ブラジルの曲で最も有名なもののひとつ、とされる「BRAZIL(原題 Aquarela do Brasil)」は1939年の初め頃にアリー・バホーゾという作曲家によって作られました。同年6月、アラシー・コルテスというシンガー/女優によって初めて歌われたこの曲は、当初はそれほど人気を得る事はできなかったそうですが(彼女の声にあっていなかった、という評があります)、直後には数人のシンガーによって再び録音され、8月にフランシスコ・アルヴェスという男性シンガーのバージョンによってヒットしました。そして1942年。ウォルト・ディズニーが制作したアニメ『ラテン・アメリカの旅』の中の一編「ブラジルの水彩画」で全編に渡りフィーチャーされたこの曲(歌はアロンソ・オリベイラ)で、世界中に「サンバのリズム」のインパクトを植え付けることに成功しています。動画はそのアニメ「ブラジルの〜」全編です。
1972年、ロスのスタジオで歌うサラ・ヴォーンとミシェル。同年メインストリーム・レーベルで制作された『SARAH VAUGHAN SINGS MICHEL LEGRAND』はデイヴ・グルーシンやレイ・ブラウン、チャック・フィンドレイ、チャック・レイニーら辣腕ミュージシャンが脇を固めた。ここで歌われたのは映画「おもいでの夏」主題歌「SUMMER KNOWS」と「SWEET GINGERBRED MAN」の2曲。エリス・レジーナのヴァージョンとの聴き比べをお楽しみあれ。
Oscar Peterson, Michel Legrand & Claude Bolling / Watch What Happens (1984)
才能を認め合う3人のピアニスト、ミシェルとオスカー・ピーターソン、クロード・ボリンが組んでピアノの連弾を披露したプログラム「GRAND PIANO」は、米国を中心に各地で喝采を浴び、それに感化されたのが、前田憲男、佐藤允彦、羽田健太郎の三者による「トリプル・ピアノ」だった(とは筆者が生前の羽田氏から聞いた逸話)。オスカー&ミシェルによる名演「WATCH WHAT HAPPENS」はジャック・ドゥミ監督映画「シェルブールの雨傘」のサイド・テーマ曲。もとは同監督作「ローラ」のために書かれたものだ。。
Michel Legrand & Stephane Grappelli / How High The Moon(1984)
最後はミシェルがポール・ミスラキと並び尊敬して止まなかった名ヴァイオリニスト、ステファン・グラッペリとの共演映像。グラッペリ、実はピアノの名手でもある。ロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールで行われたコンサートからの映像で、曲は1940年のミュージカル『TWO FOR THE SHOW』のために書かれた「HOW HIGH THE MOON」。グラッペリはノンクレジットながらミシェルのオーケストラ・アレンジのアルバムやサントラの録音に度々参加している。