てりとりぃ放送局アーカイヴ(2016年10月7日〜2016年10月21日分)



 最初「60年代のレコーディング・スタジオ特集」をここでやろうかと思ってたんですが、考えを変えて「アビー・ロード・スタジオ」特集をやることにしました。まあ世界一有名な録音スタジオですし、映像としてウオッと思えるようなものはあまりありませんが、それでも「実際の姿」を確認するのは重要なことです。(2016年10月7日更新分/選・文=大久)


Abbey Road Studios, 1960s newsreel clip

 同所に関してどうしても避けられないのが、有名なREDDコンソール。もちろんEMI社が同所のために開発したミキサーなわけですが、現在もこのコンソールの音を再現せんと各社が最新技術を駆使してプラグインの開発に余念がありません。動画はスウィンギン・ブルージーンズが「HIPPY HIPPY SHAKE」を録音してる場面。とはいえ、まあ演技ですが。

Cilla Black cutting "Alfie" at Abbey Road (1965)

 そして60年代のアビーロード・スタジオで一番有名な第1スタジオ。同所で最も広いスペースですが、EMIでのオーケストラ録音に最も使用された場所です。動画はシーラ・ブラックがバート・バカラック・ナンバーを録音している場面。こちらは生のもので、つまりこの動画のシーンがそのままレコードとなっています。最後に俯瞰のカットが出てきますね。

The Beatles Q and A from Abbey Road Studios

 同所を語る際で避けられないどころかかならず語らなければならないのがビートルズ(笑)。まあそれはともかく、ビートルズの公式動画です。今度新しい映画「EIGHT DAYS A WEEK」が公開されますが、それに向けてのポール&リンゴの最新インタビュー動画。もう1人のオッサンは映画監督のロン・ハワード。殆どの人は、ポール&リンゴが並んでるところに感動するのでしょう。そりゃあね。

Paul McCartney - Blackbird - Abbey Road Studios, London, England (11.06.1968)

 時計の針を戻します。68年、アビーロードのスタジオで一人寂しく「BLACKBIRD」の録音にいそしむポール・マッカートニー。何が素晴らしいって、靴でカウントを取ってるそのカウント・クリックの音が素晴らしいですね。それと、ポールの左手の変則2フィンガーがガッツリ拝める点も最高です。

Top 10 Most Famous Recording Studios

 最後のオマケ動画。世界中の有名な録音スタジオを10ケ紹介しています。マイアミのクライテリアはそんなに有名ではないかもしれませんが、ジミヘンで知られるエレクトリック・レディ(NY)、洋館のようなハンス・ジマーのスタジオ他モロモロを紹介。やはり当方的にはトライデント・スタジオこそが重要なわけですが、1位に選ばれたスタジオ、ここに関しては完全に同意。奇跡を大量生産した工場ですね。


*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。





 ちょっとだけ選者の心が荒んでいる時期なので(笑)、今週はハードコア・パンクを扱います。まだ雑誌『DOLL』が手書き広告で溢れていた時期、今から30年くらい前の高円寺を代表する、スマイル&バイオレンスを標榜するデンジャラスなパンク・バンド、にら子供の特集です。ええ、いい大人がこんなもの見たり聴いたりしてちゃダメですよね。(2016年10月14日更新分/選・文=大久)

にら子供/変な頭

 ディスチャージ直系のダークなリフに導かれて日本古来の盆踊りリズムに転調し、シンガロング・スタイルでキメるという見事な構成の2分半。ライヴ動画もありますが、ノイジーすぎでメッセージがいまいち心に伝わりにくいという難点もあります。いずれにせよ、日本パンク史に残る名曲です。

にら子供/Fuck The ニコマート

 2分の曲の冒頭1分をドラマ仕立てにしてしまった恐るべきスタイルを持つスラッシュパンク曲。ちなみにこの曲のPVでは「あらこんなところに牛肉が」というあの有名なCMソングのフレーズを盛り込んでいたのですが、さすがに音盤化は難しかったようで。ところで牛肉の大和煮って食った事ないですが、そんなに美味しい?

