てりとりぃ放送局アーカイヴ(2014年12月19日〜2015年1月2日分)

 以前「PERFECT DAY」聴き比べをやったときにも名前を出しましたが、ブリティッシュ・エレクトリック・ファウンデーション(BEF)の特集をやってみます。BEFはヒューマン・リーグの初期メンバーで、後にヘヴン17を結成するマーティン・ウェアによるプロジェクトですが、自身名義の作品よりもプロデュース業で大きな成功を収めた大物クリエイターです。多少のゲテモノ臭がありつつも(笑)、いつも「こう来たか!」と感心させられるその斬新なお仕事ぶりを集めてみました。(2014年12月19日更新分/選・文=大久)


B.E.F. / Groove Thang (1981)

 BEF名義初の作品ながら、その後のエレクトロ・ミュージック(昨今ではEDMなんていうマヌケな言葉がアチコチで使われるようになりましたが、アレ一体なんなんでしょうね。理解に苦しみます)に多大な影響を残したテクノ・トラック。この曲はマーティン・ウェアがヘヴン17を結成した時にヴォーカル入りヴァージョンも制作されました。
B.E.F. / The Secret Life Of Arabia (1982)

 日本ではヘヴン17=ニューロマの流れで語られる事が多い中、英国ではヘヴィーなエレクトロ・ファンクとして現在もB.E.F.のほうが話題に上がります。こちらはB.E.F.がコンパイル&リミックスした編集盤に収録されたB.E.F.自身のトラックで、デヴィッド・ボウイ77年楽曲のカヴァー。ヒステリックなヴォーカルはアソシエイツのビリー・マッケンジー。

Tina Turner / Let's Stay Together (1983)

 さて、あのティナ・ターナーがなぜか80年代に大復活し世界中を熱くさせたことをご記憶の方も多いと思います。その大復活の発端はこのアル・グリーンの名曲カヴァーでしたが、同曲をプロデュースしたのが、件のマーティン・ウェア。ティナはこれ以前にもBEF楽曲にゲスト参加したことがあり、その縁でのプロデュースだったようです。
B.E.F. feat. Lalah Hathaway / Family Affair (1991)

 なんと10年ぶりに発表されたBEF名義のセカンドは、豪華ゲスト陣を迎えたゴージャスなUKソウル作品でしたが、こちらはダニー・ハサウェイの娘さん、レイラ・ハサウェイをリード・ヴォーカルに迎えたトラックで、もちろんスライ&ファミリー・ストーンの名曲カヴァー。彼女はこの前年に歌手デビュー、その時は日本でのみチラっと話題になった程度でしたが、この曲はUKトップ40入りするヒットに。
B.E.F. feat. Billy Mackenzie / Free (1991)

 もう既にお気づきかと思いますが、マーティン・ウェアさんは70年代ソウル大好き人なんですよね。というわけで70'Sソウル大定番のカヴァー。デニース・ウィリアムス「FREE」をカヴァーしていますが、ここでもヴォーカルには、丁度この頃ダンス・ミュージックに入れ込んでいたアソシエイツのビリー・マッケンジーを起用(余談ですが、彼は97年に自殺しています)。
B.E.F. / I Wanna Be Your Dog (feat. Boy George / 2013)

 元々多作家ではないBEFですが、2013年、なんと20年振りに新作『DARK』を(ダンス・ミュージックの最先端レーベル、WALL OF SOUNDから)発表しやがりました。そして相変わらずそちらも最高の出来でして、衝撃です。こちらは同作に収録されたストゥージズのカヴァーで、ヴォーカルにはあのボーイ・ジョージを迎えて録音されています。


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 本年最後の更新です。1年のご愛顧、感謝です。さて、そんなことは一切気にせず今週も放送局は通常営業。今回はデヴィッド・ボウイさんの名曲「REBEL REBEL(愛しき反抗)」の聴き比べをやります。74年の発表以来40年にわたって、ボウイの名が出る際たいてい一緒に流される程の代表曲であり、同時に「ロック」そのもののアイコニックな曲ですからカヴァーも沢山残されています。お楽しみいただければ幸いです。(2014年12月26日更新分/選・文=大久)


David Bowie / Rebel Rebel (1974)

 オリジナル。この映像は半ば公式PVのように出回っていますが、実際には同年2月7日、オランダのTV番組出演時のもの。グラムロック時代のラスト・シングル(発表当時「ストーンズの『サティスファクション』をニール・ヤングがカヴァーしたような曲」とメディアに評されました)、カウンターカルチャーとしてのロックの歴史を見事にギュギュっと4分に凝縮。余談ですが、先日THE ポッシボー中野サンプラザ公演でのロビンちゃんを見たときに「あ、74年のボウイの衣装だ」と思った当方はやはり愚か者(笑)。
DNA featuring Jazzi P / Rebel Woman (1991)

 スザンヌ・ヴェガ「TOM'S DINER」のグラウンドビート・カヴァーで一躍時の人となったクリエイター・チーム、DNAによるシングル曲。ラップをかましている女性は同年発表のカイリー・ミノーグのヒット曲「SHOCKED」でもラップを担当したジャジーP=ポ−リン・ベネット。実は彼女は今年英国のTVリアリティー番組(=セミドキュメントのバラエティー)に参加し、久々に脚光を浴びています。

Rickie Lee Jones / Rebel Rebel (1993)

 前作のカヴァー・アルバムの大ヒットを受けて発表されたリッキー・リー・ジョーンズの93年作収録曲。動画はTV番組出演時のライヴ映像ですが、ご覧のようにレイドバックしたホンワカなギターを奏でているのはブライアン・セッツァー。またバックボーカルで眼鏡をかけた美人さんが歌っていますが、彼女はシド・ストロー。両人ともリッキー・リーのアルバムにも参加しています。
Dead or Alive / Rebel Rebel (1994)

