生前の本人と親交のあった本誌編集長・濱田氏を差し置いてこれをやるのは多少心苦しかったりもしますが、今回は映画音楽の巨匠ジョン・バリー(1933-2011)の特集です。しかし、今回ここでご紹介するのは、彼がまだ「映画音楽の巨匠」になる前のものばかり。そういえば昔、初期ビートルズを指して「首から便器をぶら下げたような下品なR&Rバンド」と形容した評論家がいましたが、ジョン・バリーも初期はだいたいそんなカンジ(笑)です。イケイケのロケンロー楽曲を中心に集めてみました。(2013年3月8日更新分/選・文=大久)
VIDEO John Barry Seven / You've Got A Way - Every Which Way (1957)
なんと、ジョン・バリーがロカビリーを歌ってます。上手いスねえ。そしてイケメンです。イカシてます。1957年、バリー24歳の時の映像で、この年ジョン・バリー・セヴンというバンドでデビューしているので、新人、ということになりますね。この時期のメンバーは1年程でバラバラになり、翌58年には(数はそのままながら)バンドのメンバーは一新されています。
VIDEO Roy Young with The John Barry Seven - She Said Yeah (1959)
ジョン・バリー・セヴンは59年から、イギリスBBCの音楽番組『DRUMBEAT』で専任バンドとして出演・演奏をしています(他にも、ボブ・ミラー率いるミラーメン、ダスティー・スプリングフィールドが参加していたラナ・シスターズ等もレギュラー出演してました)。こちらは同年、歌手ロイ・ヤングのバックでJB7が演奏した楽曲で、シングル発売された音源でもあります。
VIDEO The John Barry Seven / Beat Girl (1960)
50年代以降の「アングリー・ヤング・メン」を描いた映画のひとつ、『BEAT GIRL』の音楽を、ジョン・バリーは担当しています。これが彼にとって初めての映画音楽だったそうです。簡単に言えばイキガったオネエチャンが主役の不良映画で、映画は正直クソなわけですが、音楽は強烈です。ギタリスト、ヴィック・フリックの過激なリフにのったスリリングなテーマ曲は、アダム・フェイスが歌うヴォーカル版もあります。
VIDEO Adam Faith & John Barry Seven / Made You (1960)
アダム・フェイスはジョン・バリー・セヴンとのセットで売り出しが計られたイケメンのアイドル俳優兼シンガーで、『BEAT GIRL』にも出演、エディー・コクランの影響丸出しのR&Rを披露しています。彼がJB7との共演で発表した「POOR ME」(60年/全英NO.1)以降は、よりソフィスティケイトされたポップ・シンガーとなりましたが、ジョン・バリーが、オーケストラヒットやピチカート・リフを多用するようになったのもこの頃です。
VIDEO John Barry Seven / Hit And Miss (1960)
JB7自身の最初のヒット曲は、アダム・フェイス「POOR ME」をそのままインストにしたような「HIT OR MISS」(全英10位)でした。正式にはJB7の7人と、オケのメンバー4人との演奏、という意味で、アーティスト・クレジットは「JOHN BARRY 7 + 4」という名義でしたが。ここでも主役はヴィック・フリックのギター・リフでした。その後グループは62年にあの有名な「JAMES BOND THEME」を生み出し、以降は音楽性も活動形態も一変することになります。
VIDEO Serge Gainsbourg / Ballade de Melody Nelson (1971)
最後にオマケの1曲。キャリア的に大成功を謳歌した60年代のジョン・バリーではありますが、60年代に彼のもとを離れた人が2人います。女優ジェーン・バーキン(68年に離婚)と、JB7のステージリーダーで「JAMES BOND」でもギターを弾いたヴィック・フリック(64年脱退)です。ヴィック・フリックはその後売れっ子セッションマンになり、また自身も多くのTV/映画用音楽、ディスコ音楽等を制作したりしてますが、何の因果かこの2人は71年セルジュ・ゲンズブール「メロディ・ネルソンのバラード」で共演してるんですよね。…世界狭すぎ。
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