン」パフォーマンスで有名ですが、こちらの動画はキンボール社製グランドピアノを84台も用意して演奏された、LA五輪開会式でのガーシュウィン「RHAPSODY IN BLUE」。アメリカを代表する曲、として申し分ない選曲でもありますね。ちなみにこの式でアメリカ国歌を歌ったのはエタ・ジェイムスでした。


Lionel Richie / All Night Long (1984)

おそらくオリンピック・セレモニーで「アーティストのライヴ」が売りになったのは1984年のロサンゼルス五輪の閉会式から、と推測されます。この年以降、音楽とスポーツ・イベントのコラボはどんどん密接になっていきました。商業主義の象徴、といわれる84年LA五輪ですが、そこには「(税金投入による)政治の介入を一切阻止するため」という理由もありました。そんな事はつゆ知らず、でしたが、閉会式でライオネル・リッチーが歌った「ALL NIGHT LONG」にはとても感動したことを、今もよく覚えています。


Gloria Estefan / Reach (1996)

LA五輪から12年後、アメリカのアトランタで行なわれたオリンピックの閉会式に登場したのは、キューバ移民のグロリア・エステファンでした。ある意味、多民族国家アメリカを象徴する存在、とも言える彼女が登場することは当然でもあります。ゴスペル・クワイアを交えたこのパフォーマンスは楽曲のすばらしさも相まって、メディアから絶賛されました。グロリアは2010年のテニスのUSオープンでも同じ曲を同じコンセプトで披露しています。

Kylie Minogue / Celecration (2000)

以前掲載した、カイリー・ミノーグ嬢がシドニー五輪の閉会式で披露した「DANCING QUEEN」は、個人的に五輪閉会式のベスト・パフォーマンスなのですが、こちらは同年の開会式で彼女が披露したクール&ザ・ギャングのカヴァー。今年のロンドン五輪ではサー・ポール・マッカーニーが「HEY JUDE」を歌ってましたが、正直盛り上がりには欠けました。しょうがないスよね。だって「HEY JUDE」だもん。

Leona Lewis with Jimmy Page / Whole Lotta Love (2008)

最後は記憶にも新しい北京五輪閉会式。ジミー・ペイジが閉会式に出るよ、ということは既に告知されていましたが、ホントかよあのペイジがあ?と現実になるまで半信半疑だったことも思い出されます。しかしレオナ・ルイスは美人ですねえ。ニッコリ笑って一球蹴るためだけに北京に来たベッカムさんもイケメンですが、何と言ってもジミー・ペイジ。もちろんアテフリですが、当方がおのプレイで一番感動したのは、ペイジ先生がいまだにヒョロ長くてヤワヤワな、HELCO製ナイロン・ピックを使っていた、という事でした。


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 前回の「放送局」からの続き、ミュージックス・フォー・スポーツ・セレモニー、です。既にご承知のように、世界最大のスポーツ・イベントとは(五輪ではなく)FIFAワールドカップで、アメリカ最大のイベントはNFLスーパーボウルです。特に後者は単なる1国1競技1リーグの優勝決定戦でしかありませんが、その日が実質上米国の祝日(休日)になるということでも有名ですね。そんなワケで、今回は五輪以外のパフォーマンス集です。(2012年8月10日更新分/選・文=大久)


Michael Jackson / Super Bowl HT Show (1993)

最近でもパイオツポロリしたジャネット・ジャクソン(04年)とか、ゲスト・ラッパーのM.I.A.がTVカメラに向かって中指立てちゃったマドンナ(12年)とか、NFLスーパーボウルのHTショウはいつも翌日のワイドショーを賑わせるイベントですが、大掛かりな「歌謡ショー」になったのは80年代後半からです。こちらはその象徴ともいえる、1分18秒無言で仁王立ちしたマイケル・ジャクソンのHTショウ(93年)。この「仁王立ち」は「デンジャラス・ツアー」にて、世界各国でもお披露目されました。

Whitney Houston / Star Spangled Banner (1991)

スーパーボウルといえば、HTショウ同様「今年は誰が国歌を歌うのか」も大きな話題となります。こちらは91年のスーパーボウル開会式でホイットニーが歌った時のもの。「過去最高のアメリカ国歌」と呼ばれるものです。余談ですが、83年NBAのオールスター戦開会式ではマーヴィン・ゲイがファンキー・ソウル・ヴァージョンのアメリカ国歌を披露したりもしていて、個人的には(ジミヘンがウッドストックで披露したアメリカ国歌と双璧を成す)名演だ、と思っているのですが、この時全米は「ポカーン」となってしまった模様。

