[桜井順×古川タク]
河崎実監督・AKB48ら九人のアイドル主演映画
「地球防衛ガールズP9」DVDが発売!
「いかレスラー」を皮切りに「日本以外全部沈没」「ヅラ刑事」「ギララの逆襲」などの映画をここ数年立て続けに監督・公開した私、河崎実のほぼ3年ぶりの新作映画のDVD化である。 なぜ3年も空いたかというと、多くのコンビを組んだプロデューサーの叶井俊太郎氏の配給会社・トルネードフィルムが倒産という不幸もあり、世界全体を覆う不況とネットの躍進によ
る映像メディアの変化があり、従来のようなバブルな映画作りが出来なくなってきたという状況がまず一つ。 そして流石に私も神様でなく、毎年二本も三本も公開映画がある監督など、大手テレビ局出資のメジャー作の監督以外にはありえないわけで、一つの戦士の休息の時期に来ていたということである。 そして事務所の引っ越し・婚約破談・入院という人生について考えさせられる
出来事が続き、新作映画どころではなかった。更に、中野にバー「ルナベース」を開店させることになり、初めての店の経営で多忙を極めた。そして漸く新作をとりかかれる事になり、製作したのが本作なのである。 前述のような試練の後、私は再び生まれ変り原点に帰ろうと思った。私の原点、それは87年のデビュー作「地球防衛少女イコちゃん」なのだ。美少女アイドルと特撮怪獣、お笑いをミックスしたVシネシリーズである。 このC調な世界に再び遊ぶことにより、私の壮年期はスタートするのだ。 AKB48のメンバーを含めた有望アイドル総勢9人を主演とし、お馴染みウルトラ愛のキャストは「ウルトラマンA」のタカ派・山中隊員の沖田駿一氏が肝。星光子氏・古谷敏氏・モト
| 冬樹氏といつもの顔ぶれも揃った。そして本作は渋谷シネクイントで公開されたのだが、毎日日替わりで映画のクライマックスになると主演アイドルたちが舞台袖から登場し演技をするという、日本映画初のパフォーマンスが披露されたのだ。これを3Dならぬ4D(ふ ぉんと<本当>に出る)と呼び、この部分もBOXの方には収録されている。ネットなどで映像がタダの空気が充満しDVD売上が激減の今、画期的な作品と自負している。是非とも堪能していただきたい。 (河崎実=映画監督) |
あるトッド・ファンのひとりごと
トッド・ラングレンのカタログが再発される。いったい何十回目かというくらい再発されているトッドだが、今回は別だ。ファンの間で長い間切望されていた〝アンペックス版〟『ラント』の収録曲が初めて正式にリリースされるのだ。トッドのファースト・アルバム『ラント』と言えば、正
規盤と収録曲が違うアンペックス版LPがごく初期に出回りプレミア化したのはご存知の通り。ミックス違い、別ヴァージョン、その後一度もリリースされなかった曲「セイ・ノー・モア」、セカンド・アルバム『バラッド・オブ~』に収録された「ホープ・アイム・アラウンド」の初期ヴァージ
ョンなど、垂涎の音源が多数収録され、トッド・マニアにとって最大のレア・アイテムだった。筆者も必死で盤起こしのブートを入手して愛聴していたが、針音のないマスターから起こされた音はやはり格別。 しかし、こんな目玉があるにも関わらず、今回のリイシュー・シリーズ、こちらが驚くほど商売っ気が無いのだ。日本盤こそ単体タイトルで紙ジャケでリリースされるが、輸入盤では『バラッド・オブ~』との2イン1、しかもジャケも廉価版のワゴンCDとしか思えないチープな仕上がり
(写真左はUKエドセル再発盤ジャケ)。このCDの存在は知っていても、まさかアンペックス版音源が入っているとは思えずスルーしていたファンも多いと思う。昨今の水増しデラックス・エディションがはびこる洋楽リイシュー市場からすれば、なんともったいない出し方。『ラント~デラックス・エディション』という2枚組で出した方がもっと売れたはず……。 ワーナー時代の『ア・カペラ』『ニアリー・ヒューマン』『セカンド・ウィンド』の3タイトルに至っては3イン2で、『ニアリー・ヒューマン』のA面とB面をディスク1とディスク2にぶった切って収録。そりゃ盤の効率的利用かも知れませんが……ねえ。 ちなみに、このぶった切られた『ニアリー・ヒューマン』というアルバムには
