2014年1月31日(金)

ヒトコト劇場 #36
[桜井順×古川タク]








ゴジラ生誕60周年に寄せて
ハリウッド版『GODZILLA』公開&神保町シアターでシリーズ全作一挙上映

 2014年、どうやら本当に新作のゴジラ映画が観られるようです。先月、レジェンダリー・ピクチャーズ版『GODZILLA』が7月25日に日本公開されると発表があり、公式サイトと共に予告編が公開されました。今年は第1作の『ゴジラ』が公開された1954年から数えてちょうど60年目になります。2004年の『ゴジラ・ファイナルウォーズ』を最後に制作が途絶えていたゴジラ映画ですが、ファンにとって

はこれ以上のプレゼントはないでしょう。この10年間はゴジラ不在の寂しい時期ではありましたが、ゴジラ映画に影響を受けた海外の作家たちからの返答という形で、怪獣映画という狭いジャンルの枠を超えて、怪獣という存在が世界的に、熱狂的なファン以外にも広く浸透していった期間でもありました。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』などのホラー映画で主流となっていたPOV(手持ちカメラによるセミ・ドキュメ

ンタリー)という手法を怪獣映画に用いた『クローバーフィールド/HAKAISHA』やKAIJU(怪獣)という日本語がそのまま劇中に使われていた『パシフィック・リム』が日本で受け入れられたことは、怪獣映画の待望論を示したひとつの現象だったのではないでしょうか。今回のゴジラ復活は、キングコングと並ぶ怪獣映画のオリジネーターとしての強さを世界に知らしめる絶好の機会なのです。
 かつて日本で隆盛を誇っていた怪獣とロボットの戦いを正攻法で描いた『パシ・リム』の出来に感心しながらも「来年のゴジラ復活を待たずして、なぜこんなに盛り上がれるのか!」とひとり憤っていた敬虔なゴジラ信者の僕ではありましたが、不安もあります。思い出すのは98年のこと、テ

ィム・バートンにヤン・デ・ボン、次々と変わる監督候補の報にやきもきさせられ、そして完成したローランド・エメリッヒ監督によるトライスター・ピクチャーズ版『GODZILLA』……。さんざん待たされた挙句の公開だったために、イグアナにも似たゴジラのデザインは物議をかもしましたが、さて今回はどうなることやら。
 良い知らせはまだまだ続きます。ゴジラ生誕60周年と『GODZILLA』の公開を記念して、来る3月8日から神保町シアターでゴジラシリーズ28本が全作35ミリフィルムで上映されることになりました。さらに、6月7日より全国80館で第1作『ゴジラ』のデジタルリマスター版がリバイバル上映されるそうです。諸問題あって上映が難しくなっていた時期もありまし

たが、旧作のゴジラ映画を劇場で観ることを心待ちにしている人間が僕ひとりだけではないのは、数少ない上映の機会を求めて行った新文芸坐にフィルムセンター、そして今は亡き銀座シネパトスで満員の客席を見た僕がいちばんよく知っております。このハリウッド版ゴジラへ一直線の上映ラッシュ、かつて、ゴジラ復活の機運を世間に示したと伝え聞く83年の「復活フェスティバル」の熱気が劇場で味わえることを期待しています。そしてそして、今回の復活が限られたファンの集いを超えて、世界全体を巻き込んだムーヴメントになりますことを願って。
(真鍋新一=編集者見習い)
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●「生誕60周年  ゴジラ映画総進撃」神保町シアターにて、3月8日(土)から4月11日(金) まで。
●上映スケジュールなど詳しい情報は公式サイト(http://www.shogakukan.co.jp/jinbocho-theater/)にて順次発表



元祖アイドル!岡崎友紀が歌うドラマ主題歌集
 

 NHKの朝ドラ『あまちゃん』の大ヒットにより、80年代アイドルが脚光を浴びたのは記憶に新しい。色気づいた少年たちが恋心を抱く、愛らしい女性アイドルたち。その長い歴史の源流に神々しく立っているのが、岡崎友紀その人である。その岡崎が主演し、自ら歌ったドラマの主題歌、挿入歌を集めた初のCD『なん

たって18歳!』が、貴重な昭和のテレビ音楽を発掘する「TV AGE」シリーズの新作として、この1月29日にリリースされた(企画監修は鈴木啓之)。
 岡崎友紀は子役を経て1970年に歌手デビューし、十七歳で初主演したTBSのドラマ『おくさまは18歳』が大ヒットした。以後、『なんたって18歳!』『マ

マはライバル』『ラブラブライバル』『ニセモノご両親』と、なんと四年間にわたって、とぎれなくTBSで連ドラに主演しつづけた。いずれの作品も底抜けに明るいラブコメで、岡崎はある「秘密」を抱えつつ懸命に生きるヒロインを、わざと喜怒哀楽を大げさに見せて演じ、コメディエンヌとしても高く評価された。
 これらのドラマで岡崎が歌った主題歌などが今回のCDに集められたわけだが、彼女の歌は高音での裏声の使い方がうまく、後年、歌唱力が要求される、ミュージカルの舞台に彼女が立つようになったのもうなずける。また彼女には、シンガーソングライター志向があり、ペンネームを含めて作詞も多数手がけているが、そのころのアイドルとしては珍しいことだ。しかもその歌詞には、子どもから大

人へと変化成長していく女性の希望や不安が素直につづられており、当時の少年たちの心に熱く訴えかけた。
 手の届かない存在ではなく、「自分の周りにもいそうな女の子」という親近感を世の少年たちに与えた点で、岡崎友紀は「アイドル」の在り方を大きく変えたし、それは現在のAKBやももクロへと受け継がれている。そういう意味で、彼女を「元祖アイドル」と呼んでもいいだろう。また岡崎は、十代の終わりには髪の毛を短く切っていたが、長い黒髪は女らしさのシンボルという、それまでの女性観を大胆に打ち破ったことも、当時とても新鮮に映った。
 今から四十年前に、訪れた東京・上野の西郷さん像の前で、たまたま『ニセモノご両親』のロケ撮影に出くわした。人だかりの中心にいた岡崎は二十一歳だっ

たが、TV画面を通して観ているとき以上に可愛くて、思わず息を飲んだことを、昨日のことのように思い出す。絶妙に溶け合った、少女の幼さと大人の色気。あのときの岡崎は、その年齢ならではの輝きに満ちていた。
 近年は動物愛護などの活動にも力を入れる一方で、歌手活動もつづけており、今年も精力的にステージに立つという。彼女のことを知らない男性諸氏は、まずは今回出たCDのジャケットを見てほしい。ドラマ『なんたって18歳!』に主演した際のバスガイドの扮装だが、胸がキュンキュンしたら、あなたはもう岡崎友紀のとりこ。そのまますぐにCDを入手すべし!
(加藤義彦=売文業)
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●全15曲収録/ユニバーサ
ルミュージックより発売中