U2 / Where The Streets Have No Name (2002)

こちらは2002年第36回スーパーボウルのHTショウ。前年の911テロの影響でシーズンは一週間中断し、スーパーボウルも1週間延期されましたが、アメリカが「元気を出す」ためには、U2のこの曲とこのHTショウがどうしても必要、だったのでしょう。ダブリンの田舎者が最後の最後にスターズ&ストライプスを掲げるシーンは、全米を(文字通り)感動させました。このパフォーマンスはNFLスーパーボウルのハーフタイム・ショウでもベストワン、と絶賛されるているものです。

Ozzy Osbourne / Take Me Out To The Ballgame (2003)

今もMLB中継等で頻繁に耳にすることのできる野球ソング「TAKE ME OUT TO THE BALL GAME」は、なんと1908年の曲なのだそうです。MLBの試合では7回にこの曲が流れ、終盤に向けて「さあ、いくぞ」の合図となるわけですが(日本でいう「六甲おろし」的なモノ、でしょうかね)こちらは2003年、MLBシカゴ・カブスのゲームで披露された、オジー・オズボーンによる同曲。ベロンベロンに酔っぱらったオジーの歌は「史上最悪のTAKE ME OUT〜」として有名です。いいぞオジー(笑)。

Billy Joel / Piano Man (2008)

おまけ動画。MLBニューヨーク・メッツの本拠地球場でもあるSHEA ("シェイ"と発音しますが日本では"シェア"と表記されます)スタジアムは、古くから音楽イベントも開催されることで有名ですが、2008年に取り壊され、現在跡地は駐車場になっているそうです。こちらは同球場最後のイベントとなった08年6月のビリー・ジョエル公演。「TAKE ME OUT TO THE BALLGAME」に続き名曲「PIANO MAN」を披露する、という素敵な動画です。実はこの公演のハイライト・シーンはこの直前にあったのですが、個人的にはこちらのメドレーのほうが大好きです。

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 先日のモリッシー来日公演も好評のうちに終了したようです。どうやら今、彼のライヴに集まるファンというのは「後追い」世代がメインになっているらしく、ケツに山盛りのグラジオラス刺して意気揚々と武道館に向かった当方のような世代は、もうオールドファッション、なんでしょうね。さて今回は「ガール・シングス・ザ・スミス」です。圧倒的な男性支持で有名なザ・スミス/モリッシーというアイコンを、女性達はどう取り扱ったのでしょうか。(2012年8月17日更新分/選・文=大久)


The Puppini Sisters / Panic (2007)

 レトロ・モダンなジャズ・コーラス・グループ、プッピーニ・シスターズは疑似「姉妹」の3人組ですが、「スウィンギン・パンク」を標榜する彼女達のスタイルは、チージー&ラウンジー、でもロンドン臭い茶目っ気にも溢れています。歌うのは、ザ・スミス楽曲の中でもハード&ファジーなグラム・ナンバー。ここまで思い切りのいいお洒落アレンジだと、逆に壮快です。

Everything But Girl / Back To Old House (1991)

 1980年代、ザ・スミスと同時期にネオ・アコースティック/インディー・ポップの代表グループとして熱い支持を得たEBTG。こちらは91年のライヴ音源で、ザ・スミスのアコースティック・ナンバーを取り上げています。ジョニー・マーのフレーズをベン・ワットが弾く、というのも興味深いですね。


Eurythmics / Last Night I Dreamt That Somebody Loved Me (1989)

 アルバム未収録曲。後に(活動休止前の)ラスト・アルバム『WE TWO ARE ONE』にボーナス曲として収録されました。EBTGの例とは真逆に、シンセ・ポップとしてこの曲を練り直したのはさすがにユーリズミックスですね。ザ・スミス楽曲の中でもブッチギリで絶望感漂うこの曲を選ぶあたりもユーリズミックスらしいですが。

Emily Browning / Asleep (2011)

 『エンジェル・ウォーズ』という邦題の映画を、どのくらいの方がご存知でしょうか? ちょっと残酷で切ないアクション・ファンタジー映画『SUCKER PUNCH』は、超大作だったにもかかわらず世界中でボロカスにけなされた珍しい(笑)作品ですが、主人公を演じたエミリー・ブラウニング嬢自らシンミリと歌う「ASLEEP」は、劇中の役柄を考えると恐ろしい程のマッチングをみせる、涙モノの選曲です。サントラの日本盤が出てない、というのも寂しいですねえ。



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