てりとりぃ放送局アーカイヴ(2014年1月17日〜2014年1月31日)

 ルル。60年代にはイギリスのカワイ娘チャン・アイドル歌手として有名ではありましたが、それ以降彼女はその実力でもってイギリスを代表するホワイト・ソウル・シンガーとなりました。思えば最初のヒット曲「SHOUT」の頃から彼女の歌のスタイルは変わっていないんですよね。というワケで今回はそんなルルが残した歴代デュエット・ソングを並べてみました。声だけでなく、いまだに衰えを知らないアクティヴィティーとルックスにも脱帽。(2014年1月17日更新分/選・文=大久)


LuLu / The Man Who Sold The World (1974)

 プロデュースはボウイ本人で、バックはスパイダース・フロム・マースが務めています。この共演をオファーしたのはボウイのほうで、最初は乗り気でもなかったルルでしたが、「あなたとならトンデモない曲が生まれそうだ」と口説いたところ、次第にボウイに夢中になり、このカヴァーが生まれています。ルルはこの曲の歌入れに際して「(曲調にマッチさせるために)もっとタバコを吸った方がいいよ」というアドバイスをボウイからされています。

Shirley Bassey & Lulu / You're The One That I Want (1979)

79年、シャーリー・バッシーのバラエティー・ショウに出演し、デュエットを披露するルル。歌うのは映画「グリース」のテーマ曲としておなじみの「YOU'RE THE ONE THAT WHAT I WANT」。動画後半ではルルはソロで持ち歌である「COME SEE WHAT LOVE」を歌っていますが、完璧なフィリー・ダンサーになっているのも聴き所です。

Lulu & Bobby Womack / I'm Back For More (1993)

 ちょっと時代が飛びますが、93年に発表されたルルのアルバムより。ボビー・ウーマックとのゴージャスなデュエットを披露していますが、それよりも曲が(当時の)最先端のグラウンドビートになっていることも驚き。曲は78年レオズ・サンシップによるアーバン・メロウ・グルーヴのカヴァーですが、80年にアル・ジョンソンがジーン・カーンとのデュエットで残したバージョンを下敷きにしていることは間違いありません。

Take That Featuring Lulu / Relight My Fire (1993)

 上述のアルバムはフランキー・ナックルズ等をリミキサーに迎えたコンテンポラリーなダンス・アルバムでしたが、同年彼女は当時人気絶頂のアイドル・グループ、テイク・ザットとの豪華なデュエット・シングルを発売し、全英1位を記録する大ヒットとなっています。近年もルルはチャカ・カーン、アナスタシア等と「HERE COMES THE GIRLS」というジョイント・ツアーを行なっていますが、そのステージでもハイライトとなったのはこの曲でした。もちろんダン・ハートマンFEAT.ロレッタ・ハロウェイによるディスコ・クラシックのカヴァーです。


LuLu & Marvin Gaye / I Heard It Through A Grapevine (2006)

マーヴィン・ゲイはルルにとってあこがれのシンガーでもありましたが、こちらの動画は英BBC-TVが企画・放映した「DUET IMPOSSIBLE」という番組で実現した「非現実」デュエットの模様。同番組では他にもボーイ・ジョージが「83年の自分と」デュエットしたり、アイドル・グループのウエストライフがロイ・オービソンとデュエットしたり、なんていう共演をCG合成を駆使して実現させています。



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 G.E.スミス。もちろんホール&オーツ・バンドでの活躍で知られる米国人ギタリストですが、今回は彼のこれまでの「裏方家業」といえそうなお仕事をおさらいしてみようと思います。正直言って日本ではそれほど有名なプレイヤーではありませんが、ファンキー&ブルージー、そしてアメリカでは「現代最高のテレキャスター使い」とまで呼ばれるミュージシャンズ・ミュージシャン、G.E.スミスの素敵なプレイをご紹介。(2014年1月24日更新分/選・文=大久)


Dan Hartman / Instant Replay (1978)

 ダン・ハートマンによる78年のヒット曲。というよりはNYディスコ・クラシックの最高傑作のひとつでもあるこの曲を含む同名アルバムで、G.E.スミスは全編でリズムギターを担当しています。動画ではベースを弾いていますが、もちろんアテフリ(スタジオ版でベースを担当したのはダン・ハートマン本人)。リードギターを担当しているのは、後にKISSの2代目ギタリストとして有名になったヴィニー・ヴィンセント。そんな恐ろしい顔合わせでこんなディスコの名曲が生まれたか、と思うとうれしくなりますねえ。

David Bowie / Fashion (1980)

 80年のボウイのシングル曲。録音には参加していないのですが、NYで収録された同曲のプロモクリップの撮影に、G.E.スミスは参加しています。余談ですが、このPVに出てくるアジア人女性は、米国滞在中のジョン・レノンの公私にわたるパートナーでもあったメイ・パンで、当時女優としてのキャリアを歩んでいた彼女は後にこの曲のプロデューサーでもあるトニー・ヴィスコンティと結婚しています。

