てりとりぃ放送局アーカイヴ(2016年8月5日〜2016年8月19日分)

 前回「スゲエ衣装で歌い踊るソウルディーバ」を紹介した中にも出てきた、ステファニー・ミルズ。今回は彼女の名曲「Never Knew Love Like This Before」の聴き比べです。79年に録音されたこの曲はジェイムス・エムトゥーメイ&レジー・ルーカスという当時最強のソウル・クリエイター・チームによって生み出された曲ですが、ギトギトなファンクとは縁遠い、爽やかでメランコリックなクラシックとなりました。今も愛される名曲、てやつですね(2016年8月5日更新分/選・文=大久)


Stephanie Mills / Never Knew Love Like This Before (1980)

 そのオリジナルです。ステファニー・ミルズ最大のヒット曲(全米6位)ですが、発売は80年。翌81年のグラミー賞で「最優秀R&Bソング」「最優秀女性R&Bパフォーマンス」の2冠を受賞。アダルト・コンテンポラリーのお手本のようなアレンジに脱帽。

Gwen Guthrie / Never Knew Love Like This Before (1990)

 好き嫌いはともかく、アダルト・コンテンポラリーという意味でこの曲は最高のカヴァーが生まれています。グウェン・ガスリーが90年に発表したこのカヴァーは、完璧なアーバン・メロウ・バラードのスタイルですね。長いキャリアと多くの名盤への貢献でも知られる彼女ですが、99年に48歳の若さでガンで亡くなっています。

Sinitta / Never Knew Love Like This Before (1995)

 シニータです。80年代末にPWLプロデュースで「TOY BOY」という世界的大ヒット・ユーロビート曲を生み出したあのシニータです。彼女が95年に発表したアルバム『Naughty Naughty』にて、件の「Never Know〜」をカヴァーしています。アルバム自体がカヴァー・アルバムなので納得ではありますが、当時PWLはシーンから無視されまくっていた時期なので、感慨深いですね。
GTS feat. Kimara Loverace / Never Knew Love Like This Before (1998)

 日本で生み出されたハウス・カヴァー。リミキサーチーム、GTSによるカヴァーで、当方はこのカヴァーを発見するまでこの曲に「燃える恋心」という邦題がついていることを知りませんでした(笑)。

Sonya / Never Knew Love Like This Before (1996)

 最後はソニア。96年のUKソウルもののカヴァーです。彼女はジャジーB率いるソウルIIソウルのシンガーだったこともある人で、96年発表のセカンド・アルバム『The Other Side Of』はソウル・カヴァー作品集でした。夏、ですね。



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 ちょっと恐ろしい特集をやってみようと思います。今回はヘアスタイル、しかも「マレットヘア」の特集です。ご存知でしょうかマレットヘア。マレット(Mullet)=魚のボラのことを指しますが、ある時期からあるヘアスタイルを指してマレットヘアという言葉が生まれました。1994年、当時世界一オサレな存在とされたビースティーボーイズの面々によってそのマレットヘアは「世界一最悪な髪型」と認定され、現在もその認識は揺るぎません(笑)。(2016年8月12日更新分/選・文=大久)


INXS / Original Sin (1984)

 というわけでいくつかその「世界最悪」な例をご紹介。音はナイル・ロジャース・プロデュースのパワステ・サウンド、ダリル・ホールもコーラスで参加した有名な曲ですが、いやあ当時のマイケル・ハッチェンスさんの後ろ髪は今見るとドン引きします。彼の髪型以外にも、ホンダCB750の改造チョッパーとか水戸丸水産と書かれたデコトラとか、見所の多いMVですね。

Nik Kershaw / The Riddle (1984)

 マレットヘアの代表格の1人、ニック・カーショウです。文字通り頭頂部と関係ナシに後ろ髪がスラスラ〜と伸びているヘアスタイルを「マレット」と呼ぶのですが、80年代のある一時期、こんなのが大流行りしてたなぁということをご記憶の方も多いと思います。しょうがないですよね。流行ですから。

Howard Jones / Things Can Only Get Better (1985)

