てりとりぃ放送局アーカイヴ(2015年12月11日〜2015年12月25日分)

 クリスマスなので、クリスマス特集を続けます。以前当欄でも特集したことがある「スヌーピーとチャーリー・ブラウン」ですが、やはりこのシーズンにヴィンス・ガラルディの音楽を聞くとなんかこう心がホンワカしますよね。クリスチャン・ミュージックを聞いて身を引き締めるのもアリかもしれませんが、無宗教の当方にとってはやっぱりこちらのほうが季節感を覚えます。というわけでチャーリー・ブラウンのクリスマス特集です。(2015年12月11日更新分/選・文=大久)


Mariah Carey / Charlie Brown Christmas (2011)

 なんとこの特集の冒頭を飾るのはマライア・キャリーでして(笑)。こちらはマライアが「ファンの為にプレゼント」としてアップロードした公式動画。「チャーリー・ブラウンのクリスマス」のアニメの中で最も有名なシーンをふんだんに盛り込んだ豪勢な動画ですが、歌ってるのがマライアだというのも、なんというか豪勢ですね。
A Charlie Brown Christmas - Christmas Time is Here

 で、こちらがそのオリジナル・シーンとオリジナル・ソングです。この曲には歌唱ヴァージョンとインスト・ヴァージョンがありますが、どちらも有名ですよね。おそらくアメリカのポップ・ソング史上最も有名なクリスマス・ソングですが、メル・トーメ、トニー・ベネット、アニタ・ベイカー、ナンシー・ウィルソン、ダイアン・リーヴス、サラ・マクラフラン、他多くのシンガーに加えて、ジョン・ゾーンやスティーヴ・ヴァイという面々もカヴァー。

SNL's A Charlie Brown Christmas - Saturday Night Live

 こちらはあの「サタデイ・ナイト・ライヴ」の中で「スヌーピーとチャーリー・ブラウン」を実写ドラマ化した際の宣伝広告動画。我々日本人にとってはあの漫画のキャラの性格と所作は難解極まりないものですが、アメリカ人の目線で見れば「ああこういう演技で表現するんだな」なんていう目新しい発見をしたりします。
Bola Sete and The Vince Guaraldi Trio at Jazz Casual (1963)

 さて、その音楽の主役・ヴィンス・ガラルディですが、彼が動いている姿というものは極めて珍しく、おそらく殆ど残されていないと思われます。こちらは1963年、アメリカのジャズTV番組「JAZZ CASUAL」に出演した際の動画で、当時ブラジル人ギタリスト、ボラ・セチとコンビを組んで作品を発表していた時期のものです。30分で5曲、これで全て、と言えるほど映像がないんです。ホントに。
Vince Guaraldi Rare Footage

 ですがこんなとんでもない映像が発掘されました。当時の所属レコード会社ファンタジー・レコードが残したと思わしきスタジオで録音に際したヴィンス・ガラルディです。なんといっても注目は大量に配置されたアンペックスのプリアンプ!ではなくて(笑)、動画の最後にガラルディ本人が「準備できたよ」「新曲だ、オリジナルだよ」「CAST YOUR FATE TO THE WIND、テイク1」と言ってるところでしょう。名曲が生まれるその瞬間、というわけです。
Built To Spill / Linus And Lucy (Live 2001)

 最後は名曲「Linus And Lucy」のカヴァー。演じるのは日本にまだ来た事がない大物バンド(ただの中堅とも言えますが)、ビルト・トゥ・スピルによるカヴァーです。ちょっと前にこのバンドのギタリストとほんの少しだけ交流したことがありますが、自分の使うエフェクターは全部自分で作ってしまう、という素晴らしい(笑)ギタリストです。




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  実は彼女は「英国初の女性SSW」なんです。自作曲はもちろんですが、多くのCMソング、それから60〜70年代膨大な量の名作にバックコーラスで参加したことでも知られる女性シンガー、レスリー・ダンカンの特集です。80年以降は音楽を捨て、スコットランドの田舎でひっそりと暮らしたと伝えられていますが、2010年に脳梗塞で亡くなっています。(2015年12月18日更新分/選・文=大久)


Lesley Duncan and the Jokers / I WANT A STEADY GUY (1963)

 同年映画「WHAT A CRAZY WORLD」というユースカルチャー映画に出演したことで芸能界デビューを果たした彼女の、63年に発売されたデビュー・シングル曲です。そして、この曲そのものが彼女自身の作詞作曲による楽曲でした。故に「英国初の女性SSW」と呼ばれることになったきっかけでもあります。

Dusty Springfield / I Don`t Want To Go On Without You (1966)

