その昔、80年代の終わり頃にイギリスでドクター&ザ・メディクスというケバケバなバンドが持て囃されたことがありました。ネオ・サイケ〜グラム〜ニューウェイヴの流れを組むロンドン出身のバンドでしたが、イギリスでは「一発屋」としてその名が今も知られています。実は現在まで解散することなく活動を続ける人達なのですが、一貫して彼らの魅力は「ケバい」ことにあります(笑)。今回はそんなドクター&ザ・メディクス特集。(2016年4月8日更新分/選・文=大久)
Doctor And The Medics / Blockbuster (1985)
結成は81年。85年にホークウィンドのカヴァー(「SILVER MACHINE」)を発表しインディーチャート2位を記録して一気に火がついたドクター&ザ・メディクス。こちらはその頃の同バンドのライヴ映像。曲はスウィートの73年グラムロック期の代表曲「BLOCKBUSTER」のカヴァーです。80年代らしい乱痴気っぷりが素晴らしい。丁度この頃メンバーの補強があり、すぐ後に世界的なブレイクをすることになります。
Canned Heat / On The Road Again (1968)
メンバーも増員し、新体制となった86年に発表したノーマン・グリーンバウムのヒット曲カヴァー「SPIRIT IN THE SKY」がなんと全英1位の大ヒットに。ご覧のように70年代グラム・ロックのエレメンツをあちこちに鏤めながらも、80'Sギターポップの世界にちゃんと通用するポップ・ロックとなっています。当時「モリッシーに続く新たなヒーロー登場」みたいな宣伝文句も使われてましたね。
Doctor And The Medics / Waterloo (1986)
初期にはXTCのアンディー・パートリッジがプロデュースを担ったり、バンドのメンバーとしてダムドのローマン・ジャグが在籍したりと、当初からビッグ・プロジェクトの香りがしていました。で、こちらは86年に発表した6枚目のシングル。もちろんABBA「WATERLOO」のカヴァーですが、なんと御大ロイ・ウッドをゲストに迎えて制作されています。というかこれ、ロイ・ウッドそのまんまのテイストですよね。
Doctor And The Medics / Hi Ho Silver Lining (1990)
とはいえ美しくも儚い1発屋の世界。90年代には早々にシーンから忘れられた存在となってしまいました。90年代にはマンチェスター・テイストを取り込んでこんなカヴァー(オリジナルは67年のジ・アタック。直後にジェフ・ベックがカヴァーしたことで有名な曲)をリリースしていますが、まあ案の定惨敗でした。この曲、サッカーの応援歌として当時有名になった曲なので、そこに便乗しようとしたのかも知れませんね。
Doctor And The Medics / You Spin Me Round (Like a Record) (2015)
ですが前述した通り、実はバンドは現在にいたるまで存続しております。昨年春に発表された新曲は、なんとデッド・オア・アライブの80年代を代表するダンス・ナンバー「YOU SPIN ME ROUND」のハードロック・カヴァーでした。ったく、こいつら何も変わってないですよね(笑)。素晴らしい。ちなみにオリジナルメンバーで今も残っているのはヴォーカルのドクターのみですが、オリジナル・ベーシストだったリチャード・シアールは91年にコーデュロイを結成しアシッド・ジャズからデビューした人でもあります。
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