少年ドラマシリーズ「未来からの挑戦」
復元上映会&同窓会トークショー・レポート
夕方の6時。お母さんが食事の支度をするまでのゆるい時間帯、子供たちのお楽しみは「NHK少年ドラマシリーズ」だった。第1作『タイム・トラベラー』にはじまり、SF、コメディ、時代劇、ミステリとジャンルは多様で、眉村卓、筒井康隆、星新一、光瀬龍といったSF作家たちの映像化が多かったことも当時の小中学生にはたまらないものがあった。それ以上に、
主人公や登場人物たちは僕らと同じ小中学生だったこともあり、先輩の活躍を見ているような気になったのだ。 この「少年ドラマシリーズ」だが、『なぞの転校生』『七瀬ふたたび』など一部を除き現存する作品が少なく、再放送やソフト化もままならない状況にある。ところがこのほど、同シリーズの77年作『未来からの挑戦』がめでたく発掘・復元
され、2月8日(日)に復元上映会が行われた。場所は埼玉県川口市にあるSKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ映像ホール。熱心な「少年ドラマシリーズ」ファンが大勢詰めかけた中、1~6話までのダイジェストと7話の全上映が行われた。 * 『未来からの挑戦』は眉村卓原作の「ねらわれた学園」と「地獄の才能」をミックスした超能力学園ドラマ。学校支配に立ち向かう少年の勇気と友情を描いた傑作で、今観ると意外なほどメッセージ性が強いことに驚かされる。子供の観る番組と馬鹿にせず、スタッフ・キャストとも真摯に作り上げていたのであり、それゆえ長い年月を経ても古びず、内在するテーマも現在に通じるものがあるのだと感じ入る次第。
放送終了後に、NHKの首藤奈知子アナウンサーを司会に、主人公・関役の佐藤宏之と、友人・吉田役の手塚学による寸劇とトークが開催され、35年余が経過しているにも関わらず、瑞々しい2人の寸劇に会場も大いに盛り上がる。 手塚氏は現役の俳優だが、佐藤氏は現在・町田市役所勤務だそうで、それでもトーク・芝居とも完璧にこなす様は、さすが昔取った杵柄というべきか。西沢杏子役の紺野美沙子からのビデオ・メッセージに続いては、今年1月に逝去された関の相棒・飛鳥役の熊谷俊哉氏の訃報も伝えられた。15才の熊谷氏の姿を今観た直後だけに、言葉もない。 * 第2部は、「少年ドラマシリーズ」の登場人物たちが大集合してのトークショー。『なぞの転校生』の高
野浩之、星野利晴、伊豆田依子、『明日への追跡』の沢村正一、斉藤とも子、『その町を消せ!』の斉藤浩子といった豪華な面々が大集結。先述の佐藤・手塚両名も加わってのぶっちゃけトーク。他の番組で共演していたり、同じ学校に通っていたりと、8人それぞれ何かしらの関わりを持っていたそうで、当時の子役事情、NHKドラマ制作の雰囲気が手に取るようにわ
かるのは、出演者皆さんの巧みなトークによるもの。曰く「●●さんはおっかなかった」「高校生だったけど撮影終了後に深夜営業のバーで台本読みをしていた」「タクシー券欲しさにわざとNG出した」などなど、〝時効〟トークの数々に会場も大爆笑。 意外に天然キャラな斉藤とも子さん、懐かしさにため息が漏れた斉藤浩子さん、プリンセス・テンコーのサ
ポートとして活躍しているという沢村正一さん、そして放送当時既に人気子役だった高野浩之さんのキラキラ輝く姿と出席者全員、皆さん雰囲気が当時と変わらないのにも驚かされる。 そして「少年ドラマシリーズ」のもつメッセージ性の強さを改めて語る出演者たちに会場の皆さんも深く頷く。 * ちなみに『未来からの挑戦』は2月8日より川口のNHKアーカイブスをはじめ全国のNHK「番組公開ライブラリー」にて無料で見ることができる。またこの「NHK番組発掘プロジェクト」では70年代までのNHK番組の録画情報などを随時募集しているとのこと。心あたりのある方は是非! (馬飼野元宏=「映画秘宝」編集部)
