2012年8月10日(金)

古川タク展「あそびココロ」が岡山県真庭市で開催

 この夏、6月から8月にかけて千葉県船橋市の「アンデルセン公演 子ども美術館」で行なわれた、古川タクの作品展「あそびココロ〜一本の線から」が、8月18日からは場所を岡山県にうつし、勝山文化往来館ひしおホールにて28日まで開催されます。シンプルな線画で描かれたユーモア溢れるアニメーションやイラストで国際的に知られ、イラストレーターや絵本作家としても幅広く活躍する古川タク氏。日本のアート・

アニメーションを牽引し続ける氏のアニメーション作品や、のびやかなイラストレーション作品の数々を紹介。ユーモア溢れる独特のその描線世界は、こちらでも紹介されたように、アカデミックな美術観とは一切無縁に、どんな世代のどんな人々でも楽しめる、文字通り親子で楽しめる展覧会、となっています。18日のオープニング・イベントには、午後5時30分から、古川タク本人による作品解説を交えたトークショーも開催。

開催は28日まで(22日の水曜日は休館)、入場無料。また期間中の21日には勝山会場で、26日には奈義会場にて「古川タクさんと作るパラパラマンガ」というワークショップも開催(こちらは参加費500円)されます。お近くの方は是非。(文=編集部)
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【古川タク プロフィール】
1941年三重県生まれ。大阪外国語大学イスパニア語学科在学中にアニメーターを志す。TCJ、久里実験漫画工房を経て70年代よりフリーランスのひとこま漫画家、アニメーション作家、イラストレーター、絵本作家など多数の肩書きを持ちながら、ふにゃふにゃ線画によるマルチアーティストとしてこんにちに至る。また、NHK「みんなのうた」の『ほうき星』のアニメーションが現在放映中。
展覧会の詳細はこちら。勝山文化往来館ひしおホールのアクセス/問い合わせ先はこちら



ウチの本棚
[不定期リレー・コラム]第7回:鈴木啓之の本棚

 本好きにとって、収納は永遠の課題である。とある人は本棚の許容量を超えない範囲で本を売り買いするといい、またある人は本当に手元に置いておきたい本

以外は買わないといい、また別のある人は図書館を頻繁に活用すると言う。自分がそれらを実行出来ていたらどんなに平穏な人生を送れていたことだろう。ひょ

っとするともしかすると、結婚出来ていたかも。なんて、本のせいにしてはいけない。
 物心ついてからはいろんなことを犠牲にしてひたすら本を買い続けてきた。雨の日も風の日も。新本も古本も。たとえ粗食でも本代だけは惜しまなかったつもりだ。だから家の中は本で溢れている。それは日常の生活に支障をきたす程に。本当は悠長に本棚を紹介している場合ではないのである。
 昔は自分の本棚に理想を抱いていた時もあった。この棚は音楽本、あの棚は漫画本、一番下の段は映画パンフとムックを並べて…そんな計画は引っ越して3年で脆くも崩れ去った。無理を言って作ってもらった実家の屋根裏部屋の書庫は、かつては椅子とテーブルを置いて読書が出来るスペー

スも確保していたのだが、瞬く間に本が増えて、人一人通るのがやっとの密林と化してしまった。
 必要な時、すぐに目的の本を取り出せない本棚の並ぶ部屋は、もはや書庫とは呼べない。ただの倉庫である。それでも本を買い込んでしまうのは、これはもう一種の病気であろう。始末におえないのは、この病気に効く薬は結局本しかないという点なのだ。
 堆く積まれた本の山の後ろには、まだ志が豊かだった頃に構築した書棚が残っており、そこにはかろうじてジャンル別に分けた本が収納されている。やはり芸能・音楽、映画・TV関連が圧倒的に多く、作家では阿川弘之、遠藤周作、北杜夫、山口瞳の各氏。とにかく出された本は全て買っている小林信彦氏と泉麻人氏もかなりのスペースを占め

ている。和田誠氏や柳原良平氏の装丁本もいつの間にか夥しい数になった。
 単行本はまだしも、場所をとるのは雑誌の類。なにしろ捨てる雑誌は買わない性分なので。休刊になったり今はもう買わなくなったものは良いとしても、目下のところ一番の悩みは創刊号から三十年間ずっと買い

つづけているテレビ雑誌の置き場所なのだ。
 これからいったいどうなるのか、考え出すと不安で夜も眠れなくなる。もしも三十年前の自分に戻ったら、絶対に本なんか…集めちゃうんだろうなきっと。
︵鈴木啓之=アーカイヴァー)



てりとりぃアーカイヴ(初出:月刊てりとりぃ#6 平成22年8月28日号)
新宿の音・1981




〝ノラ猫のように生きる〟、その言葉を信条とするようになり随分長いことになりますが、街に暮らす彼・彼女達に接する度、いまだに新しい発見に巡り会います。例えば「彼等は何も憎まない」などという衝撃的な事実に気付いたりしたのも最近の事だったりします。
 人間は憎しみを知っている動物なので、その苦渋から解放されるためにあらゆる努力をしますが、彼等にはそれがないのです。人間には責任転嫁(=私は悪くない)という割と安易な回避スキルもあったりしますが、猫にはそれさえもありません。プリミティヴな意味で、彼等の行動はすべて自己責任にのみ裏打ちされています。
 そんなガチガチな根本原理でだけ街におけるアイデンティティを確保する彼等は、それでいて何よりも自

由です。眠いときに眠り、遊びたい時には遊ぶ。時間を気にすることも、体裁を気にする事も、年齢を気にする事もありません。まるで享楽的な存在に見えてしまいがちですが(実際そう見る人が多いのも事実です)都会というある意味「狂った」環境をも自己責任で受け入れる彼・彼女達は、もしかしたら人間よりも崇高なレベルの社会学を持っているようにさえ思えます。
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 タモリがアルバム『ラジカル・ヒステリー・ツアー』を発表したのは81年。既に全国区のコメディアンではありましたが、まだ『笑っていいとも』は開始される前でした。アーバン・ソウルを身にまとっても、それでもタモリはタモリです。どこまでもセンチで、どこまでも奔放。まるで都会に生きる猫のように。名曲と

言われる「雨降り午後」の歌詞は、人間の目線というよりも街に生きる猫のソレに思えてなりません。そしてもうひとつの名曲「ミンク・タッチ」。完全な即興でテキトーな言葉(その殆どが古いジャズの楽曲から引用された言葉です)を並べた歌ですが、実はこの曲の歌詞カードには「お前は誰だ?」という意味のアナグラムが隠されています。
 都会に生きる猫達は、初めて目にする我々に無言で(愛らしい眼差しと共に)常に問いかけているのです。「お前は誰だ?」と。
(大久達朗=デザイナー)



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