フランスを代表するギタリストとして、やはりジャンゴの名は筆頭に上げられますが、彼はもちろんスウィング期のみの作品しかありません。以降バップやモード、フュージョンといった時代に、文字通りフランスを代表するギタリストとなったのは、ジャンゴのいとこでもある、ハンガリー生まれのジプシー、エレック・バシック(1926-1993)でしょう。今回はバシックのキャリアをおさらいしてみました(2013年5月24日更新分/選・文=大久)
"Stormy Weather" on "Bell, Book and Candle" (1958)
ジャック・レモン、キム・ノヴァク等の有名人が出演してることで知られる58年公開のロマンティック・コメディ「BELL, BOOK AND CANDLE」のワンシーン。クラブでの演奏シーンで、ペットを吹いているのはキャンドリ・ブラザーズ、そしてストラトを弾いているのがエレック・バシックでした。この後、60年代になると彼はフランスを拠点に音楽活動をするようになったそうです。
Serge Gainsbourg / All The Things You Are (1964)
60年代以降、フランスの音楽界にて多くの仕事を残してるバシック。こちらは64年、セルジュ・ゲンズブールがジャズ・スタンダード「ALL THE THINGS YOU ARE」を演奏する、というなかなか興味深いシーン(ゲンズブールのDVDに収録されています)ですが、後ろでモクモクと煙草をフカしながらザックザックとリズムを刻んでいるヒゲの伯父さんがエレック・バシックです。
Elek Bacsik / Take Five (1964)
バシックはジャンゴ同様にジプシー・ミュージシャンで、最初バイオリンから音楽演奏を始めた、という人なので、バイオリンも当然ですが他の楽器もなんでもゴザレ、という音楽家でした。こちらは64年、フランスのTV曲に残された映像で、ブリューベックのスタンダード「TAKE FIVE」をバシック・アレンジで、そしてバシックが全ての楽器を演奏してみた、というオモシロ映像。
Jeanne Moreau / Les Mains sur les Tempes (1966)
60年代フランスを代表するギタリストとなった彼は、当然ながら多くの客演でも名演奏を残します。ジャック・カネッティ制作によるジャンヌ・モローの名盤『12 CHANSONS NOUVELLES』(66年)は、伴奏はベースとバシックのギターのみ、というシンプルなアレンジですが、このアルバムの編曲は全てエレック・バシックによるものでした。
Elek Bacsik / I Love You (1974)
66年以降活動の拠点をアメリカに移し、米国籍も取得したバシックは、74年にエルヴィン・ジョーンズ、グラディー・テイト、バッキー・ピザレリ、ハンク・ジョーンズ等をゲストに迎え、リーダー作『I LOVE YOU』を発表。実は62年に『BOSSA NOVA』というボサ作品も残してる彼ですから、ラテン・ムードな作風も得意としていました。バシックは93年、肺がんで亡くなっていますが、晩年はカナダ・ケベックで演奏活動を行なっていました。
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