てりとりぃ放送局アーカイヴ(2014年6月13日〜6月27日分)

 先日深夜TV「月曜から夜ふかし」にて“ブラジルの専門家”として出演され、NEWS手越と関ジャニ村上のどちらがブラジル女性に受けるか、というヘビーなテーマを論評されていた麻生雅人さんはとてもクールな語り口調でしたが(笑)、世界中のサッカー・ファンはそんなにクールではいられません。とうとう4年に一度のW杯が始まります。というわけで今回はブラジル特集。しかも「ブラジル以外の国で作られたブラジル音楽」です。実は「ブラジル以外の国で作られたブラジル音楽」を特集したディスクガイド本が既に麻生雅人氏の監修で存在しますが、そちらにも掲載されなかった音楽をここでは特集したいと思います。(2014年6月3日更新分/選・文=大久)


Spiller / Batucada (1999)

 書籍「ブリザ・ブラジレイラ」に載ってない音楽は何かといえば、クラブ・ミュージックです。ブラジリアン・ハウスと呼ばれる音楽の大半は欧州産ですが、それを紹介したいなと思いまして。まずはこちら。「Groovejet」という全英1位を記録した大ヒット曲を持つSPILLERが99年に発表した、マルコス・ヴァーリの大ヒット曲のハウス・カヴァー。ブラジリアン・ハウスのド定番、ですね。

Tanga Chicks feat. Dimitri & Tom / Brazil Over Zurich (2000)

 ハウスの名門サブリミナルからのリリース。この曲中何度もループでお目見えする混声のチャント(コーラス)が強調されていますが、このコーラスはモンド・グロッソ「TREE, AIR AND RAIN ON THE EARTH」からのサンプリングです。それにしてもベースが強烈、ですね。

Trio Mafua / Incompatibilidade de Genios (2001)

 ジョアン・ボスコの初期(70年代)の有名曲として人気の高い曲ですが、イタリア出身の3人組トリオ・マフアによるハウス・カヴァー。同曲のアルバム・バージョンはジョイスあたりを彷彿とさせるアコースティック版なのですが、当方的にはどうしてもこっちのヴァージョンを強力にプッシュしたくなりますね。。


Bah Samba / Portuguese Love (Phil Asher mix / 2004)

 バー・サンバ。初期にはESTEREOというハウスの名門レーベルで作品を発表し、瞬く間に同レーベルの看板スターとなりましたが、こちらはBKOというレーベルに移籍して発売されたアルバムより。UKハウス・シーンのトップDJ、フィル・アッシャーによるリミックス・ヴァージョン。

Satoru Shionoya / Brazilian Rhyme (Remix / 1999)

 実は以前にも同曲を掲載しましたが、その時はインスト版でした。で、こちらがヴォーカル版。ご承知の通り、ピアニスト塩谷哲氏によるEW&Fのカヴァーですが、ヴォーカルを取るのは露崎春女、そしてこの強力なリズム・プロダクションを担当したのはDEF MIXのサトシ・トミイエ。最強ですね。

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 先だってシックのバーナード・エドワーズを特集した際にシスター・スレッジ「THINKING OF YOU」を紹介しましたが、このあまりにもキュートで愛らしいグルーヴィー・ナンバーは世界中で大人気。とくに若い世代のクラブ・ミュージック・ファンに愛されている模様です。で今回はその「THINKING OF YOU」の聴き比べです。今をときめくケイティー・ペリーや西野カナさんにも同名の曲がありますが、そんな事実は無視して構いません(笑)。やっぱTHINKING OF YOUといったらコレなのです。(2014年6月20日更新分/選・文=大久)


Maureen Walsh / Thinking Of You (Dreaming Of You Mix/1990)

 英国レア・グルーヴ・ブームの総本山的役目を担ったアーバン・レーベル発のグラウンドビート・バージョン。シンガーのモーリーン・ウォルシュさんに関してはほぼ資料がありませんが、以前紹介したムーヴメント98「JOY & HEARTBREAK」などと並んで、90年初頭の「レゲエ・マナーに裏打ちされたグラウンドビート」のテイストを満喫できるバージョンになってますね。

Eclipse / Make Me Love You (1999)

 イタリア発ハウス系クリエイター・チーム、ビニー&マルティーニによるプロジェクト、エクリプスによる豪快サンプリング音が楽しめるリメイク・ハウス・ヴァージョン。こちらの曲もイギリスでヒットを記録しています。フィルターハウスの技法が用いられていますが、それでもこの強烈に耳にのこるギターカッティングはやはり最高ですよね。

Blacknuss / Thinking of You (2000)