 前述したように、レスリーはバック・コーラスとしても多くの作品に関与しました。こちらは当時人気絶頂をほこったアイドル・シンガー、ダスティー・スプリングフィールドの歌唱動画。本人のとんでもない歌唱力に悶絶しますが、バックでレスリーとマデリーヌ・ベルがハーモニーを添えています(もうひとりはケイ・ガーナーでしょうか?ちょと自信ナシ)。

Scott Walker / You're All Around Me (1966)

 こちらは同じく60年代後半のスーパースター、スコット・ウォーカーの楽曲ですが、この曲でレスリーはコーラスだけでなく作家としてもスコットと共作しています(同名曲がパーシー・スレッジにありますが、そちらは別曲)。ウォーカー兄弟関連では計3曲の共作曲があるとのこと。
Elton John / Love Song (1970)

 彼女が一気に作家として脚光を浴びたのは、エルトン・ジョンの70年作『TUMBLEWEED CONNECTION』に収録された「LOVE SONG」が人気を集めたことでしょう。元々この曲はもっと古くにレスリーによって作られた曲で(自身のレパートリーとして68年からステージで歌われていました)、それをエルトンが取り上げた形でした。誰も知らないと思いますが。同曲はデヴィッド・ボウイが68年にカヴァーしたこともあります。
Pink Floyd / Time (1973)

 そしてイキナリとんでもない曲を貼りましたが(笑)、名作中の名作、英国ロックのNO.1アルバムに上げられる機会も多い(個人的にはそう思ってませんが)フロイド『狂気』にて、レスリーは多くのコーラスを吹き込んでいます。余談ですがこの曲、冒頭の音で目が覚める、という人結構多いですよね(笑)。
Lesley Duncan / I Can See Where I'm Going (1975)

 そしてこちらもイキナリ登場のフリー・ソウル・クラシック。75年に発表された自身の4作目のソロ作『MOON BATHING』収録曲。このアルバム、面白いのはこんなにフリー・ソウル風なのに英国制作で、ギターはクリス・スペディングが弾いてることと、ストリングスをやったのがデヴィッド・カッツ(Tレックス作品群のストリングスで有名)だったりする所かも。



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 前回の当欄にてレスリー・ダンカン特集をしましたが、そこでも紹介した彼女の「LOVE SONG」という名曲。エルトン・ジョンを始め多くのカヴァーを生んでいますが、今回はその「LOVE SONG」の聴き比べです。決して大きな成功を収めたシンガーではありませんでしたが、そのチャーミングな魅力は楽曲からも、歌唱からも、そしてルックスからも溢れ出る女性でした。(2015年12月25日更新分/選・文=大久)


Lesley Duncan / Love Song (1969)

 オリジナル・ヴァージョンです。彼女はこの曲を前年68年に作曲、以降ステージでのレパートリーとして歌い続けることで、楽曲に注目が集まるようになりました。初めて音盤化されたのは69年、RCAからリリースされたシングル「A ROAD TO NOWHERE」のB面曲としてでした。その後彼女は何度もこの曲を再録音していますね。

David Bowie / Love Song (1968)

 こちらは68年録音ながら未発表だった音源。まあ当時はボウイさんも全くの無名でしたから当然ですね。売り込み用のデモ音源として録音されたもので、当時ボウイさんがフェザーズという名の3人組(女性含)で活動してた時のものです。

Olivia Newton-John / Love Song (1971)

 前回紹介したエルトン・ジョンと同じ71年録音のカヴァー。当時イギリスで活躍していた女優、オリビア・ニュートン・ジョンは、それまでのアイドル像から脱却、この頃から女優&歌手としての活躍を始めるようになります。とはいえまだイギリスでの活動だったのでそれほど大規模なスターにはなっていませんでしたが、この3年後、アメリカに拠点を移し大成功を収めたのはご承知の通り。

Lani Hall / Love Song (1972)

 こちらはセルジオ・メンデス&ブラジル66出身シンガー、ラニ・ホールによる72年録音カヴァー。同曲収録のアルバム『SUN DOWN LADY』(ハーブ・アルパート・プロデュース作)はもはや名作として誉れ高い必携盤ですが、彼女がハーブ・アルパートと結婚したのはこの2年後でした。

Johnny Harris / Love Song (1973)

 ジョニー・ハリス。先日再発された彼のCDのライナーノーツを担当させていただきましたあ(笑)。それはともかく、英国レア・グルーヴ界隈ではすでにお馴染みのイージー・リスニング作家です。実は彼も73年頃に英国から米国に移住し、ポール・アンカやプレスリーの音楽監督を務めたことで人気コンダクターとなり大成功を収めています。

で、実は「LOVE SONG」の名作カヴァーはまだまだあります。次週に続きます。


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