てりとりぃ放送局アーカイヴ(2013年3月29日〜2013年4月12日)

 アンディー・ウォーホルの周辺にタムロした美しい女性達は数多くいましたが、その中でも強烈な個性とムードを漂わせた人がニコ(彼女がウォーホルと出会ったのは、ボブ・ディランの手引きによるものでした)。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの最初のアルバムで素晴らしい歌声を披露し、以降デカダンなロック・シンガーとして知られますが、今回は彼女がまだヴェルヴェッツに参加する前の、60年代のキャリアを集めてみました。(2013年3月29日/選・文=大久)


La Dolce Vita (1960)

 38年ドイツ生まれ。幼少期はハンガリーで育った彼女は、50年代からベルリンでモデル活動を始め、その後フランスに移り「ヴォーグ」や「エル」誌のモデルとして活動していました。TVCFに出演したのをきっかけに、女優業もこなすようになった彼女は、60年発表のフェリーニの代表映画「甘い生活」に「ニコ役」で登場。美しくも奔放な役柄を演じています。

Strip Tease (1963)

 63年、ジャック・ポワトルノー監督によるフランス映画「STRIP TEASE」に出演するニコ。映画はタイトル通り、ストリップ劇場の踊り子さん達を描いたものですが、音楽はセルジュ・ゲンズブール&アラン・ゴラゲールで、主題歌をジュリエット・グレコが歌った7インチ盤も発売されていますが、やはり何と言ってもジャケのニコが素敵です。

Nico / Strip Tease (1963)

 上記映画の主題歌は、ジュリエット・グレコ版が収録される前に、主役のニコによるヴォーカル版が残されています。しかし「ドイツ語なまりのフランス語がよろしくない」というゲンズブールの判断で不採用となりました。本格派、の名に恥じないグレコ版とは違って、ムーディーでイージーなニコ版も最高なのに。ニコ版は現在ゲンズブールの3枚組コンピで入手可能。

Terry Me Va - TVCF (1964)

60年代までのモデル時代の彼女は、それこそヨーロッパ中を席巻するといえそうな活躍ぶりなわけですが、こちらはスペインで放送された、コニャック/ブランデー「TERRY ME VA』のTVCF。動画のタイトルで「59年」とクレジットされていますが、そちらは間違いですね。この役はオランダの女優さんが当初キャスティングされていたものの、急遽ニコに代役がまわってきた、とのこと。


Nico / I'm Not Sayin' (1965)

 65年、ニコはローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズの手引きによって渡英、アンドリュー・オールダム+ジミー・ペイジのプロデュースによって英語圏で歌手デビューします。曲はゴードン・ライトフットのカヴァーですが、フォーク・シンガーというよりは(マリアンヌ・フェイスフルがそうだったように)アイドル・シンガーとして売り出されています。動画はロンドンで撮影されたこの曲の公式PV。

Bill Evans / I Fall in Love Too Easily (1962)

 最後はオマケ。モデル時代に多くの仕事をこなした彼女ですが、中でも世界的に最も有名なのは、62年に発表されたビル・エヴァンス・トリオのバラード集『MOON BEAMS』のジャケットでしょう。余談になりますが、最近のジャズ・アルバムで「モデルを使ったジャケット」て無くなりましたよね。ニコのような美しい人がいなくなったから、なんでしょうか?判りませんけど。

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 「デュエット」。二重奏、といってしまうとなんか少しだけ安っぽいボキャブラリーな気もしますが、同じ意味のハズです。でも、実力者同士の共演ともなれば、1+1を2にするか10にするか、はたまたゼロにしてしまうか、というスリルに溢れた行為でもあります。今回は「ウォッ、こんな動画が残ってましたか、感謝感激」というカンジのデュエット動画を集めてみました。(2013年4月5日更新分/選・文=大久)


Caterina Valente with Mike Douglas / Corcovado (1971)

71年4月5日から5夜連続で、全米を代表するエンタメ番組「マイク・ダグラス・ショウ」に出演したカテリーナ・ヴァレンテ。ホストのマイク・ダグラスと「CORCOVADO」をデュエットしています。実はマイク・ダグラスはこの時期しょっちゅう自分の番組で自分の歌を披露してたワケですが、ジョン・レノンが登場した際に目の前で「MICHELLE」を絶唱したという結構勇敢な(笑)司会者でもあります。それにしてもカテリーナのハイトーン・ボイス。素晴らしいですねえ。

Brigitte Bardot & Sacha Distel / Le Soleil De Ma Vie (1973)

ブリジット・バルドーは1973年、映画『ドンファン』の出演を最後に芸能活動から引退した、ということになってます。そんなこともあって、彼女が録音した音楽作品としては最後のものといわれているのが、サッシャ・ディステルのTV番組に出演し、スティーヴィー・ワンダー「YOU'RE THE SUNSHINE OF MY LIFE」のフランス語カヴァーを披露したこちらのデュエット。その後B.B.は動物愛護運動にご熱心となり、あのシーシェパードの支援をしたり、てことで今は知られていますね。

Marc Bolan & Cilla Black / Life's A Gas (1973)

