てりとりぃ放送局アーカイヴ(2014年4月11日〜4月25日分)

  土曜の朝、の特集です。とはいえここで「サワコの朝」や「プリティーリズム」や「まーご」のことを特集するわけではありません。土曜の朝といえば60年代以降アメリカでは「アニメ」の時間帯と相場が決まっておりますが、全米の子供達が熱狂したその「土曜の朝のアニメ」は音楽業界にも多大なる貢献をしています。95年には「土曜の朝のアニメ」へのトリビュート・アルバムまで制作・発売されていますが、今回はそのトリビュート作を動画で楽しんでみたいと思います。(2014年4月11日更新分/選・文=大久)



Sponge / Go Speed Racer Go

 67年にタツノコプロが制作した「マッハGoGoG0」は、当時アメリカでも「SPEED RACER」の名でオンエアされ人気を博したことは既にご承知かと思いますが、テーマ曲も「GO SPEED RACER GO」のタイトルで全米で大人気。で、こちらはそのテーマ曲を米オルタナ・バンドのスポンジがカヴァーしたもの。

Helmet / Gigantor

 ジャイガンター。こちらもすでにお馴染みですね。56年に横山光輝が描いた「鉄人28号」は、64年から3年にわたって米でアニメ化され放映されています。さすがにこちらは「ビルの街にガオー」という例のテーマ曲を使うわけにはいかず(笑)、もうちょっとファンキーな「GIGANTOR」というテーマ曲が作られました(作=ルイス・シンガー&ユージン・ラスキン)。こちらはその米版テーマ曲をNYのスラッシュ・オルタナ・バンド、ヘルメットがカヴァーした動画。

Face to Face / I'm Popeye (The Sailor Man)

 ポパイ。カリフォルニア出身のメロコア・バンド、フェイス・トゥ・フェイスによるカヴァーです。ポパイは1929年に開始された漫画ですが、最初の10年間はハムとオリーヴが中心の漫画で、スタート後10年経ってからポパイ、オリーヴ、ブルートの三つどもえコメディーになった、とのこと。何度もアニメ化/映画化/他多くのリメイクがありますが、80年の実写映画の日本語吹き替えをいかりや長介氏が担当したことも思い出されます。

Mary Lou Lord with Semisonic / Sugar Sugar

 アーチーズ、最高ですよね。なんといってもガレージ臭さえ漂うこのテーマ曲が。アーチーズはアニメの中のフィクション・バンドでありますが「ベース・プレイヤーがいないバンド」として全米ではドアーズと人気を2分する程のポピュラリティーがあります(笑。でも実話です)。カヴァーしてるのは米インディー・フォークの歌姫、メアリー・ルー・ロードで、バックに米オルタナ・トリオ・バンドのセミソニックスを従えての録音。


Ramones / Spider-Man

 最後はやはり、そう、スパイダーマンです。演奏するのはみんな大好き我らがラモーンズ。楽曲の良さや、アーティストのカッコ良さに関して今更何をかいわんや、ですが、ここでは動画にご注目。実はこの曲には本人による演奏シーンを挟み込んだ公式PVが他にもあるのですが、あまりにも素晴らしいアニメーションによってラモーンズを描き切ったこちらの動画のほうがやはり最高なわけです。



*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。



 シックというファンク・バンドに在籍したバーナード・エドワーズっていうベーシストがいます(1952-1996)。今回は彼の特集なのですが、シックのみならず、ダイアナ・ロス、マドンナ、ABC、ジョディー・ワトリー、他多くの有名曲のベースラインをプレイし多くの大ヒット曲に多大なる貢献を残した人でもあります。ここではそんな売れっ子ファンク・ベーシストだった彼のシック以外の歴史を少しご紹介してみます。(2014年4月18日更新分/選・文=大久)


The Big Apple Band / You Should Be Dancing (1976)

 ナイル・ロジャース本人がYOUTUBEにアップした動画。まだシック結成以前、ナイル・ロジャース、トニー・トンプソン、そしてバーナード・エドワーズが組んでいたファンク・バンド「ビッグ・アップル・バンド」による、ビージーズのカヴァーです。ボーカルはボビー・コトラーという人で、のちにイタリアのレーベルからソロ・デビュー盤をリリースした人。同じメンバーでEW&F「ゲット・アウェイ」のカヴァーを披露した動画も残されています。

Sister Sledge / Thinking Of You (1979)

 シックが世界的な成功を収める中、シック・オーガニゼイション(=プロデューサーとしてのチーム・シック)も世界中のチャートを席巻することとなりました。その最も有名なもののひとつであるシスター・スレッジ作品でも、特にイギリスで大きな人気を誇るこちらをご紹介。フリー・ソウル・クラシックでもありますが、近年でもポール・ウェラーがカヴァーしたことでも有名かも。

