てりとりぃ放送局アーカイヴ(2014年11月7日〜11月21日分)

 ジョン・ライドン(PIL)やジェフ・バックリー、U2のTHE EDGE等も夢中になったレッド・ツェッペリンの代表曲「KASHMIR/カシミール」。ええ、もう知らない人はどこにもいないというくらいの有名曲ですね。オリジナルは75年発表、8分以上にもわたる長尺曲で、そのブッ飛びまくったアレンジは今も斬新さを失っていません。インドぽい響き、とペイジ先生が言ってる通りDADGADチューニングで演奏された曲の筆頭にも挙げられますが、ZEPにしては例外的に管・弦楽のオケを導入して録音された曲でもあります。で、今回はその「KASHMIR」の聴き比べです。90年代以降のカヴァーものを中心に集めてみました。(2014年11月7日更新分/選・文=大久)


Pop Will Eat Itself / Ich Bin Ein Auslander (1994)

 グウの音も出ない程至極正論ともいえる名前を持った英インダストリアル・ロックの代表グループによるこの曲は「KASHMIR」のフレーズを丸々引用して作られた曲です。「オラは外国人」という意味のタイトルに改題されたこの曲はシングルとしてもヒットを記録。後にドイツのDIE KRUPPSという人気バンドにカヴァーもされています。
Ofra Haza / Kashmir (1995)

 一気に気分も変わりますが(笑)イスラエル出身の歌姫、オフラ・ハザによる95年のカヴァー。ええ、この雰囲気のほうが、ロバート・プラントの考える世界観に近いハズですよね。とはいえ実はロバート・プラントはこの曲の歌詞を「サハラ砂漠をウロウロしながら」思いついたのだそうですが(笑)。80年代後半以降の「ワールドミュージック・ブーム」の主軸でもあったオフラ・ハザですから、こういう曲はお手の物、かもしれませんね。

Puff Daddy feat. Jimmy Page / Come With Me (1998)

 恐らく「KASHMIR」ネタで一番有名な曲。エロエロな「BETWEEN THE SHEETS」で幕を開けるこの曲は、既にご承知の通り98年に米ハリウッドで映画「ゴジラ」が制作された時のテーマ曲となりました。全米1のセレブ(当時)だったパフィー兄さんですから、サンプリングなんてケチなことは言わずここはゴージャスに。本物のジミー・ペイジを引っぱり出すことに成功し、本作での共演を果たしています。アルバム・プロデュースはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロで、本作でもベース他で演奏にも貢献しています。
Escala Performing Kashmir on BGT (2008)

 「ブリテンズ・ガット・タレント」。今も英国で大人気を誇るオーディション番組ですね。そこで「KASHMIR」を披露する若きお姉さん4人組。もちろんこの演奏は大評判となったのですが、実はもう大昔からロンドンでは休日に街角やマーケットに繰り出せば、路上でこういう曲をカルテットで演奏するのを目にする機会がしょっちゅうあります(演奏するのは主に学生さんなんかです)。ではこの4人組は一体なぜ評判になったか。もちろん「見た目」です(笑)。
Koby Israelite / Kashmir (2013)

 テルアヴィヴ出身、もともとロック畑で音楽活動を始めましたがマルチ・プレイヤーになったのを機にジャズを学び、以後作・編曲家、コンダクターとして活躍するようになったコービー・イズレライト(註:ISRAELITEはイスラエル人の意味で、ここでは英発音表記に倣ってカナ表記してます)。90年代にジョン・ゾーンのレーベルから作品をリリースしていることで知られると思います(とはいえジョン・ゾーン氏はもうすっかり高円寺民ですけどね。笑)。こちらは昨年発表された「KASHIMIR」のカヴァーで、コービー氏はアコーディオンでリードを取っています。


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 月日が経つのは早いですねえ。恒例企画の時期が今年もやってきました。イギリスの王手デパート、ジョン・ルイスのクリスマスシーズンCMの2014年版新作が発表されましたので、今年もその特集をやってみたいと思います。ちなみに2011年版はこちらを、2012年版はこちらを、昨年の2013年版はこちらを参照していただければ幸いです。(2014年11月14日更新分/選・文=大久)


John Lewis Christmas Advert 2014 - MontyThePenguin

 発表後わずか6時間で100万再生もされていますね。すごいです。で、ご覧のようにペンギンの「モンティー」キャラを生かしたCMとなっており、ちょっと商売っ気も強く感じてもしまいますが(CM発表前からジョン・ルイスは既にこのペンギン・キャラを使ってセールを行なっていたので)、それはともかく使用曲は「REAL LOVE」。オリジナルはビートルズの95年発表(!)曲、そして歌っているのは現在大人気のイケメン、トム・オーデル。
Tom Odell / Another Love (2012)

