てりとりぃ放送曲アーカイヴ(2013年2月15日〜2013年3月1日)

 以前「泣く子も黙る」アニメとして「スヌーピー」をご紹介しましたが、今回は「泣く子も黙る」アメリカの子ども向け番組、セサミ・ストリートの特集です。69年の放送開始以来、140カ国以上の地域で圧倒的な影響力を誇る教育番組なわけですが、実は同番組は多彩な音楽が使用されることでも有名です(自社の傘下にレコード会社も持ってたり)。そんなセサミ・ストリート関連曲から興味深いものをいくつか集めてみました。(2013年2月15日更新分/選・文=大久)


Anything Muppets / Mahna Mahna (1969)

もちろんオリジナルはイタリアのピエロ・ウミリアーニが前年発表した映画音楽ですが、アメリカでは『マペット・ソング』という別名でも有名。当初はセサミ・ストリートの1コーナーでしたが、後にこの女性マペットのユニットは番組から独立し(なんとあのエド・サリヴァン・ショウにも出演した経験あり)76年からは『マペット・ショウ』という別番組で活躍するようになりました。

Stevie Wonder / 1-2-3 Sesame Street (1973)

セサミ・ストリートは昔からセレブ・シンガーが頻繁に出演し、歌を披露する機会が多い番組です。こちらは73年4月、スティーヴィー・ワンダーが出演し、トーキング・モジュレーターを使ってセサミ・ストリートの定番ソングをファンキーにカヴァーした模様。同日の出演ではスティーヴィーがグローヴァー(青いマペットキャラ)に歌い方を教える、というコント・コーナーもアリ。

Robin Gibb / Sesame Street Fever (1978)

 こちらは一大ブームとなった「SATURDAY NIGHT FEVER」とディスコ音楽のブームに便乗し、本家ビージーズのロビン・ギブを招いて制作されたパロディー・アルバムから。セサミ・ストリート発のオリジナル・アルバムの中では最もヒットした作品で、ビルボードのポップ・チャートにもランクインしました。

Born To Add (1983)

 セサミ・ストリートの中で使用/制作されたR&R楽曲を集めたアルバム『BORN TO ADD』のタイトル曲ですが、もちろんブルース・スプリングスティーンのパロディー・ソングです。アルバムは同年、グラミー賞の『子ども向けアルバム賞』にもノミネートされました(余談ですが、その年その賞を受賞したのは映画『ET』のナレーション・アルバムで、声をマイケル・ジャクソンが担当した作品)。

Elvis Costello & Elmo / Monster Went and Ate My Red 2 (2011)

2011年にはあのエルヴィス・コステロが出演、77年の名曲「(THE ANGELS WANNA WEAR MY) RED SHOES」の替え歌「(A MONSTER WENT AND) ATE MY RED TWO」を披露。モンスターがやってきて、僕の赤い「2」を食べちゃったよ!なんていうこちらも、コステロらしいオチャメ・ソングとなっています。この他にも同番組へのセレブ・ゲストの出演場面にはとても興味深いものがあるんですが、続きはまた改めて。
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 10年振りに新曲を発表した、というだけで世界中が大騒ぎ(まるで漫画『沈黙の艦隊』のエンディングみたいですね)なわけですが、こんな時は当然のように当方の脳内もボウイ一色になってしまいます。新作の発表(3月)に併せた某音楽誌のために先日まで大量のボウイ原稿を書きまくったんですが、そんな当方の裏事情を反映(笑)してボウイ特集。ボウイの新曲にまつわる「お祭り」を動画で検証してみました。(2013年2月22日更新分/選・文=大久)


David Bowie / Where Are We Now? (2013)

以前もチラっと載せたのですが、改めて。10年もの間音沙汰がなかったボウイ氏ですが、実は新作は丸二年かけて制作されています。で、こちらが今年の頭、なんの告知もないままに突然発表された新曲。スパンダー・バレエのゲイリー・ケンプは、この曲を聴いて号泣してしまったのだそうです。そういう人は世界中に15億人くらいいると思われますが。(13年1月8日発表)

Momus / Where Are We Now? (2013)

さて、今回の「放送局」の本題はここからになります。世界中が「お祭り」と書きましたが、初音ミクやジャスティン・ビーヴァーの例を見てもお判りのように、この祭りは世界同時多発的に勃発しています。プロ・アマ問わずボウイの新曲に心を動かされた人/ミュージシャンはその感動を行動に移しました。こちらはフランス出身、現在大阪に住むミュージシャンのモーマスが、なんとボウイの新曲発表その日に作って公開してしまったカヴァー。(13年1月8日発表)

Evan Handyside / Where Are We Now? (2013)

こちらは米在住のクラシック・ギタリストによる、クラシック・ギターでのカヴァー。彼はボウイの新曲を連続して50回も聞き込み、その美しいベースライン(byトニー・レヴィン)と楽曲のメロディーに魅了され、このカヴァーを作った、と自身のブログで述べています。うん、5日で50回か、俺と同じくらいだな(笑)。
(13年1月12日発表)


