お久しぶりのギター特集。今回はリッケンバッカーていう会社の特集です。何故か筆者はこのギター・ブランドの歴史に関してちょっとだけ詳しくて、それなのにビートルズとリッケンバッカーの関係に関しては「どうでもいい」と思ってる1人でもあります(笑)。以下ではビートルズに関してほぼ触れてませんが、エレキギターの歴史においては「なくてはならない」存在でもある同社のエピソードをいくつか。(2017年1月20日更新分/選・文=大久)
VIDEO Rickenbacker Factory Tour: Model 330 Guitar & Model Bass Construction
新しい大統領が何を言おうがそんなことは関係なく(笑)、リッケンバッカー社は1950年代から今だに相変わらずアメリカ国内に工房を構え、手作りで楽器を製造しています。フェンダーやギブソンといった超大手企業が中米〜東アジア〜東南アジアでの楽器製造にシフトする、そんな世界の波とは一切関係なく、独自路線を走るところはやはり興味深いわけです。
VIDEO Rickenbacher, A 22 Electro Hawaiian Guitar
リッケンバッカーは1930年代、スティールギターの開発・発売を気に興された企業。もちろん当時はエレキギターなんてありませんでした。ゆえに、実はエレキギターの開祖的存在でもあります。ただしそれが「スティールギター」だったために、一般的なエレキギター・ヒストリーの中では軽んじられるのですが。この20年後に「エレキギター」が発売されるずっと前に、電気的な構造に関してはリッケン社がほぼ完成させていたことになります。
VIDEO Roger (made in Germany)
1950年代、リッケンバッカー社はドイツ人クラフトマンのロジャー・ロスマイスルという人を雇い入れます。この人に関しては後述しますが、動画はそのロスマイスルのお父さんヴェンツェル・ロスマイスルという人がドイツで制作・発売したギター。ブランド名が「ロジャー」なのは、息子の名を自分のブランド名にした、という理由でした。
VIDEO Rickenbacker 375 Capri
で、息子のほう、ロジャー・ロスマイスルは渡米し、1950年代にリッケンバッカー社に入社します。ここで「カプリ」という名のギターを制作。これが元になり、後に(ビートルズ等の使用で有名になる)同社の有名なギターが出来上がります。トゥーツ・シールマンスが使用したのはこの50年代のカプリで、その写真を見たジョン・レノンがリッケンを入手した、というのは有名な話ですね。
VIDEO Rickenbacker 360F
ロスマイスル(息子)は、父親の影響もあって、主にアーチトップ(日本でいうフルアコ)のギターを作りました。が、当時のアメリカのギター市場はエレキ化/ソリッド化に傾倒していたため、エレキギターの開発にも尽力しています。リッケン社のフルアコが「フルアコなのに重くて空洞が少ない」のはその影響です。とはいえ、今日リッケン社製のフルアコは見る機会さえほぼないでしょうが。
この特集、次回に続きます。
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