 今年のブリット・アワードにもノミネートされた若干23歳のヴォーカリストですが、ええ、まあ彼がジョン・ルイスのCMに起用されるのも判る気がしますよね。こちらの曲の再生回数はトンデモないことになっています。ちなみに彼を発掘したのはリリー・アレン嬢ですが、彼女いわく「まるでデヴィッド・ボウイのようなムードを持った若者」とのこと。えーっと、その点においては当方は一切同意できませんね(笑)。

Beatles / Real Love (1995)

 「アンソロジー」が発表された際に「ビートルズの新曲」として制作されたシングル第2弾(第1弾は「FREE AS A BIRD」)。ジョンのデモにジョージ、ポール、リンゴが音を被せることで楽曲の体をなんとか作ったものではありますが、個人的には既にビートルズというよりもジェフ・リンのプロジェクトのように感じてしまいます(特に音)。そんな個人的感想とは関係なく、世界中のビートルズ・ファンがこの曲に驚喜したのは既にご承知の通りかと思われます。

John Lewis 150th Anniversary (2014)

 さてさて、実はこの英国のデパート、ジョン・ルイスは2014年に創業150周年となりました。こちらはそれを記念して制作されたCM。「150年間、あたながじっとしていたわけでは無いように、私たちもじっとしていませんでした」というコピー文とともに、ジョン・ルイスの変遷を象徴するような内容のCMとなっています。曲はキンクスの「THIS TIME TOMORROW」のカヴァーで、歌っているのは元スーパーグラスのギャズ・クームス。
The Kinks / This Time Tomorrow (1970)

 で、上の「150周年CM」で使われている曲は、もう誰もがご承知かと思われますがキンクスの1970年発表曲。「ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組 第1回戦」というアルバム・タイトルの是非はともかくとして(笑)、この曲って「家にジッとしながら明日を夢想する」ことを日課にする人の歌なんですよね。皮肉ですねえ。


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 この映画を評したとある方の個人ブログに「まったく、ザ・スミスのファンってのはホントにどうしようもねえな」という文がありました(笑)。苦笑の2文字をあらゆる行間に詰め込んだその方の映画評は個人的にとっても参考になったのですが、今回はその「どうしようもねえな」と言われてしまった09年公開のボーイ・ミーツ・ガール映画「(500)日のサマー」の特集です。えーと、ハイ、筆者は大のザ・スミス・ファンなので、ホントにどうしようもねえ部類の人間です。故に、この映画大好きです(笑)。(2014年11月21日更新分/選・文=大久)


500 Days of Summer - Official Full Length Trailer

 まずは映画のトレイラー映像を。これは本国のトレイラー映像でして、一応日本公開用の日本版トレイラーってのもあるんですが、そちらはほとんど映画の内容を伝えていない不可思議な予告映像でした。なんであんなモン作ったんでしょうね。ほんと不思議です。エレベーターのシーンはこの映画がとんでもない胸キュン映画であることをドンズバで表現しているのですが。とはいえ「THERE'S A LIGHT」を歌う女の子が実際にいたら、ちょっとドンビキしてしまいそうですが。

500 Days Of Summer - You Make My Dreams

 ザ・スミスの楽曲が使われるくらいなので英国的なシミッタレ映画と思われがちですが、H&Oをこういう風に使う辺り、ちゃんとした映画(笑)になってます。詳しくは他所をあたっていただきたいのですが、ストーリーはボーイ・ミーツ・ガールの王道映画です(ただし時間軸はグチャグチャに編集されていますが)。で、ストーリー中ウキウキになった主人公は妄想の世界でミュージカルを繰り広げてしまいます。まったくオトコノコってのはどうしようもないダメな生き物ですねえ(笑)。
(500) Days of Summer Bank Dance Music Video

 この映画は「ミュージカル映画」ではないのですが、要所要所でダンス・シーンが挿入されます。こちらは映画本編ではカットされたシーンですが、ブルーレイが発売されたときにボーナス収録された銀行でのダンス・シーン。曲はSHE & HIMというユニットによるもので、このユニットのボーカルは映画の主演女優ズーイー・デシャネル嬢本人です。
She & Him / Please, Please, Please Let Me Get What I want

 劇中でも使用されたザ・スミス「PLEASE PLEASE PLEASE〜」のカヴァーは、上述のSHE & HIMのバージョンで使われました。映画の中でも表現されていますが、結局この映画の最大の悲劇は「男の子と女の子では、欲しいものは違う」ということなんですよね。この映画で女性ボーカル版が使用されたという時点で、この複雑な映画の悲しい結末が予見されています。
She & Him / Don't Look Back

 映画見るのはメンドクセエ、という方はこちらでも聞いていただいて内容を把握いただければ助かります。で、こちらの動画は上述SHE & HIMのPV。曲は映画とは関係ない曲なんですが、後ろを向かない、と歌う彼女はやっぱり素でもそういう女性なんでしょうか。女優であり歌手活動も行なうズーイー・デシャネルはあまり日本人ウケするルックスではなさそうですが、当方的にはドンズバで胸キュンするタイプです。


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