Bass Solo on Power Station's "Get It On" (1985)

 デュラン・デュランMEETSシック、という組み合わせでできたスペシャル・ユニット「パワー・ステーション」は、その殆どのベースラインをバーナード・エドワーズが演奏しています。もちろんクレジットされておらず、ジョン・テイラーが弾いたことになっていますが、誰がどう聞いたってこのベースはジョン・テイラーであるハズもなく(笑)。別にジョン・テイラーはこの件に関して秘密にしてたわけではありませんが、この件をケチョンケチョンに言ってた人がアンディー・テイラーというギタリストでした。

Ian Hunter and Mick Ronson / Women's Intuition (1990)

 以外なセッションのひとつ。同時に本作はミック・ロンソンにとって(自身名義の)最後の録音物となりました。余談ですが、ファンク・ギター・マスターでもあるナイル・ロジャースはデヴィッド・ボウイという人に「ずっと憧れてた。彼の後ろでギターを弾きたいとずっと思っていた」という変わった人で(笑)、ボウイとの共演以来仲良しになれたことを喜んでもいましたね。バーナード・エドワーズも同様だったのかも、なんて考えさせられる1曲。


Nile Rodgers and Bernard Edwards live at Budokan (1996)

「音楽だけではなく、僕の人生のパートナー、バーナード・エドワーズ!」。既にシックという名義ではありませんでしたが、ナイル・ロジャースの日本武道館公演に帯同し、ベースを担当したバーナード・エドワーズ。このライヴがあったのは1996年4月18日ですが、前日から不調を訴えていた彼はライヴ終了後ホテルの部屋にまっすぐ戻ったのですが、そのまま息を引き取りました。急性肺炎でした。冷たくなった彼を発見したのは、ナイル・ロジャースでした。



*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。



 ハープギターと呼ばれる楽器があります。実はもう100数十年にわたる歴史があるにもかかわらず、殆ど一般の人の目には触れる機会のない楽器かと思いますが、当方はギターオタクなので、もちろん知ってます(笑)。で、今回はそのハープギターの特集です。さすがに1900年頃の映像は残ってはいませんが、近年でもニッチな世界で細々と生き残っているこの珍しい楽器をご覧ください。(2014年4月25日更新分/選・文=大久)


Michael Hedges / Cello Suite #1 in G Major

 ソロ・ギタリストとしてニューエイジ・ミュージックの世界に新風を巻き起こしたマイケル・ヘッジズ。残念ながら交通事故で故人となりましたが、彼はあらゆるギターの可能性を探求したひとりでもありました。こちらは1910年代に製造された米国ダイアー・スタイルのハープ・ギターを用いて、バッハのチェロ組曲1番を披露しています。

Michael Hedges with Klein Electric Harp Guitar

 そのマイケル・ヘッジズからの要請で、エレクトリックのハープ・ギターがカスタムメイドされています。作ったのはスティーヴ・クラインというギター・デザイナーで、スタインバーガー社から発売されたヘンテコなギターをデザインした人物でもあります。ご覧のように、ハープ弦部分はほとんどベース音を担当するために用いられていますね。

'O Kerstnacht schoner dan de dagen' harpgitaar

 演奏している方を全く存じませんが、こちらの楽器は1900年前後に製造された、ヨーロッパ製のハープギター。ドイツ、スイス、オーストリア周辺で「シュランメルギターレ」もしくは「コントラギターレ」と呼ばれていたもので、当地の伝統音楽(そのままシュランメルミュージックと言われます)で用いられた楽器です。ちなみに前述のスティーヴ・クライン氏のお父さんという人はドイツ出身で、シュランメルギターの演奏者でもありました。


The Band / The Last Waltz Credits (Outro)

 ロック・ファンにとって、このハープギターという楽器を鮮烈に印象づけているのは、ザ・バンドによる映画「ラストワルツ」のこのシーンでしょう。ロビー・ロバートソンが演奏している黒くてでっかいギターはギブソン社がまだマンドリン製造会社だった当時に作られた「スタイルR」と呼ばれるハープギターで、1907年(かそれ以前)製です。これ、ホントにデカいんですよね。

Coverdale - Page / Take Me For A Little While

 最後はジミー・ペイジ先生。まあカヴァーデイル・ペイジというユニットに関しては賛否両論あってしかるべき、ですが、ここは映像に登場するハープギターにだけ注目してあげてください。とはいえ実際には完全にアテフリで、録音にはこのハープギターを使っていない(恐らく録音にはマーティンのトリプルOを用いたかと)と思われます。

*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。