『未来からの挑戦』を過去から受け取った日
少年ドラマシリーズの名作『未来からの挑戦』が全話、NHKライブラリーに収められることになった。視聴者の元に眠る録画ビデオを募集して復元するという、「NHK番組発掘プロジェクト」の成果。その記
念上映イベントが催された。 1970年代に夕方6時から放映されていた、NHK少年ドラマシリーズ枠は、時代劇から青春コメディまで、様々なジャンルで楽しませてもらったが、学園SFドラマの印象が強い。そ
れはおそらく、派手な演出はなく、学校で教材として試聴されることもあった『中学生日記』や『みんななかよし』といった道徳ドラマの、ごくごく平均的な日常テイストのなかに、時間や次元を超えた異分子が放り込まれることで、不条理さが際立ったこともあるだろう(でもこれ、よく考えたらSFの演出としては、抜群に効果的なことだ)。1985年に、『タイムトラベラー』(原作は筒井康隆「時をかける少女」)を中心とした少年ドラマシリーズの特集を組んだミニコミ「東京おとなクラブ」の着目は早かったが、既に幻の存在であり、懐かしさとともにテレビ番組の儚さを感じた。それが今、徐々に甦りつつある。 今回復元された『未来からの挑戦』は、眉村卓のジュブナイルSF「ねらわれ
た学園」と「地獄の才能」をミックスしたドラマ。未来人類が、ある目的をもって現代の中学校を征服しようと企むが、それに反発する主人公と未来人の少年の間に友情が芽生える。世界大戦の終戦直前にタイムリープするエピソードも加えたダイナミックな物語が、見慣れた素材と素朴な表現方法で展開された。洗脳され、超能力を手にした生徒会員の暴走した正義が、ちょっとしたルール違反者に恥辱的な罰を与え、守護してくれるはずの両親や教師までも傷つける過激さには、ざわざわと胸に迫る恐怖があった。優しい音楽教師が、ピアノのふたに指を叩き折られるシーン、戦慄したなあ。しばらく、学校のピアノが気味悪かった。しかし、あらためて観ると、そのざわざわ感は、現実の情勢に交わる点も大いにあり、さ
らに生々しく迫ってくる。 イベントには、主役を演じた佐藤宏之さんをはじめ、『明日への追跡』『その町を消せ!』などの出演者が次々登場、ぐわ、たまらない!こと、女優の皆さんの変わらぬ美しさには驚いたが、その追っかけらしきファンにも驚き!どちらもブレてない!また、『なぞの転校生』や『幕末未来人』に出演していた星野利晴さん、「美男子」という設定に引け目を感じていたとのこと。失礼ながら確かに美男子ではありませんでしたが、ザ・少年ドラマシリーズといえば、僕にとっては貴方の顔でしたよ!年月を経て、当時のドラマに張りつめていた緊張から解き放たれた演者たちの笑顔は、本当に印象的だった。リアルタイムで夢中になっていた者としては感激だったが、そんなものは比較にならな
い多くのファンの感激に溢れた熱い会場だった。何と『明日への追跡』の復元も間近との情報も。過去からの挑戦は始まったばかりだ。 (足立守正=マンガ愛好家) ーーーーーーーーーーーー ●「少年ドラマシリーズ」の中でもとりわけ人気の高かった「未来からの挑戦」。その人気は番組が放送されて30年近く経った今でも続き、再放送が熱望されていたが、NHKには10話中2話しか保存がなかった。一般視聴者の提供によって全話が揃い、半年に及ぶ修復作業を経てライブラリーに登録されることになった(詳細はこちら)。
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