 歌詞の冒頭から宣言されているように、クロスジェンダー・カルチャーを扱ったこの曲ですから、デッド・オア・アライヴのピート・バーンズがこの曲を歌うのは至極真っ当な流れですね。ピート・バーンズが長年の彼女&彼氏と3人で同居していたことは有名(結局近年双方と別れて、最近年下の男の子と同性婚しました)ですが、彼のその後の凋落振りを追った日本のドキュメント番組ではその点に触れることもなく、事実とはちょっと離れた構成になってて、番組として懸念が残りましたねー。
Le Minimoys Band / Rebel Rebel (2010)

 リュック・ベンソン監督で、2006年以降シリーズとして制作されているフランスのアニメ・ファンタジー映画『アーサーとミニモイの不思議な国』。そこに登場するバンド「ミニモイズ・バンド」によるカヴァーです。一応映画シリーズのサントラとしてアルバムが2枚発売されており、そのVOL2(ディスコ曲のカヴァー集)収録曲。ディスコ・アルバムなのになんでこの曲やねん、とは思いますが、ボーナストラックとしてオマケ収録されてました。最高ですね。ちなみにこの動画、公式にアップされたものですが、何故「IGGY POP」と名付けられているかは不明(あきらかに無関係)。
Iggy Pop & Lenny Kravitz / Rebel Rebel (1998)

 そのイギー・ポップによるカヴァーですが、ご覧のようにレニクラとのデュエットで、演奏もレニクラ・バンドが担当。98年のVH1ファッション・アウォードでのTVライヴ映像です。レニクラさんが太マッチョになってしまったのも怖いですが、イギーが相変わらずムキムキ細マッチョなのはもっと怖いです。ちなみにドラムを叩いている女性も5年前(『自由への疾走』発表時)と比べてかなりファットになられていますが、彼女はシンディー・ブラックマンというジャズ畑出身のドラマーで、2010年にカルロス・サンタナと結婚(!)しました。やるなサンタナ爺(笑)。


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 新年あけましておめでとうございます。いやあ2014年も色んな事がありましたよね。世間や身の回りで何が起こっても動じない人間となるのか、それとも常にアンテナを張って出来事に敏感に反応し咀嚼する人間となるのか、まあ人それぞれかとは思いますが、先日ついにあの話題の「メロンパンの皮焼いちゃいました」を口にし、その衝撃がいまだに尾を引く当方はやはり後者の類いなのかも。さてさて、新年一発目の放送局はまたしても「ボウイ特集」。10年間ヒキコモリだったボウイさんが2014年何をやらかしたか、をまとめてみました。(2015年1月2日更新分/選・文=大久)


L'Invitation au Voyage - Louis Vuitton TVCF

 フランスのルイ・ヴィトンが制作した新しい企業CMに、2014年1月からボウイが出演しています。流れている曲は13年発表の「I'D RATHER BE HIGH」ですが、このCMの為に録音され直した新バージョンがオンエアされています。仮面舞踏会とボウイ、というとどうしてもあの悪夢のような映画「ラビリンス」を思い出しますが、このCMに登場するアリゾナ・ミューズ嬢も、「ラビリンス」のジェニファー・コネリーもとんでもない美人さんですね。ったく。
BRIT AWARDS 2014 BEST MALE VOCALIST

 2014年のブリット・アウォード「ベスト男性シンガー」の授賞式。ノミネートされた他のイケイケでイケメンのアンちゃん達を差し置いて、もうすぐ68歳になるボウイがこの賞の受賞者となりました。が本人が式に参加せず。名代としてトロフィーを受け取ったのはケイト・モスですが、彼女はなんと1973年グラムロック時代にボウイが着ていた衣装(ホンモノだそうです)を身につけて登場。とんでもないサプライズですね。素晴らしい。ノエル・ギャラガーがただの田舎者のアンチャンに見えますもんね(笑)。

David Bowie - Sue (Or In A Season Of Crime)

 さて、歌手ですからここで新曲を。以前もチラリと書きましたが、今年ボウイが発表した新曲は2曲のみで、こちらが14年11月末にシングルカットされました。「BOWIE DOES JAZZ」という見出しが英音楽誌を飾ったのですが、そのとおりジャズ作品で、こちらの公式PVは4分ですが、全長版は7分あります。バックの演奏はマリア・シュナイダー・オーケストラが担当。推測ですが、おそらくこの曲は今後のマリア・シュナイダー・オーケストラの持ち曲にもなるのではないでしょうか。楽しみですね。
David Bowie / 'Tis a Pity She Was a Whore

 上記シングル「SUE」はなんと10インチのアナログで発売されましたが、そのカップリングに収録されたのがこちら。ケタタマしいリズムが強烈ですが、おそらくこのヘタ糞なピアノとサックスはボウイ本人の演奏かと思われます。この曲に関して本人いわく「もしヴォーティシスト(渦巻派)の連中がロック・ミュージックを作ったら、こんなカンジになるんじゃないかな」とのこと。NYのアパートでケッタイなオブジェの石ころを大量に買い集めてるアートなボウイさん、さすが言うことが違います。
David Bowie - Nothing Has Changed Trailer

 2014年の年末に、ボウイの活動50年を記念してベスト盤が発売されました。前述通り50年間の期間中近々の10年はヒキコモリしてましたから活動は何もなかったのですが、タイトルは『NOTHING HAS CHANGED』。ったく、なんつータイトルつけやがるんだ。ヒネクレてますよねえ。収録曲はいつものカンジですが、なんと言ってもここ10数年間の中では最もジャケットが素晴らしい作品(右写真はアナログ盤ジャケ)であることは特記したいところです。


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