てりとりぃ放送局アーカイヴ(2014年9月5日〜9月19日分)

 今年実はフリーソウル20周年なんです。当方も個人的にとっても感慨深いものがありますが、まあそんなことはともかく、今回は特に英国でも人気の高いジョニー・ブリストル作「HANG ON IN THERE BABY」の聴き比べをしてみます。70年代ソウルの超名曲ですが、発表当時は「隠れた名曲」だったんですよね。でも名曲すぎていまや隠れる場所もない程に有名になってしまいました。ちなみにジョニー・ブリストルは2004年3月、65歳の若さで亡くなっています。(2014年9月5日更新分/選・文=大久)



Johnny Bristol / Hang On In There Baby (1974)

 もう完璧なフリー・ソウル・クラシック、ですね。この天にも昇らんばかりの輝かしいアレンジはH.B.バーナム、というベテラン・アレンジャーの手によるもので、彼は50年代にカウント・ベイシーやフランク・シナトラを、60年代にはアレサ・フランクリンやシュープリームスを、そして70年代にはルー・ロウルズを手がけた人物。
Bette Midler / Hang On In There Baby (1979)

 ベット・ミドラーが79年に発表した5作目となるアルバム『THIGHTS AND WHISPERS』は、それまでの路線から一変、いきなりディスコ・オリエンテッドなダンス・アルバムとなりました。その中で取り上げられたのが「HANG ON IN〜」だったわけですが、例によってアリフ・マーディン制作、ブレッカー兄弟やアンソニー・ジャクソン、フィル・リー、リチャード・ティー。ルーサー・ヴァンドロス等が大挙参加した豪勢なアルバムとなっております。

Alton Mcclain and Johnny Bristol / Hang On In There Baby (1981)

 ジョニー・ブリストル本人によってこの曲はセルフ・カヴァーが81年に残されていますが、再録に当たってはなぜかアルトン・マクレイン&デスティニーという女性3人組グループとのジョイント・カヴァーとなりました。アレンジはオリジナルとほぼ変わりないようにも思えますが、それでもやはり名曲は名曲。アルトン・マクレイン〜のほうも、フリー・ソウル・ファンにはなじみ深い名前ですよね。
Curiosity / Hang On In There Baby (1992)

 キュリオシティー・キルド・ザ・キャット、というイギリス出身のアイドル・ポップ・グループをご記憶の方もいるかと思います。デビュー・アルバム(87年)がいきなり全英1位を獲得した彼らはソウル・オリエンテッドな曲でも人気ですが、92年、この頃にはグループ名を「キュリオシティー」と短くした頃に発表したのがこの「HANG ON IN〜」のカヴァー。こちらも見事全英3位を記録していますが、翌年グループはあっけなく解散しています。
Gary Barlow / Hang On In There Baby ft. Rosie Gaines (1998)

 なぜかイケメン英国アイドルに人気の(笑)この曲。今ではイギリスでは完全に「ゲイリー・バーロウの持ち歌」として高い認知を誇ります。元テイク・ザットでありながら、実は今では「英国で最も成功したSSW」でもあります(あるアンケート結果によれば、彼はあのポール・マッカートニーを抑えて英国NO.1作曲家、という座を得ています)。そんな彼が98年に発表したこちらはロージー・ゲインズというソウル・シンガー(当時プリンス一派/後にハウス・シンガーにもなりました)とのデュエット。


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 60年代のスーパーモデルといえば、ツイギーです。セックスシンボルという言葉が持つ意味の真逆をいくそのスタイルは、(下品な表現を使えば)今の2次元女性像にそのまま直結するものです。さて、日本では圧倒的に60年代モデル時代の彼女に注目が集まりますが、今回が70年代以降の歌手・タレント時代のツイギー特集です。「もうウンザリ。一生を洋服のハンガーとして過ごせないわ」という有名な発言と共にモデル業を引退した、その後の彼女のお姿をお楽しみ下さい。個人的に70年代のツイギーと言えば、それはもう「PIN-UPS」のジャケ写なわけですが。(2014年9月12日更新分/選・文=大久)


Twiggy and Bryan Ferry / What A Wonderful World (1974)

 70年代初頭、自身の冠番組を持ったツイギーでしたが、そこでのデュエット映像。ブライアン・フェリーと「WHAT A WONDERFUL WORLD」を歌うお姿です。相変わらずキュートで可憐なツイギーさんはともかく、あのフェリー先生が学校の生徒役で演技する、なんていう信じられない演技を見る事ができます。それにしてもツインテールのツイギーの破壊力は絶大です。明らかにフェリー先生の趣味とは真逆の女性ですが(笑)。
Twiggy / At Seventeen (1975)

 ツイギーは1949年生まれなので、まだこの時点で26歳という若さ。それなのにまるで人生の酸いも甘いもパッケージしたようなこのジャニス・イアンの名曲カヴァーは一体どうした事でしょうか(笑)。ハープの演奏は、イギリスを代表するハープ奏者で、現在もロンドン交響楽団やロイヤルフィルでも指揮を取るデヴィッド・スネル。