自身の冠番組「シラ・ブラック・ショウ」にて残された、マーク・ボランとシラ・ブラックの共演曲。シラ・ブラックは63年のデビュー以来変わらぬ「英国を代表するセレブ・タレント」ですし、今もTV番組で活躍していますが、マーク・ボランとのデュエットはまさに「美女と野獣」的な怪しさに溢れてますね。そんな二人の後ろでうっすらと影だけで登場してるブキミな人物は、勿論Tレックスのパーカッショニスト、ミッキー・フィン。いつものことですが、カワイソス。

David Bowie & Marianne Faithfull / I Got You Babe (1973)

73年、絶賛モデルチェンジ中のデヴィッド・ボウイと、当時絶賛人生転落中(笑)のマリアンヌ・フェイスフルのデュエット。TV番組「1980フロア・ショウ」での共演ですが、実はこの動画では確認できませんけど、まるで修道院の尼さんみたいなマリアンヌの衣装は、背中が全部(お尻の上まで)パックリ開いたドレスとなっており、観客をドキリとさせた、という逸話も残っています。まあ、マリアンヌといえばアラン・ドロンと共演した「GIRL ON A MOTORCYCLE」(68年)でのエロエロなジャンプスーツ姿でも既にその「魔性」ぶりはお馴染みですが。

Tony Bennett & Lady Gaga / The Lady Is A Tramp (2011)

 最後はデュエットの帝王トニー・ベネットによる企画版『DUET 2』から。同作一番の目玉がこちらのレディー・ガガとのデュエットでした。さすがガガ様。歌、最高に上手いですよね(髪の色も最高)。曲名の「女性」はそのままガガ様の名前にかかっているわけですが、TRAMP=アバズレ、なので(そういえば東京事変がこの曲をカヴァーしたときは「その淑女ふしだらにつき 」という邦題が付けられていました)まさにうってつけの役どころ、でしょうか。
この曲のプロデューサーでもあり、ビリー・ジョエル作品他多くの名盤でグラミーを15回も受賞したという名プロデューサーのフィル・ラモーンが、2013年3月30日に亡くなりました。79歳でした。合掌。


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 当方はエリック・サティに関して偉そうな講釈をタレるほどの知識を持ち合わせていません。でも鍵盤触る機会があると、つい押さえちゃうのがあのコードだったりしますが(笑)。今回は誰もが知るあの有名なサティ「ジムノペディ1番」を、ポップ・フィールドの人達はこんな風に料理してました、というサンプル集です。しかし改めてチェックしてみたら、サティを引用してる人/曲って膨大な数があるんですよね、機会があれば今回泣く泣く選に漏れたヒューバート・ロウズ、ゲイリー・ニューマン、エンドルフィン等のカヴァーとか、インドネシアのSOREとかも是非チェックしてみて下さい。(2013年4月12日更新分/選・文=大久)


Blood, Sweat & Tears / Variations On A Theme By Erik Satie (1st And 2nd Movements) - Smiling Phases (1969)

 69年、既にアル・クーパーの去ったあとのブラッド・スウェット&ティアーズによるセカンド・アルバムは、冒頭とエンディングを「ジムノペディ1」のフレーズで括ったアルバムでした。よりポップな世界観を披露し、「SPINNING WHEEL」という大ヒットも生まれたこのセカンドは、ブラス・ロックというジャンルの筆頭に掲げられる名作として有名ですよね。

Movement 98 / Joy And Heartbreak (1990)

 サティ使いの最も有名な例のひとつですが、そんなにヒットした、というワケではありません(全英27位)。ポール・オーケンフォルドというプロデューサー(現在はトランス系DJとしても活躍)が、ラヴァーズ・レゲエの歌姫キャロル・トンプソンをヴォーカルに迎えたユニット、ムーヴメント98によるヒット曲。んー、もしかして「グラウンドビート」っていう言葉ももうすぐ死語になっちゃうんでしょうか?だとしたら少し寂しいですねえ。

Gloria Estefan / Don't Let The Sun Catch You Crying (1994)

 94年に発表されたグロリア・エステファンのカヴァー・アルバム『HOLD ME THRILL ME KISS ME』収録の、ジェリー&ペイスメイカーズのバラード・カヴァー。オリジナルは64年発表で、ジョージ・マーティンのプロデュースが冴えるオケのアレンジが素敵なヴァージョンですが、グロリアはサティ「ジムノペディ1」を組み合わせてシンミリと盛り上げるというアイデアを披露しています。

Janet Jackson / Someone To Call My Lover (2000)

 ジャネット・ジャクソン、2000年のアルバム『ALL FOR YOU』からのシングルカット曲で、プロデュースはもちろんジャム&ルイス。いつも通り最先端R&Bアレンジを取り入れるチームですから、いわゆるチキチキ系R&Bプロダクションですが、アメリカの72年のヒット曲「VENTURA HIGHWAY」のギター・リフ、そしてサティ「ジムオペディ1」のメロディーをサンプリングしている、という超大ネタのダブル使い、というオケになっています。

Crue-L Grand Orchestra / Gymnopedie No.1 (2005)

 こちらはディミトリ・フロム・パリのプロデュースでコンパイルされたオムニバス盤「CHANSON A LA MODE(おしゃれシャンソン)」収録曲で、演じてるのはあのクルーエル・グランド・オーケストラ。なんとダブ・ミックスでサティ「ジムノペディ1」を料理してしまうというのがクルーエル&ディッミトリらしいですね。これを「お洒落」と呼んでしまうのは危険な気もしますが(笑)、アルバムがディズニーのキャラ企画コンピなのだから、まあ仕方ありませんね。
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