 もう1人の代表格がハワード・ジョーンズなのですが、実は彼の場合てっぺん部分も後ろ髪部分もこのMVのようにオッ立てることが多いので、あまりダサダサなマレットと認識されることは多くありません。ちなみにハワード・ジョーンズ氏、当方がお見かけしたときはかなり涼しげな(笑)印象だったのですが、今もなんとかギリでキープされている模様。一安心。

David Bowie / Space Oddity (1972)

 マレットヘアの起源には諸説あり、後髪を延ばしたころのポール・マッカートニーだとか、ジギー・スターダスト期のデヴィッド・ボウイだとかロッド・スチュワートだとか言われることが多いです。が、やはり基本的には「てっぺんはツンツン、後はサラサラ」してたほうがダサダサであることは世界共通認識かと思われます。でこちらはボウイ。一番マレットマレットしてた髪型の時期のもの。実はこのMV収録の直前に彼は眉毛を剃り落としていて、その後2年間剃りっぱなしとなります。
The Greatest Mullet Story Ever

 さて、上述の音源やアーティストは実はどうでもよくて、こちらが「マレットヘアとは何か」を報じた米FOX TVの映像です。「世界一ダサい髪型」だけでワンコーナー使ってしまうのも素晴らしいですが、昔マレットヘアだった人物に当時の写真を見せて「この写真を説明してください」と迫る鬼のようなジャーナリズム魂には心から敬服します。



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 オリンピック真盛り。興味ある人もそうでない人も、なにかしらの五輪情報に埋もれながら残暑をお過ごしのことと存じます。で、リオ五輪のTV中継に目をやると、開会式とか表彰式とかでなんかやけに何度も何度も耳にするストリングス・アンサンブルの曲を思い出される方もいると思います。この曲がこんなに持て囃されたのは前回のロンドン五輪以降と記憶していますが、今回はその曲をちょっと掘り下げてご紹介。(2016年8月19日更新分/選・文=大久)


The Verve / Bitter Sweet Symphony (1997)

 イギリスのロック・バンド、ザ・ヴァーブが1997年に発表したシングル曲「Bitter Sweet Symphony」。洋楽ロック・ファンなら誰でも知ってる有名曲です。現在すでにバンドは解散し、リーダーのリチャード・アシュクロフトはソロ活動に転じていますが(今度来日しますね)、バンド時代だけでなく、彼のキャリアを通じて最も愛される1曲となりました。
Andrew Loog Oldham Orchestra / The Last Time (1966)

 で、その「Bitter Sweet Symphony」には元ネタがあります。1966年、ローリング・ストーンズのプロデューサーだったアンドリュー・オールダムという人がストーンズ楽曲をオーケストラでやってみた、という企画盤を発売しており、その中に収録された「The Last Time」のストリングス部分を引用したものだった、というわけです。

The Story of The Verve's "Bitter Sweet Symphony"

 実はザ・ヴァーブは元ネタを無断で引用したため、後にモメ事になっています。動画はどの部分をどう使ったか、の検証動画なのであまり面白いモンではありませんが(笑)、裁判になって以降「Bitter〜」の作家クレジットは「ジャガー=リチャーズ」に変更されました。それだけではなく、オリジナル音源の所有権を巡ってプロデューサーとストーンズのABKOレーベルの間でもゴタゴタが起こり(笑)、文字通りグッチャグチャな状態となりました。

Stringspace String Quartet / Bitter Sweet Symphony (2012)

 さてその「Bitter Sweet〜」のカヴァーを2つほどご紹介。まずはストリング・カルテット編成での、まさに正調とも言うべきクラシカル・カヴァー。オーストラリアのストリングスペースは、メンバー固定のユニットというわけではなく、豪州各地に拠点があるストリングス・ネットワークともいえそうなチーム名。いいですね。スッキリしますね。ただ全員の譜面に「JSバッハ」と書かれているあたりが少しイヤラシイかんじですが(笑)。

Rockin'1000 / Bitter Sweet Symphony (2016)

 イタリアに「ROCKIN' 1000」というとんでもない音楽ユニットがありまして、実際に1000人以上のミュージシャンで演奏することに命をかけるというオバカこの上ない連中です。彼らが今年行なったライヴで披露した同曲のカヴァー。ちゃんとお客さんも数千人単位で入っているようで、ちょっと安心しました。何が驚きかといえば、1000人以上のミュージシャン全員がイヤモニをして演奏していることです!(笑)



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