ロジャー・ニコルスが書いた曲で「WE'VE ONLY JUST BEGUN」に並ぶスタンダード曲、と思われる「RAINY DAYS AND MONDAYS」。もちろんカーペンターズの代表曲でもあるので、すぐにあの美しいハーモニーとアレンジを思い浮かべますが、今回はこの曲のカヴァー曲を聴き比べ。ちょっと黒めの曲が並んでるのは、単に選者の趣味でもあります。ご理解いただけると助かります。(2012年11月23日更新分/選・文=大久)
40〜50年代にはアトランティック・レコードの看板シンガーでもあり、「R&Bとは彼女のイニシャルのことだ」とまで呼ばれる、ザ・R&Bシンガー、ルース・ブラウン。このカヴァーは彼女が活動休止する直前の72年に残された音源で、アルバム『THE REAL RUTH BROWN』収録曲。ベースにロン・カーター、ドラムはバーナード・パーディー、ギターはデヴィッド・スピノザ、オルガンがリチャード・ティー。すげえメンバーですが、それよりも歌がスゲエです。
こちらはフィラデルフィア・ソウルの王道アレンジで聞かせる、イントゥルーダーズの75年録音版。アルバム『ENERGY OF LOVE』収録曲ですが、同盤はウィリアム・ディヴォーンのカヴァーが入ってたりするのに、中々注目を浴びる機会の少ないアルバムなのが惜しいですね。「RAINY〜」のカヴァーは、もちろんヴィンス・モンタナJRのプロデュース、演奏はM.F.S.B.、当然ですが録音はシグマ・サウンド・スタジオ。
最後はパット・メセニーです。昨年発表された完全ギター・ソロ・アルバム『WHAT'S IT ALL ABOUT』収録曲。動画は宣伝用に公式アップロードされたものなので曲中に喋りが入っていますが、パット・メセニー自身が本作について語っていますね。メセニーはカーペンターズの大ファンらしく、カレンの声のようにギターを弾きたい、と常々思っている、とのこと。ちょっと意外ですねえ。80年代にはギター・シンセまで駆使していたメセニーさんなのに(笑)。
プロコフィエフ「ロミオとジュリエット」を使用したジョン・ルイスの2007年のクリスマス・シーズン用TVCM。ハッキリ言って何やってるかサッパリわからん、というのが逆にこのCMに皆の目を注目させる戦略、なのでしょうが、マンマと引き込まれますねえ(笑)。既に「世界のCM集」のようなところで数多く紹介された映像なので、ご存知の方も多いかもしれません。最後に粉風吹を投げつけるシーンがイカしてます。 John Lewis Christmas advert (2008)
2008年のCMは、王道中の王道、ビートルズ・ナンバーでした。しかも「FROM ME TO YOU」というギフト・シーズンにうってつけの選曲というワケですね。このCMは当然大きな話題となったのですが、興味深いことに実はこのビートルズ・ナンバーをカヴァーしてるのはジョン・ルイスのスタッフなのだそうです。つまり、素人カヴァー、ということですね。 John Lewis Christmas advert (2009)
なんとこの年の曲はガンズ&ローゼズ「SWEET CHILD O' MINE」でした。ガンズがイギリスのTVCMに使用許可を与えたのはこのCMが初めて、なんだそうです。カヴァーしてるのはスウェーデン出身のアイリッシュ・フォーク系シンガーのヴィクトリア・バーグスマン。彼女のソロ・プロジェクト、テイクン・バイ・トゥリーズという名義でカヴァー/発表された曲です。このCM、タイムマシン系の脚本なんですね。 John Lewis Christmas advert (2010)
2010年のCM使用曲はエルトン・ジョンの代表曲「YOUR SONG」でした。カヴァーしてるのはエリー・ゴウルディングという英女性SSWで、彼女はインディー系エレクトロニカ/シンセ・ポップの作風でもお馴染みの女性ですが、アコースティックな作風の曲も沢山残しています。やっぱり、プレゼントてのはみんなどこかに隠しておくモノなんですね(笑)。工場のオッチャンの「シッシッ」ていう動作が最高です。 John Lewis Never Knowingly Undersold TV Advert (2012)
「NEVER KNOWINGLY UNDERSOLD」ていう言葉が「最安値保証」という意味だとつい先ほど知りました(笑)。こちらはホリデイ・シーズン用のCMではなく、ジョン・ルイス秋の「大売り出しセール」用TVCMです。今年の9月から放映されたもので、曲はINXS「NEVER TEAR US APART」(88年)のカヴァー。歌ってるのは09年にデビューした英国の女優兼シンガー、パロマ・フェイス。ていうか、曲よりも既にこの考え込まれた映像が世界中で大きな話題となっているようですね。 John Lewis Christmas advert (2012)
そんなワケでこちらが本年度、2012年のクリスマス向け最新CM。なんと曲は84年、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの大ヒット・バラード「POWER OF LOVE」のカヴァーです。歌うのは現在若干20歳、来年アルバム・デビューするというガブリエル・エイプリン嬢。今年のCMは「THE JOURNEY」と名付けられた超大作。というか今回の映像、マジヤバイっす。胸が潰されそうになります。んー。
「あなたにいてほしい」の邦題でもお馴染み、TBSドラマ『真昼の月』(96年)のために書き下ろされた曲です。実は96年当時から、SOS本人達は「あの曲、あんまり好きじゃないのよね」などと酷いことを言ってましたが(笑/じつは本人がそう口にしたのを実際に聞いています)、日本ではブッチギリで人気の一曲。そんな曲を2010年のSOSは、カル・ジェイダー風味のヴァイブを取り入れたクールなインスト曲に仕上げています。 Swing Out Sister / La La Means I Love You (2010)
94年発表、レイ・ヘイデン・プロデュースの4作目『THE LIVING RETURN』に収録された、デルフォニクス「ララは愛の言葉」のカヴァー。94年版も70年代ニュー・ソウル色を強くしたアレンジでしたが、この2010年版はもうモロにマーヴィン・ゲイ「WHAT'S GOING ON」のアレンジを取り入れた、完全な70年代初期ニュー・ソウル・アレンジになってますね。「FREE SOUL 90'S」ってカンジでしょうか。 Swing Out Sister / Breakout (2010)
SOS最大のヒット曲でもあるデビュー曲「BREAKOUT」の新録版です。87年の発表当時はオサレ系とかカフェバーがどうとかシンセベースがどうとか、いろいろと言われたワケですが、23年後にこうしてラウンジー&レトロなアレンジのメロウ・ヴァージョンとして生まれ変わると、とても新鮮に思えます。それにしても今や「カフェバー」って知らない人のほうが多いんじゃないか、てくらい完全に死語ですよね(笑)。 Swing Out Sister / Am I The Same Girl (2010)
92年発表の3作目『GET IN TOUCH WITH YOURSELF』に収録された、バーバラ・アクリン「AM I THE SAME GIRL」のカヴァー。92年版はそれはもう最強とも言えそうな90S UK SOUL最高峰だったワケですが、2010年版ではアコースティックで飄々とした爽やかアレンジになっています。よりジャジカルでライヴ指向のアレンジも聴きもの。 Swing Out Sister / Billboard Intro Mix (2011)