Twiggy / In My life (at Muppet Show / 1976)

 こんな選曲をされてしまうと、もう自虐的というか、どこか藤圭子的なテイストを感じてしまいます(笑)。77年、子供向けTV番組「MUPPET SHOW」に出演し、ビートルズ「IN MY LIFE」をカヴァーした模様です。ちょうどこの頃彼女はマーキュリー・レコードと契約していて、カントリー・アルバムを数枚発表してもいます。
Twiggy & Bing Crosby / Have Yourself A Merry Little Christmas (1977)

 1977年末のビング・クロスビーのクリスマス特番。この日はデヴィッド・ボウイ&ビング・クロスビーのデュエット「LITTLE DRUMMER BOY」が収録された同じ日でもありますが、同番組にはツイギーも出演。同じくクロスビーとデュエットを披露しています。すでにご承知の通りクロスビーは77年10月に他界しており、この日の歌唱は彼にとっては最後の歌声となりました。
Twiggy / Falling Angel (1978)

 78年、ツイギーはいきなり路線変更、ディスコ路線に活路を見出しています。こちらは78年発表のシングル曲で、プロデュースはデヴィッド・エセックス。実はこの翌年、ツイギーは(当時破竹の人気だった)ドナ・サマーにプロデュースを依頼して、ディスコ・アルバムを1枚制作していますが、なぜか当時は未発売のままでした(2007年にCDで復刻発売されています)。
The London Story - Twiggy (2014)

 最後はおまけの最新動画。今年頭に公開された、ロンドンへの愛着をツイギー嬢が語る動画です。今年65歳になる彼女ですが、しかし美しい年の取り方してますねえ。ここ数年は「女性のライフスタイルとは」みたいな書籍を何冊か出版したりと、タレントとしてもいまだに人気が衰えない様子。ショートカットでミニスカで、というパブリックイメージは既にありません(少なくとも本国では)。


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 当方がよく音楽の原稿で「ロックンソウル」という言葉を使うのはH&Oの影響だったりするワケですが(笑)、H&Oの「ロックンソウル」は実は彼らのベスト盤の邦題として日本で考えられた単語でもあります(もちろん語源としてはソロモン・バークのアルバムから用いられているのは間違いないでしょうが)。ホワイト・ソウルの第一人者ホール&オーツ、もちろん大好きです。で今回は「H&Oの楽曲カヴァー」を集めてみました。しかもなるべく黒系を多めにしてみましたが、いかがでしょう?(2014年9月19日更新分/選・文=大久)


Lou Rawls / She's Gone (1974)

 超名曲、ですね。でこれを取りあげているのは魅惑のキラーヴォイス、ルー・ロウルズ。74年の録音なので、まだ「You'll Never Find Another Love Like Mine」のヒットを出す前ということになります。H&Oのオリジナルのほうがよりディープなソウル臭がしますが、さすがルー・ロウルズはもう少し爽やか&タイトなアレンジで聞かせてくれます。

Kalapana / When The Morning Comes (1975)

 日本ではフリー・ソウル・クラシックとして愛されたバージョン。H&O楽曲の中でも有名なものではありませんが、あのカラパナが75年のデビュー盤で取り上げています。オリジナルは73年、アリフ・マーディン・プロデュースによるH&Oのセカンド収録曲ですが、リチャード・ティー、ラルフ・マクドナルド、ゴードン・エドワーズ、バーナード・パーディー他フュージョン系の辣腕が勢揃い、というアーバン・フォーク・サウンドで知られるところですね。

Impact / Sara Smile (1977)

 実は同じ77年には、ジャズ・ギタリストのエリック・ゲイルがこの「SARA SMILE」をレゲエ調でカヴァーしており、そちらも有名なのですが、やはりベタなフィリー・ソウル・グループによるH&Oカヴァーということでこっちを掲載してみます。ミックスはもちろんシグマ・サウンド・スタジオ。アレンジはジョン・デイヴィス。


Paul Young / Everytime You Go Away (1985)

 80年代野郎の当方としては、こちらの曲を載せないワケにはいきません。根っからのソウルマンでありながら、あーロックスターになることを望まれてたんだなあ、とこのビデオを見る度に考えさせられます。まるでサイモン・ルボンのようなデーハーなアクション、ポール・ヤングには似合ってないですよね。でもこの曲のおかげで彼がスターになれたので、ヨシとしましょうか。

Marcela Mangabeira / Kiss On My List (2010)

 ボサ・ジャズの創始者ホベルト・メネスカルの愛娘マルセラ。彼女のベスト・コンピレーションを作った時に「子供の頃のマルセラの写真を使いたいなー」と言い出したのは当方でした。そんなことはともかく、彼女はブラジル・アルバトロス・レーベルの人気シンガーであり、ボサ・カヴァーもののトップ・ディーヴァの1人となりました。あまり企画に走らず、真正面からボサ・カヴァーを作るのって、結構難しいんですよね。

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