2015年5月22日(金)

 
ヒトコト劇場 #62
[桜井順×古川タク]







 
ABCラジオ「三木鶏郎に挑む!平成の仕事師たち」

 昭和26年、民間放送のスタートとともに、三木鶏郎は、それまでのNHKに加えて民放ラジオへと活躍の場を広げる。在京局よりも

一足早く開局した大阪・朝日放送(ABC)との関係は深く、社史「ABC十年」(昭和36年)に寄せた「朝日放送とぼく」という文章

の中で「NHKをわが生誕の地とすれば、朝日放送は第二のふるさとである」と自ら述べているほどだ。もちろん、多少の社交辞令も含まれているだろうが、代表曲「かぐや姫」「ふたりの四季(ポカン・ポカン)」を生んだ「ABCホームソング」をはじめ、数多くの番組やCM制作、局主催のコンクール審査員、さらには記念コンサートでタクトを振るなど、精力的な仕事を続けた。そのABCラジオで、5月24日(日)夜8時から、特別番組「三木鶏郎に挑む!平成の仕事師たち」が放送される。
 まず民間放送と同時に産声を上げたCM音楽の創始者として、流行歌やホームソングのソングライター、放送作家、プロデューサーとして、さらに日本語版ディズニー映画の音楽監督として、戦後日本のエンタテ

インメント界を牽引した八面六臂の活躍をたどる1時間。番組の進行役は「浪花のモーツァルト」キダ・タローとABCのヒロド歩美アナウンサー。直接の面識はなかったものの、CM音楽の先達として常に三木鶏郎を意識していたというキダが、作曲家の視点から鶏郎ミュージックの魅力を解き明かす。ゲストには「てりとりぃ」同人の伊藤アキラをはじめ、ダークダックスの遠山一、中村メイコの皆さんが登場。青山の三木鶏郎企画研究所で収録されたゾウさんのインタビューには筆者も同席したが、レジェンドゆかりの地で貴重なお話を伺うことができた。
 この番組は、その音楽を耳にしたことはあっても、三木鶏郎の名前は知らない若いスタッフによって企画・制作された。その点、これから先の世代に三木鶏郎

の業績を伝え、自由闊達なスピリットを継承していく上で大きな意味を持つだろう。偉人伝のお勉強にとどまらず、そのDNAを吸収・進化させようというチャレンジ精神は、番組タイトルと中身にも表れている。スタジオ・ライブによる「三木鶏郎スペシャル・メドレー」のほか、番組後半のハイライトとして、伊藤・キダの書き下ろしで、コマソンの開祖に捧げる「CMソングは三木鶏郎」が披露される。あの「小山ゆうえんちの唄」(2009年発売『伊藤アキラCMソング傑作選』収録)以来という、お二人のコラボ、お聴き逃しなく。
 関西ローカルの放送だが、有料のラジコ・プレミアムならエリア外でもネット聴取が可能。
(吉住公男=ラジオ番組制作)
『三木鶏郎に挑む!平成の仕事師たち』5月24日(日)ABCラジオ(関西ローカル)にて午後8時〜9時放送/ 出演:キダ・タロー、ヒロド歩美(ABC)/ゲスト:伊藤アキラ、遠山一(ダークダックス)、中村メイコ=敬称略=



追悼:江藤勲 第3回


 68年から69年にかけて、日本国内はグループ・サウンズ・ブームに沸いていた。その多くには日本独自のベース・サウンドを聴くことができた。江藤勲から始まった独特のベース・サウンドは、多くのグループ・サウンズのベーシストたちに影響を与え、当時の多くのバンドが江藤と同じようにピック弾きが主流となっていた(同時期の欧米のベー

シストは、ジャック・ブルースやジェームス・ジェマーソンなど指弾きも多かった)。江藤風のトーンのベーシストが多かったのはもちろんだが、江藤自身もオックスやザ・リードなどのレコーディングでのベースを担当していることが判っており、実際には彼自身もかなりの数を影武者としてプレイしていたというのが真相だろう。ただし、成毛

滋が「ロック画報 07」で語った「あの頃グループ・サウンズは200以上あったんですけど、そのほとんどのレコードを、7、8人の人間で弾いているんです。(中略)ドラムは石川晶さん、田畑貞一さん、ベースは江藤勲さん。ギターは水谷公生か僕が一番多かった。オルガンはミッキー吉野、柳田ヒロ。」(表記ママ)というのはちょっと大げさすぎる言い回しだが。
 やがて江藤の元には日本のスタジオ・ワークの中核を担った寺川正興や武部秀明がピック弾きの教えを請いに来た。そのため、江藤から始まった個性的なベース・サウンドは日本中に広まった。この日本オリジナルのベース・サウンドはやがて海を渡り、70年代初頭には台湾や香港など海外のレコードでも聴かれるようになった。

 昭和45年ごろのトップ・スタジオ・ベーシストだった、江藤、寺川、鈴木淳、荒川康男、武部の違いを聴きわけることは非常に困難だ。良く聴けばそのトーンに微妙な違いがあるが、みな江藤のトーンを手本としているからトーンが似てくるのは自然なことだ。ちなみに武部以外は皆ウッド・ベース出身者であり、時代の変貌とともに新たなベース・サウンドが求められていたことが感じられる。
 また江藤のトーンは、江藤のオリジナル・ベース「オレンダー」のポテンシャルも大きい。オレンダーは、元々はジャッキー吉川とブルーコメッツの高橋健二が使用していたもので、63年に高橋が脱退するのと同時にアンプと一緒にゆずり受けたのがオレンダーだった。高橋は65年に江藤と入れ替わりで再加入するが、

そのときはファーストマンのベースを使用、オレンダーは江藤へと受け継がれる。オレンダーは元々テスコ製のベースで、フェンダーのプレシジョン・ベースを採寸してコピーしたと言われている。テスコでは、プレベ・タイプのオレンダーのほかに、ジャズ・ベース・タイプのオレンダーも制作されたようだ。
 近年の昭和歌謡ブームとともに、オレンダー・サウンドにも再注目さて、13年には江藤監修の元、PACO1977からオレンダーが復刻された。オリジナリティが無いといわれる日本の音楽の中で、数少ない日本発祥の江藤サウンド。彼亡き今後も独特のベース・サウンドは永遠に愛されていくことだろう。
(ガモウユウイチ=音楽ライター/ベーシスト)
写真撮影:酒井秀一




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