2015年4月24日(金)

 
ヒトコト劇場 #60
[桜井順×古川タク]







 
国内事故史【1】


 ライヴ・アルバムといえば、ライヴをそのまま収録して音盤化していると思われている節があるが、実際には後からオーヴァー・ダビングをしたり、演奏を差し換えたりすることも多々ある。ただしそれは、マルチ・トラック化された70年代後半以降で、まだ少ないトラックでレコーディングしていた時代には、演奏を

ミスしてもそのままレコード化されていた。
 プロのミュージシャンとはいえども人間、失敗することは誰にでもある。ただアマチュアのミュージシャンとの大きな違いは、そこからのリカヴァリー力。オーディエンスにミスと気づかせぬようなリカヴァリー力はプロならではのものだ。
 そんなミスをレコード化

されてしまうのは、ミュージシャン本人も不本意だと思うが、スケジュールの関係からか、けっこうそういったミスが残されている。中には大惨事といえそうなものも。
 その事故のひとつは、榊原郁恵『ホット・サマー・ドリーム』(79年)に収録されている。事故はB面の最終曲「ラブジャック サマー」で起こった。このアルバムは、79年8月25日に日比谷野外音楽堂で行われたライヴを収録している。演奏は井上修一とミルキー・ウェイが担当。イントロからノリノリで始まったこの曲、榊原郁恵が若干走り気味で歌に入ってしまったのが事故原因の一つである。その為、ドラムスが走りに合わせてテンポをアップさせてしまい、レコード音源とは比べ物にならないアップ・テンポになってしまっ

た。悲惨な状況だったのはベースだ。当時日本でもまだ少なかったスラップ奏法を導入したモダンなアレンジだったが、奏法が生まれて10年ほどだったため、奏法自体まだそれほど進化していなかった。そのため、ハイ・テンポでのスラップ奏法は当時のプロ・ミュージシャンでもキツかったに違いない。おそらく、この当時世界中で最も高速のスラップが、この日の「ラブジャック サマー」だっただろう。その後、これほどの高速スラップを聴くことができるようになるには、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーが登場するまで待たなければならなかった。いわば、レッチリのルーツは榊原郁恵のライヴ・アルバムといえるのかもしれない。だめ?
(ガモウユウイチ=音楽ライター/ベーシスト)



居酒屋散歩12《吉祥寺・真希》

 今回の店は吉祥寺。この街は漫画家が多くいるので、何度か通ったところ。
 最初の作家はもう10年以上前の事で、楳図かずお。楳図先生の所はその後何年か通って30冊以上の作品を復刻した。彼とは会食しながらの打ち合わせを幾度かしたが、いつもイタリアンで、飲むのは赤ワイン。数件ひいきの店があり、それぞれ雰囲気の違う店だった。新居を建てるときは、外観が赤の縦縞で目立つということから噂になってマスコ

ミでも取り上げられたことがある。その時は近くのホテルに身を隠したので、打ち合わせはそのホテル内の店だったこともある。
 今回紹介するのは江口寿史と初めて会った時の店で7年ほど前の事。江口先生の作品は「パイレーツ」「ストップ!ひばりくん」などだったが、最初は居酒屋での打ち合わせだった。この「真希」は吉祥寺に2軒あるが、駅南口のすぐ近くの2号店の方。その後も機会あるたびに真希に通っ

たが、江口先生とはこの店で朝まで飲んだこともある。正確には覚えていないが、何かの本の打ち上げだったかもしれない。途中からと言っても12時は軽く過ぎており、ギャグ漫画家の田村信などを呼んで、明るく騒いで朝を迎えた記憶がある。
 先日は3月で退官した、井の頭自然文化園の成島園長の慰労会をするために吉祥寺に行った。入社したころは子供の図鑑を担当していたので、動物園の獣医と何人か仲良くなった。彼らは上野、多摩、井の頭の三つの動物園を転勤しながら順にリタイアして行き、成島園長はその最後の一人。皆良い飲み友達だった。
 日経新聞社のS氏と成島氏と3人で「真希」へ。偶然だが、成島氏がこの店を選んだのでびっくり。彼もお気に入りでたまに通うとのこと。早い時間だったの

で客は少なく好きな席を選ぶことが出来た。お酒のメニューが充実していて選ぶのに困るくらいだが、さらに肴も豊富で決めるのにしばし考えてしまう。まずはお通しを肴にビールを飲みながらメニューをめくって、お刺身から始めることにした。その後の飲み物は、S氏、成島氏は日本酒。私はハイボール。でも飲んでいるうちに日本酒、焼酎、ウイスキーなど3人ともごちゃ混ぜになり、つまみも天麩羅、卵焼き、かまぼこ、

おでん、焼きトンなど諸々。日本酒を呑んだ時に頼んだ生うにの磯辺揚げが酒にぴったりで、この時は日本酒をお代わりして楽しんだ。とにかく酒,肴の品ぞろえが良い。料金もリーズナブルなので安心して頼める。
 いろいろ飲んだり食べたりして大分良い気持ちになった所で、〆に。実はこの店は蕎麦、うどんが名物。ただ、これまでは〆の麺を食べたことがなかった。
 成島氏が食べようと言うので、今回初めての体験。

私が頼んだのはチーズカレーうどん。なんとこれが絶品だった。チーズによってカレーの味が濃厚になりウドン、汁ともあっという間にいただいてしまった。
 心地良い酔い加減になって満足感一杯で店を出た。3人ともまだいけるという感じだったので、北口に出てハーモニカ横町の成島氏の行きつけの店へ。狭いカウンターに並びコップ酒を御新香でゆっくり飲んだ。彼との付き合いも40年近くなるので昔話が尽きないが、何杯かお代わりしているうちに大分酩酊してきたので、1時間ほどで外に出た。
 久しぶりに楽しく酔った夜だったが、この日はいつもより飲みすぎてしまい体がそれ以上応えられない。まだ電車のある時間だったので、後ろ髪を引かれる思いで千鳥足で駅に向かった。
(川村寛=編集者)




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