 もちろんローランド・カークとはなんの関係もありません。が、やっぱりカークのアルバムからプロジェクト名を引用したとのこと。スウェーデン出身のクラブ/フュージョン・ファンク・プロジェクト、ブラックナスによる王道アレンジのカヴァー。いわゆるインコグニート路線とも言えそうな、爽やかでコンテンポラリーR&Bにも目配せしたオサレ・アレンジにグッときます。


Paul Weller / Thinking Of You (2004)

 以前にも「英国でこの曲の人気は絶大」と書きましたが、79年のシスター・スレッジ・オリジナル盤はチャート11位がピークでした。で、04年、ウェラー先生が「半ばやっつけ仕事的に」作ったカヴァー・アルバム「STUDIO 150」の目玉トラックとなったこちらはチャート18位を記録。でもね、売り上げとかはどうでもいいんです。ウェラー先生がこの曲を好きだった、ということがわかっただけで嬉しいモンなんです。


Mike Francis / Thinking of You (2011)

 エイミー・スチュワートとも共演歴(1985年!)のある、イタリア出身のニュージャズ/ソウル・シンガー、マイク・フランシスによるカヴァー。2000年以降チルアウト系のクラブ・ミュージックに接近し、ラウンジーでスムースなオサレ・ビートを披露していましたが、彼は2009年に47歳で他界しています(肺がん)。この曲は彼の死後リリースされたもの。



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 「パーフェクト・デイ」。ルー・リード一世一代の名曲っスね。今回はその名曲のカヴァー聴き比べです。もちろん当方監修「グラム・ロック本」の制作余韻の中でこのネタを思いついたわけですが(笑)、そりゃあイギー・ポップみたいな踊りをクネクネと踊りながら荒っぽく「VISIOUS」を歌う金髪&レイバンの彼もカッチョイイんですけど、ルー・リードといえばやっぱりコレ、ですよね。(2014年6月27日更新分/選・文=大久)


Glenn Gregory with BEF / Perfect Day (1982)

 ブリティッシュ・エレクトリック・ファウンデーション(BEF)はヒューマン・リーグの初期メンバーで、後にヘヴン17を結成するマーティン・ウェアの別プロジェクト。個人的に大好きなユニットなのですが、曲毎にゲストを迎える単発プロジェクトの様相で、過去30年間に3枚しかアルバムを発表してません(笑)。そのBEFの最初のアルバムに収録されたカヴァー。歌ってるのはヘヴン17のグレン・グレゴリー。

Duran Duran / Perfect Day (1995)

 以前も一度取り上げましたが、デュラン・デュランが95年に発表した名作カヴァー・アルバム『THANK YOU』収録ヴァージョン。ジャケットでも(ボブ・ディランと並んで)デカデカとコラージュされたルー・リードの顔はやっぱりインパクトありますもんね。このカヴァーがヒット(英28位)をきっかけにしたのでしょうか、あの映画『TRAINSPOTTING』(96年)ではオリジナル版が使用され、イギリスで「PERFECT DAY」はちょっとしたブームが起こりました。

Various Artists / Perfect Day (1997)

 イギリスBBCが陣頭指揮を取るかたちで制作されたチャリティー・シングル「PEREFECT DAY」は「CHILDREN IN NEED(助けが必要な子供達)」基金のために録音されたもので、4億円もの金額が同基金に寄与されています。出演アーティストを書くスペースがありませんが、スザンヌ・ヴェガ、イアン・ブロウディー(ライトニング・シーズ)、トム・ジョーンズなんかが出演するあたりが新鮮ですね。同曲はクリスマス・ヴァージョンも作成されました。


Patti Smith / Perfect Day (2007)

 パティ・スミスとルー・リード。共に70年代のニューヨークを代表するアーティストですね。実はルー・リード本人もこれに遡る事4年前の2003年、自信のアルバム『RAVEN』にて再録ヴァージョンを残しています。ちなみに余談ですが「PERFECT DAY」はあの「ワイルドサイドを歩け」のシングルB面曲でした。なんという恐ろしいシングル盤でしょうか。


Susan Boyle / Perfect Day (2010)

 最後はスーザン・ボイル。別に彼女のファンというワケではないのですが、昨今話題になる機会の多い彼女ですから、やはりその選曲には注目しちゃいますね。実は当初、ルー・リード側は彼女がこの曲をカヴァーする許可を認めず、一度この企画はポシャっていて、スーザン・ボイルは同曲を歌う予定だったTV出演もドタキャンしてます。数日後ルー・リードは「聞いてないよ、(不許可を出したことすら)何も知らない」という弁明をしていますが。後に上記した「CHILDREN IN NEED」のTV特番に出演した彼女は同曲を歌いました。



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