Fernando Perdomo / Where Are We Now? (2013)

米国在住のシンガー・ソングライター、フェルナンド・ペルドモ氏による、軽快なカヴァー。テンポは早められながらも、レイドバックした爽やかな雰囲気はボウイ版のオリジナルには感じられない新解釈、ですよね。全パートの演奏はペルドモ氏ひとりによるもの。(13年1月15日発表)


Ein Astronaut / Where Are We Now? (2013)

ドイツ在住のマルチ・ミュージシャン、アイン・アシュトロノウト氏によるカヴァー。彼は「全パートを全部自分でプレイする」というコンセプトでYOUTUBEに多くのカヴァー楽曲を公開していますが、その彼の最新曲がこちらでした。どうでもいいことですが、部屋が素敵です。そして途中にお目見えする子供が可愛過ぎる(笑)。(13年1月24日発表)

ちなみにボウイの新作『THE NEXT DAY』は完全なノン・プロモーション、というお達しがボウイ本人から出ていて、本人もレコード会社も一切プロモを行ないません。そのかわり、上記のような「ファン」が勝手に(素晴らしい)プロモ活動を行っているワケですね。最高です。それにしても、皆さん仕事が早いです。感動します。

*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。



 以前「ムソルグスキーの「古城」を使ったポップ・トラック、という特集をやったことがありましたが、今回はもっと幅を広げて、有名クラシック・メロディーを使ったポップ・ソング、という特集をやってみようと思います。ロンドンフィルと共演しちゃったディープ・パープルとか、松任谷由実との共演も話題となったプロコル・ハルムのような例もありますが、そういうドンズバの引用例ではなく、アレっ、コレ聴いた事あるなあ、的なモノに絞ってみました。(2013年3月1日更新分/選・文=大久)



The Doors / Hyacinth House (1971)

 まずはドアーズ。ジム・モリソンの生前最後の作品であり、4人組ドアーズ最終作でもある『LAウーマン』収録の「ヒヤシンスの家」は、間奏のオルガン部分でショパンの「英雄ポロネーズ」の有名なフレーズが登場します。やけにレイドバックした、初期ドアーズからは想像も付かないようなシンミリしたトラックになってますね。

KISS / Great Expectations (1976)

 KISSの大ヒット・アルバム『デストロイヤー』には、あの狂気のベーシスト、ジーン・シモンズが朗々とベートーヴェンのソナタのフレーズに併せて荘厳に歌い上げる、こんな曲が収録されていました。実際にこの曲にはブルックリンの少年少女聖歌隊がレコーディングに招聘され、コーラスで参加しています。


Billy Joel / This Night (1984)

 こちらもKISSと同じく、ベートーヴェンのピアノソナタ8番を使った曲で、最も有名な「クラシック使い」の1例でしょう。実際にビリー・ジョエルはアルバム『イノセント・マン』に寄せた自筆ライナーノーツで「ベートーヴェン使い」に関して触れていて、メロディーの楽譜まで掲載されていました(そういうのを知らない人は、パクリだなんだと口を尖らせますが)。

Muse / United States Of Eurasia - Collateral Damage (2009)

 最近ではお笑いイラスト芸人、鉄拳とのコラボでもお馴染みとなった、ブリティッシュ大袈裟ロックの若き担い手ミューズによる09年発表曲。楽曲はメドレー形式になっており、前半はまるでクイーンのようなド派手な作り、そして後半はピアノ&ストリングスでシンミリとショパンの「ノクターンNo.2」を用いたトラックに繋げています。

黒瀬真奈美 with 12人のヴァイオリニスト / 恋想曲 (2008)

 ショパン「ノクターンNo.2」と言えば、というワケで、割と新しめのJ-POPではこんな例もありました。06年度東宝シンデレラ・オーディションのグランプリに輝いた黒瀬真奈美によるこの歌は、リニューアル放映されたアニメ「ヤッターマン」のED曲にも採用されたのですが、彼女はすでに芸能活動を引退しちゃってます。バックは高嶋ちさ子が結成した「12人のヴァイオリニスト」ですが、高嶋氏本人は不参加。

Van Cliburn / Tchaikovsky Piano Concerto No.1 Mvt I-1 (1962)

 最後のオマケ。最近某携帯のTVCMでチャイコフスキーのピアノ協奏曲がガンガンON AIRされてますね。この曲をレパートリーとした最も有名な演奏家はヴァン・クライバーンで間違いないと思われます。なんといっても1959年、クラシック作品として初めてビルボードのLPチャート1位を記録し、その人気は当時「プレスリーを凌ぐ」とまで言われたほどですし。2013年2月27日、クライバーンが骨肉腫のため逝去しました。75歳でした。動画は62年、モスクワに“凱旋”したクライバーンのライヴ。


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