そのトゥーツ・シールマンスの演奏によるワルツ・ジャズの名曲「BLUESETTE」。99年、スウェーデンのPOLAR MUSIC PRIZEでの演奏で、もう一人のハーモニカの天才、スティーヴィー・ワンダーとこの曲をデュエットしています。トゥーツといえばハーモニカだけでなく、50年代からのジャズ・ギタリスト(ジョン・レノンとのエピソードも有名ですよね。また一説ではハーモニカ・ホルダーを首からさげてギター抱えた最初の人物、ともいわれたりします)でもあり、同時に“口笛”でも有名ですが、そのあたりはまた別の機会に。
Stevie Wonder / Alfie (1973)
時代が前後しますが、73年、バート・バカラックのTV特番に出演して「ALFIE」を演奏するスティーヴィー・ワンダー。彼は60年代に何枚もインスト・アルバムを発表していますが、元々この曲は68年のインスト作『EIVETS REDNOW』(変名での発売でしたが、正体バレバレですよね)に吹き込んだバカラック・ナンバー。そういえばスティーヴィーには「HEY HARMONICA MAN」という曲もありますが、その曲が収録されたのは64年のインスト・アルバム『AT THE BEACH』でした。
最後はスウィング・アウト・シスター。レトロな映画音楽のスタイルを用いたことで有名なセカンド・アルバム『KALEIDOSCOPE WORLD』収録曲ですが、どなたでもお判りの様に、この曲はジョン・バリー『真夜中のカウボーイ』のモチーフ/アレンジをそのまま拝借して制作されています。アレンジは、SSWでもありオーケストラ・アレンジャーでもあるジミー・ウェブが担当。他にも同作収録の「YOU ON MY MIND」は「華麗なる賭け/THE THOMAS CROWN AFFAIR」そのままのPVだったりします。
オリジナル・ヴァージョンです。ジャケにもあるように、彼のギターと口笛が主役のジャズ・アルバム『THE WHISTLER & HIS GUITAR』収録曲。「ステファン・グラッペリと同じ楽屋で、口笛を吹きながらギターのチューニングをしていたら、ふとあのフレーズが出てきてね。ステファンが振り返って『それ、とてもいいじゃないか』と言ってくれた。私はあわててフレーズを紙に書き取って『BLUETTE」というタイトルを付けた。最初は"S"がなかったんだ」とは本人の弁。
トゥーツ本人がギタリストとしてジョージ・シアリング楽団に参加していたこともあり、またシアリング本人がステファン・グラッペリとの数々の共演を残していることからも、納得のカヴァー、といえるかも知れません。こちらは65年にソロ名義でキャピトルに吹き込まれたジョージ・シアリングのイージーリスニング・アルバム『HERE AND NOW』収録曲。オーケストラ指揮はシアリングの右腕的コンダクター、ジュリアン・リー。
King Sisters / Bluesette (1966)
30年代から活動を始め、40年代にはラジオ番組で、60年代には自らの名を冠した「THE KING FAMILY SHOW」というTVバラエティー番組で人気を博したキング・シスターズ。グレン・ミラー楽団のコーラスも担当したという彼女達ですが、こちらは66年にワーナーに吹き込まれた「BLUESETTE」のカヴァー。やはりここでも、涼しげなフルートが出てきます。気持ちいいですよね。
ローリング・ストーン誌が選んだ「永遠の名曲500曲」にも選ばれた名曲「WE'VE ONLY JUST BEGUN(愛のプレリュード)」。ポール・ウィリアムス作詞、ロジャー・ニコルス作曲、そしてカーペンターズが歌ったヴァージョン(70年)が世界的にヒットしたことで知られていると思います。アメリカでは今も「結婚式の定番ソング」として長らく愛されているようですが、今回は同曲の「ジャズ・アレンジ」ものです。色んな楽器の音色で、この超有名なメロディーを聴き比べしてみようと思います。時代的に、ファンキーなモノが多いというのも面白いですよね。(2012年11月16日更新分/選・文=大久)
Ramsey Lewis / We've Only Just Begun (1971)
ピアノ版。アルバム「BACK TO THE ROOTS」はレア・グルーヴ/クラブ・ジャズ系のリスナーにも非常に人気の高いカデットの名盤ですが、その中に収録されたヴァージョン。クリーヴランド・イートン(B)、モーリス・ジェニングス(DR)という、屈強のファンク・マスターをリズム隊に据えながら、同曲ではしっとりとしたピアノ・ジャズのアレンジで披露。控えめながらも完璧なグルーヴィー・パーカッションを担当しているのは、カーティス・メイフィールド作品でお馴染みのマスター・ヘンリー・ギブソン(!)。
Grant Green / We've Only Just Begun (1971)
ギター版。ブルーノートから出た「VISIONS」はモーツァルトの「シンフォニー40番」を収録していることで有名な71年作の名盤ですが、同盤には「WE'VE ONLY〜」のカヴァーも収録。ややアップテンポで軽快なノリながらも、シンコペーションしまくるギターの音色の存在感がハンパないですね。ビリー・ウッテン(VIBE)、チャック・レイニー(B)、アイドリス・ムハンマド(DR)が参加。同盤にはジャクソン5「NEVER CAN SAY GOODBYE」の素晴らしいカヴァーも収録。
The Wooden Glass feat. Billy Wooten / We've Only Just Begun (1972)