ボウイ特集です。ボウイの73年のアルバム『アラディン・セイン』は、今から10年前にも『30周年記念盤』と銘打たれたデラックス・エディションが発売になりましたが、なんと今年『40周年記念盤』と題されたデラックス・エディションがまたまた発売になりました。しかも10年前はボーナス曲を10曲追加した2CDで、今回は「最新リマスタリング」ですが一切ボーナス曲ナシ。んー、なんかどっちも腑に落ちないブツなんですよね。とはいえ、当方の人生を通じて最も聴きまくった1枚でもあるこの作品を、決して悪く言うことができないのも事実(笑)。さて今回はそんな『アラディン・セイン』に収録された「薄笑いソウルの淑女」というマヌケな邦題を持った曲の聴き比べです。(2014年2月21日更新分/選・文=大久)
David Bowie / Lady Grinning Soul (1973)
まずはオリジナルです。73年のアルバム『アラディン・セイン』のクロージング・ナンバーですが、同作に参加したジャズ・ピアニスト、マイク・ガーソン(彼はスタンリー・クラークやスタン・ゲッツとの共演盤もあり)のプレイが冴えに冴えまくる1曲。ボウイがクラウディア・リニア(ストーンズ“ブラウン・シュガー”のネタとされるソウル・シンガー)にインスパイアされて作られた曲でした。
Lucia Micarelli / Lady Grinning Soul (2004)
83年生まれのクラシック・バイオリニスト、ルチア・ミカレリィ嬢のソロ・デビュー・アルバム『MUSIC FROM A FATHER ROOM』収録曲。コンセプトは面白いんですが、リズムトラックがショボくってちょっと残念ですね。同作は他にもクイーン「BOHEMIAN RHAPSODY」やデヴィッド・フォスターのカヴァーなんかも収録された売れ線作品ですが、まあ綺麗だからOKとしましょう。
Johnny Skoulas / Lady Grinning Soul (2011)
ギリシャで歌手活動を行なっている、ジョニー・スコウラスさんという方。ほとんど存じ上げませんし、検索しても殆どわかりませんでした。が、こちらは彼が地元TV出演した際に、なんだか陽気なラテン・ムードでスイング・ジャズ調に「薄笑いソウルの淑女」をカヴァーしている模様。いいですねえ、最高です。多分ボウイがもし83〜84年頃に同曲を演じていたら、こんなカンジになったんじゃないか、と妄想してしまいます。
Los Fantasticos / Lady Grinning Soul (2011)
2011年に発表されたボウイ楽曲カヴァー集『ZIGGY PLAYED SURF GUITAR』収録曲。すでにタイトルからもそのコンセプトも丸わかりですが、サーフ・ギターのインストでやらかしちゃってます。曲もそうですが、オチャメなジャケ(もちろんオリジナルの『ZIGGY STARDUST』のパクリです)も素敵です。
Tally Brown / Lady Grinning Soul
さて、最後はなかなか強烈です。34年生まれ、60年代のNYアングラ界で人気を博したボヘミアン女優、トーリー・ブラウンが自身の舞台でピアノだけをバックに「薄笑いソウルの淑女」をカヴァーした音源(おそらく70年代末の録音と思われます)。ジュリアードで声楽を学び、40年代にはバーンスタインのもとでジャズも学習したという彼女は、60年代にアンディー・ウォーホルが撮影した映画2作にも出演していますが、89年逝去。映像は音と全く関係ありませんが(サイレント映画の素材を2つくっつけたもの、だそうです)やけに音と絵がマッチしてて興味深いですね。
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