にら子供/野方一丁目クソババァFuck off

 ご存知ラモーンズの王道リズム・パターンを用いながらもとっても東京ローカルなメッセージを投げつける、一極集中の凶暴な一曲。ギターレスという斬新さも手伝って印象的な曲ですが、やはり野方に行ったらその地域の生命体との接触には十二分に注意せよ、という危機管理能力を訴えかけるナンバー。

にら子供/女の意地

 逆に言えば、ハードコアパンクスとババアが共生する人種のるつぼ=野方なのですが。その野方一丁目クソババァの哀愁を歌ったナンバー。何と言っても歌詞が素晴らしい。そして地元愛と人類愛という地球規模のテーマを歌うこの曲は、日本の叙情系パンクの筆頭に据え置くべき1曲。

にら子供/チャルメラ Not Dead

 こちらは世界を支配する「みそ・しお・しょう油」という圧倒的な権力構造に反旗を翻すチャルメラ讃歌。ちなみに公共性と諸般の事情を鑑みて今回掲載を見送りましたが、彼らには他にもとんでもないマッシュアップ技法を駆使した「Maybe Tomorrow For 岡田有希子」や「Eat The ベトちゃんドクちゃん」という曲もあります。

*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。




 宣伝です。10月19日にクロスビートの増刊号としてボウイの新しいムック本が出ました。74年から76年までの3年間のボウイ、それだけを病的にシツコく追い回したという、彼のキャリア全体から考えればとんでもない本なのですが、一番ボウイがイカレてた時期なので、それに相応しいイカレタ本になりました。んなわけで今回は、74年頃のボウイの動画特集です。(2016年10月21日更新分/選・文=大久)


Official David Bowie - 'Who Can I Be Now? (1974 – 1976) unboxing video

 今回なんでこんな本を出したか、それは74年から76年までの総括ボックスが出たから、という理由なんですが。このボックス、なかなかドMな内容です。ライヴ盤『DAVID LIVE』はミックス違いで2種類入ってますし、『STATION TO STATION』もミックス違いで2種類入ってます。アホですね。とはいえ、今から6年前には『STATION TO STATION』だけで6種類入ってるという拷問中の拷問のようなボックスも出ましたけど。

David Bowie / Shilling the Rubes (segment from Sigma reel 1974)

 今回のボックスにはほとんどレア音源が入ってません。おそらく権利がクリアされてないからだと思われます。マニアは「レア音源とかデモ音源」にキャーキャー言いますが、筆者的にはそういうのはどうでもよくて。たとえばコレ。74年のデモ音源ですが、存在は皆知ってても、音盤化できないという例のひとつですね。おそらく音源は今もフィリーの図書館が所有してるハズ。

Astronettes / God Only Knows (1974)

 それからこんなのも。ボウイ・プロデュースで制作された、アヴァ・チェリー等を擁するソウル・コーラス・グループ、アストロネッツの音源。ここでBB5「神のみぞ知る」のカヴァーをやってるんです(そう、10年後にボウイ本人もカヴァーしたのですが)。今回のムック本でアヴァ・チェリーに独占インタビューしました。洗いざらい喋ってねん、とお願いし、ペラペラ喋ってもらってます(笑)。

David Bowie / Right (1974)

 ファンメイドの非公式動画ですが、完全未発表映像素材が入っててビックリしました。ボウイの横で一緒に歌ってるコーラス隊は、ルーサー・ヴァンドロス、ロビン・クラーク(ドリカムのバックのお仕事で来日経験あり/カルロス・アロマーの奥さんです)、そしてアヴァ・チェリー(当時のボウイの愛人)。また、動画には別なサックス奏者が映ってますが、実際にサックスを吹いてるのはデヴィッド・サンボーンでした。

David Bowie 1975 Grammy Awards

 75年初頭、ボウイはグラミー賞の女性R&Bシンガーのプレゼンターをやってます。冒頭一世一代のギャグをかっ飛ばし、おかげで(笑)人気がアメリカでうなぎ上り、この半年くらい後には全米No.1ヒットまでかっ飛ばすボウイさんですが、これが例の「身長178cm、体重43kg」時代のボウイです。見てておっかなくなりますね。



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