てりとりぃ放送局アーカイヴ(2015年2月20日〜2015年3月6日分)

 以前「てりとりぃ」の署名クレジットでも、当方の肩書きの部分で「ファズ研究家」という文言を使った事があるのですが、今回もそんな当方の研究の一部をご覧いただこうかなとタワケたことを考えました。前回の「ファズ開祖」特集に続いて今回は「日本のファズの歴史」です。実は当方は主にイギリス製のファズの研究に勤しんでるですが、それでもやはり日本のブツにもそれなりに親しみもあります。そんなことはともかく、単純に時代感丸出しの歪んだサウンドをご堪能いただければ嬉しい限りです。(文中敬称略/2015年2月20日更新分/選・文=大久)


尾藤イサオ/ワーク・ソング(1966)

 ご存知尾藤イサオの代表曲のひとつ。キモはやはり間奏でのギターの音色です。ご承知の通り当時のバックの演奏はブルー・コメッツが担当しており、ギターは三原綱木が演奏したもの。この音源発表当時、まだ日本には日本製のファズはありませんでした。ここで三原が使用したファズは、同年かまやつひろしが海外にて入手した、米マエストロ「FUZZ TONE」というファズ。それを借りて使用したものでした。

スパイダース/太陽の翼(1967)

 67年3月発表のこのシングルで、かまやつひろし本人もほんのすこ〜しだけ同ファズ、マエストロFUZZ TONEを使用しています。実はこのマエストロ製ファズはかまやつ〜三原の両人の手を経由して、大阪の楽器ブランド、エース電子工業の社長・梯郁太郎の手に渡ります。そしてその数週間後にはこのファズのコピー製品が同社製ACE TONE FM-1という名で商品化されました。現物が数週間後にかまやつ氏の手に戻ってきたときにも、そんな話(商品化)は一切しらなかった、とのこと。梯郁太郎はその後独立し、同じ大阪にてローランド社を興した人物。

中尾ミエ/恋のシャロック(1968)

 シャッフル+ロック=「シャロック」、という音楽ジャンルには賛否両論あって然るべきと存じますが(笑/そういえば梅宮辰夫にもシャロックと題された曲がありますね)、とにかく68年7月発表の中尾ミエのこのシングルはAB面双方で強烈なファズ・サウンドが披露されています。恥ずかしながら現物(盤)を持っていないのでクレジット未確認ですが、編曲が森岡賢一郎であることから、このファズはブルコメ三原綱木のプレイではないか、と推測しています。


しまざき由理/ハクション大魔王のうた(1969)

 問答無用、日本のファズ・クラシックの筆頭に挙げられる曲ですが、この曲には謎があります。それは演奏者が不明である、という点なのですが、未確認ながらやけに納得できる説のひとつとして「演奏はゴールデン・カップスなのではないか」というものがあります。このベースラインを聴くとなるほどルイズルイス加部っぽいなあ、と思わざるを得ませんが、確証はありません。その辺りは他の方に任せるとして、当方としてはこの見事なアッパーオクターブのファズの機種が気になります。恐らく国産のFM-2かFM-3あたりかと推測されるのですが。

オーロラ3人娘/クールな恋(1970)

 かまやつひろしが海外にてマエストロFUZZ TONEを入手したのと同じ1966年、当時まだアマチュアだったエディ藩も渡米し、当地で話題になっていたファズ(これも同じくマエストロFUZZ TONEでした)を購入して日本に帰国しています。どちらが日本に初めてやってきたファズかは今も不明なママですが、おそらく66年当時日本にはその2ケしかファズはなかったと思われます。そのエディ藩がカップスでギンギンのファズ・プレイを披露する68年発表の「クールな恋」は作詞・松島由佳、作曲・村井邦彦。「Baby, Please Don't Run Away」という英題もついていました。今ではもちろんオーロラ3人娘の代表曲としてメチャ有名ですね。



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 64年8月発売、全英1位に輝いたキンクスの「YOU REALLY GOT ME」。洋楽に多少でも親しんだ方ならどなたでもご存知の有名曲、ですよね。今回はその「YOU REALLY〜」のカヴァー聴き比べ。元々「パワーコード(ルート音に5度の音だけを付加した和音)を使った最初の曲」と呼ばれることがありますが、これ以前にもパワーコードの曲があるのでその説はいささかビミョーです。それはともかく、シンプルでパワフルなこの曲がどうアレンジされたのか、その辺りをお楽しみいただければ幸いです。(2015年2月27日更新分/選・文=大久)


Mott The Hoople / You Really Got Me (1969)

 今回の聴き比べでは(同曲カヴァーで最も有名な)ヴァン・ヘイレンは出てきません。そのかわり最狂のカヴァーをご紹介。モット・ザ・フープルのデビュー盤に同曲カヴァーが収録されているのですが、こちらの動画は70年に仏TV番組「BEAT CLUB」出演時のライヴ映像。インストで、こんだけスピーディーに荒れ狂う、最高のモットの映像です。10年早かったパンク・バンドとも呼ばれるモット・ザ・フープルですが、今はヒットを量産したグラムロック期よりもこちらのほうに注目が集まるのも頷けます。
Sly Stone / You Really Got Me (1966)

 スライが60年代中期にスタジオ・ミュージシャンとして活動していたことは有名ですが、数年前にその60年代のスタジオ・ワークや自身のデモ音源をまとめたコンピにてお披露目された、スライのカヴァー。66年に当時スライが参加していたボビー・フリーマンのために用意したデモ演奏だそうです。ちなみにスライはその後、82年のバンド最終作『AIN'T BUT THE ONE WAY』でもこの曲をカヴァーしています。