Daryl Hall & John Oates / Wait For Me (Live/1983)

 最も有名なG.E.スミスのお仕事、といえるH&O作品群でのプレイですが、こちらはまさしく彼らの人気絶頂期のライヴで、83年にカナダのモントリオールで収録されたもの。スタジオ版も最高なんですが、こちらのライヴ版もやっぱり最高でして(笑)、H&Oが初めて発売したベスト版「FROM A TO ONE」でも同曲はこのカナダのライヴ音源が収録されました。

G.E.Smith on "Saturday Night Live" (1985-1990)

G.E.スミスは85年以降、アメリカの有名なバラエティー番組「サタデーナイトライヴ」の音楽監督というお仕事を引き受けています。同番組ではCMの前後でジングル的に短い生演奏が挿入されうのですが、こちらの動画はその短い演奏シーンばかりを大量につないだもの。まさに、アメリカン・ルーツに根ざした彼のスタイルがそのまま凝縮されたような動画となっています。

Roger Waters & G.E. Smith / Jam (2010)

02年にはビートルズ「ホワイト・アルバム」を全曲R&Bスタイルでカヴァーするコンピ盤に参加したりもしていますが、こちらは2010年、ソロ・ツアーを行なったロジャー・ウォータース(ピンク・フロイド)のバンドに参加した時期に残されたオフでのジャム・セッション動画。もちろん今も現役で元気バリバリに演奏活動を続けるG.E.スミスですが、08年には彼の業績をまとめたドキュメンタリー「50 WATT FUSE」も制作されていて、トレイラー動画も公開されています。



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 欧米のノベルティー・ソング(=コミック・ソング)の特集をやってみたいと思います。曲調や歌詞も含めて「何が面白おかしいのか」はそのお国の文化事情をリニアに反映しますから、我々日本人がすぐにゲラゲラ笑うようなものは滅多にありません。ただ、どこか1部でも「あ、これ知ってる」というポイントがあるとニヤニヤしてしまうような曲が山のように存在します。今回は英国モノを中心に、有名なノベルティー・ソングの代表的なものを集めてみました。(2014年1月31日更新分/選・文=大久)

Mandy Miller / Nellie the Elephant (1956)

 チルドレン・ソングとしてイギリスで最も有名な、マンディー・ミラー嬢による「NELLIE THE ELEPHANT」。頭のいい象が登場する同名TV番組のために作曲されたものですが、当然ながら現代ではあのおバカ・パンクロック・バンド、トイ・ドールズが83年にカヴァーしたヴァージョンで圧倒的に知られているところです。「ネリーさんだ象」という秀逸な邦題も忘れがたいところですね。オルガ、元気かなあ?
Allan Sherman / Hello Muddah Hello Faddah (1963)

 オバカ・ソングの代表的な存在ともいえるアラン・シャーマン。なんと言ってもこの曲はグラミーを獲得(64年)した程に親しまれた曲で、日本でもこのメロディーラインはいまだによく耳にするところでしょう。アラン・シャーマンは歌手でも俳優でもなく、コメディーの脚本家&TVプロデューサーだった人で、ノベルティー・ソングを歌ったらヒットしてしまった、というあたりが珍しいといえるのかもしれません。

Lally Stott / Chirpy Chirpy Cheep Cheep (1970)

 チャーピーチャーピーチープチープ。明らかにゴロだけで作られたサビとタイトルですが、ラリー・ストートという歌手/コンポーザー(77年、ハーレーに乗ったまま事故で他界しています)によるこのオリジナル・ヴァージョンはフランスでのみヒットを記録しました。翌年イギリスで美女シンガーのサリー・カーをフロントに据えたミドル・オブ・ザ・ロードというグループがカヴァーし大ヒットを記録したことで有名かと思います。
Lieutenant Pigeon / Mouldy Old Dough (1972)

 ノベルティーというくらいですから本来は面白おかしい歌詞があって当然、ではありますが、インストのノベルティー・ソングというものも存在します。元々このルーテナント・ピジェオンというグループは、別なグループで活動するミュージシャンがスピンオフ的に結成したユニットですが、この「MOULDY OLD DOUGH」がなんと全英NO.1になってしまってさあ大変。なんと今でもバンドは存続していますが、オリジナルのメンバーは誰1人残っていません(笑)。
"Take Me Back to Dear Old Blighty" on "The L Shaped Room" (1962)

 いわゆる「ノベルティーソング」とは趣を異にしますが、最後にこの曲をご紹介。曲は1910年代に作られたもので、第1次世界大戦時に世界中に赴任した英国軍人が「あーロンドンに帰りてえなあ」というグチ代わりにこの曲を口ずさんだ、という言い伝えがあります。以降、イギリスでは「古き良き英国」を懐かしむ曲として親しまれる有名曲ですが、あのザ・スミスが名曲「THE QUEEN IS DEAD」の冒頭でこの映画挿入歌を引用したことでもなじみ深い曲です。


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