「トゥー・リトル・ヒトラーズ」というエルヴィス・コステロのカヴァーが収録されている。何故この曲のカヴァーを? この件についてトッド本人が語ったインタビューを見た事がないが、私にはトッドがこの曲を何故選んだのか大体察しがついている(笑)。『ニアリー・ヒューマン』発売の3年前、トッドはXTCのアルバム『スカイラーキング』のプロデュースをつとめ、そこでアンディ・パートリッジと大喧嘩になったのは有名な話。その時のアンディのインタビューに答えは隠されている。 アンディ曰く、「トッドはこのアルバムをぶっつぶそうとしてるんだ。スタジオにヒトラーが二人いるようなもんだ」。 (五條弾=会社員)
てりとりぃアーカイヴ(初出:月刊てりとりぃ#17 平成23年7月23日号)
It's A Small World After All
「今度東京に仕事でいくことになったんで、お前んチに寄るから。楽しみにしてるぜ、ヨロシク」。ある日突然メールでそう伝えてきたのは、遠くドイツのデュッセルドルフで大学の学長をしているL氏。もちろん知らない仲ではありませんが、それまではネットを通じて情報交換をする、それだけの仲でした。大学の学長だと聞かされたのも直前のことで、えらくビックリしたものです。こちらはドイツ語なんて一切できませんし(常に英文でコンタクトをとっていたとはいえ)英語で喋るのも自信がありません。正直にそう伝えると「大丈夫大丈夫、知り合いの日本人連れてくからさ」と返信がありました。 その日、真面目な風体2人の訪問を受けた我が家。僕を見るなりL氏は微笑んで「お前かあ、やっと会え
たな、ガハハ」とハグ。しかし狭い&汚らしいウチの部屋に並んだ膨大なレコードの山とギターの山を見て目を丸くしたのが、同行されたIさん。彼はL氏の愛弟子にあたる研究者で、東京大学大学院助教授とのこと。実はL氏は世界的に著名な医学史の権威で、世界中で教鞭をとる人でもあるそうですが、この日Iさんは「通訳がわりに」僕の部屋を訪れてくれたわけです。 既に僕の親に近い年齢のL氏ですが、純粋に僕の「ギター仲間」でもあります。いわゆるコレクター筋の間では一笑に付されるようなヘンテコなギターばかりなぜか大量に持っているのですが、そのギター達をどうしても実際に弾きたいから、といってわざわざL氏は我が家を訪れてきたのです。まるで少年のように「スゲー、スゲー」と連発
し、次から次へとギターを爪弾くL氏。ギターにも音楽にも、国境や年齢や学歴はホントに関係ない、それを実感した一日でした。 あらゆる話題に尽きない日でしたが、僕がポロっとIさんに「実はL氏がホントはどのくらい偉い人なのか、イマイチよく分かってないんですよ。エヘヘ」と言ったとき、Iさんは今回のL氏の訪日の目的と、タイトなスケジュールを教えてくれました。そして「ウチの大学は慶応大学と姉妹校なんだ。さっき交流イベ
ントのコンサートがあってね。そこで挨拶だけして、そのまま出てきちゃった」と続けるL氏。それを聞いて「今日こんなとこでギター弾いてる場合じゃねえだろアンタ」と偉そうに言う僕。もちろん冗談なんですが、そんな世間話をしてた時丁度その交流イベントの様子が部屋のTVに映し出されました。それを見て文字通り絶句した当方。画面に映っていたL氏の脇には、天皇皇后両陛下がご列席されていたのです。 ︵大久達朗=デザイナー︶
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