Robert Palmer / You Really Got Me (1978)

 ロバート・パーマーのカヴァーセンス、それはもういっつも最高ですよね。78年作『DOUBLE FUN』はドロドロにファンキーな南部ソウル・テイストのホワイト・ソウル名作として有名ですが、フリーのベーシスト、アンディー・フレイザーが参加していることに加えて、プロデューサーが(サルソウル関係でおなじみ)ディスコの帝王トム・モウルトンだということも特筆すべきでしょう。
Dalek I / You Really Got Me (1980)

 文字で書くと「DELEK I」ですが「デレク・アイ・ラヴ・ユー」と読みます。クラフトワークのサウンドに衝撃を受けたという英リバプール出身のシンセ・ポップ・バンドでしたが、このバンドのボーカルのアラン・ジルは並行してジュリアン・コープ等とティアドロップ・エクスプローズを結成、そちらではギタリストを担当しています。うーん、シュールですねえ。
Oingo Boingo / You Really Got Me (1981)

 オインゴ・ボインゴです。79年に再結成してからニューウェイブ色をギンギンに強めたバンドとして再出発を計ったアルバム『ONLY A LAD』収録曲。今聞いてもスゲエ新鮮ですよね。リーダーのダニー・エルフマンはバンド活動と並行しTVや映画音楽も手がけ、89年の「バットマン」や93年の「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」他ティム・バートン関連の映画でおなじみかと思われます。


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 今回の「放送局」はCM特集。以前にもカセットテープのCM特集てのをやりましたが、今回は「ラジカセ」です。「倍速ダビング」「オートリバース」「グライコ」…… いやあラジカセにまつわるスペック・ネームは今振り返ると強烈です。スペック厨の少年達を惑わせるのは十分なカッコ良さ(笑)。今やすっかり絶滅したラジカセというハードウェアに郷愁の思いを馳せる人も数多くいるかとは存じますが、CMのほうも「懐かしいにもホドがある」というモノばかり。そんなわけで今回はまず第1弾、「アイドルが出演したラジカセCM」を集めてみました。(2015年3月6日更新分/選・文=大久)



ナショナル THE DISCO(1980)

 そりゃあこんなCM見せられたら誰だって絶対に一発でメロメロになりますよ、この美少女に。同年「翔んだカップル」「ただいま放課後」への出演で女優デビューした石原真理子・当時16歳です。ちなみにこのCMの翌年にも彼女は同社のラジカセ「COUPLE」のCMに出演していて、こんな萌え萌えなことになってます。こっちは聖子ちゃんカットになってますね(笑)

東芝BOMBEAT UU(1981)

 なかなかキュートなお嬢さんがキャピっとダンスしてますね。流れているCMソング「キュン!と片想い」を歌っていたのも彼女で、当時の芸名はヘレン。後に「うる星やつら」テーマ曲「心細いな」を歌ったことで知られるアイドル・シンガー、ヘレン笹野さんです。後にTV番組のアシスタントやグラビアでも活躍。日米のハーフ・タレントですが、現在は米国に在住しているとのこと。
日立パディスコW1(1982)

 杉田かおる、当時18歳。素敵です。素敵じゃあないですか。なのにどうしてこうなった(笑)。実は「鳥の詩」(80年)の大ヒット等があったにも関わらず、金銭待遇で事務所と決裂。独立して数千万円の借金を背負うことになったという時期にあたります。同年初のヌードを披露したことでも話題に。再度書きますが、当時18歳。んー、スゴイ。
東芝SUGAR(1984)

 CM中にクレジットされていることでもわかるように、映画「天国に一番近い島」とのタイアップで登場した原田知世、当時17歳。そういえば「ニューカレドニア」という地名が一気に日本で有名になったのはこの映画がきっかけ(同作はその一部が68年にNHK朝の連ドラでドラマ化されたそうですが)かと思われますが、実は丁度この頃当地は先住民による(フランス占領からの)独立運動が盛んで、半ば内戦状態にあったとのこと。
ナショナルLOVE CALL(1984)

 荻野目慶子20歳。前年に公開された映画『南極物語』で既にスター女優となっていましたが、彼女が出演した「LOVE CALL」のCMは「洋館の中でラジカセ持ってヌボーっと立つ」編と「滝の前でラジカセと雨傘を持ってヌボーっと立つ」編がありました。こんな細長い物体を「手提げ」と勘違いする人がいるのかどうかはともかく(笑)このグライコはちょっと使い勝手悪そうですねえ(笑)。
ナショナルLOVE CALL(1985?)

 おそらく85年だと思うのですが、ちょっと正確にはウラが取れませんでした。映画『フェノミナ』でブレイク、ブルック・シールズの再来と言われた絶世の美女ジェニファー・コネリーです。ヒップホップ、ブレイクダンサー、キース・ヘリング風壁画、ジェニファー・コネリー。どれも素敵すぎて、ラジカセにリモコンが搭載されたことなんてどうでも良くなりますね。余談ですが、英語でラジカセのことを「BOOMBOX」と呼ぶそうです。
ナショナルLOVE CALL(1984)

 おまけ。ナショナルのオーディオ製品CMに何本も出演している近藤真彦ですが、こちらは「オレハタチ」の台詞でもおなじみ、マッチが20歳の時に出演したラジカセCM。ちなみにラジカセではないのですが、田原俊彦は84〜85年にかけて(同じ松下傘下の)テクニクスのミニコンポのCMに出演していましたね。


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