大変、お待たせ致しました!
〈TV AGE〉シリーズ最新作が一挙3タイトル連続発売
筆者が企画・監修を手掛けている〈TVAGE〉シリーズ、4月にしてようやく今年最初のタイトルが発売される運びとなった。 今回発売されるのは、例によって企画から数年を経てようやく形になる3タイトル。 順に紹介すると、先陣を切る形で4月15日に発売さ
れるのが、我が国における冗談音楽、CM音楽の開祖・三木鶏郎の作品集「三木鶏郎 日曜娯楽版大全」(2枚組/発売・ウルトラヴァイヴ/品番CDSOL1624〜5)。これはNHKのラジオ番組『日曜娯楽版』『ユーモア劇場』のために制作された楽曲並びにコントを交えて編んだも
ので、三木の代表曲はもとより、今回が初音盤化という楽曲や既発曲のヴァージョン違いを豊富に選曲。当時番組に接した世代には懐かしく、若い世代には新鮮に響くであろう作品の数々を集めた。収録曲中で最も古い音源は、1951年4月1日録音だから、何と今から64年前。まさに貴重な音源のオンパレードである。曲によって音質にバラつきがあるものの、洗練されたメロディーとアレンジは現在の耳で聴いても何ら色褪せていない。改めて先人の偉大さを実感した次第だ。余談だが、本誌同人の桜井順、大森昭男、伊藤アキラの三氏は三木鶏郎門下生である。 ※ 続いて4月22日に発売されるのが「いずみたくPRESENTSブラックレコード大全」(2枚組/発売
・同上/品番CDSOL1630〜1)、そして「和田誠ソングブック」(発売・同上/品番CDSOL1632)の2枚。「ブラックレコード大全」は、作曲家いずみたくが主宰したレーベル〈ブラックレコード〉(配給はテイチク)で制作されたシングルAB面を集大成したもの。収録時
間の関係で数曲未収録曲があるが、そちらは現在も市場に出回っている既発商品でフォロー出来るため、ここでは初CD化曲を優先して編んだ(収録曲の大半が初CD化曲)。ちなみに、同レーベルのジャケットは全て、いずみたくとも親交の深いイラストレーターの和田誠が手掛けていたこと
から、本CDでも和田に依頼している。 ※ そしてもう1枚が、その和田が作曲した楽曲で編んだ「和田誠ソングブック」。八木正生、佐山雅弘、渋谷毅、山屋清、佐藤允彦らの編曲を得て光り輝く珠玉のメロディーが満載の本作、歌うはデューク・エイセス、坂本九、カルメン・マキ、森山良子、木の実ナナら実力派で、勿論初CD化曲、初音盤化曲も収録。一万字を越える自作解説も読み応え満点だ。 ※ 奇しくも同時期に発売される3タイトル、一見、無関係なようでいて、実は円環を成すがごとく、目に見えぬ糸で繋がっている。三木鶏郎を起点とするなら、いずみたくも前述の三氏と同様に鶏郎門下生で、いずみのレーベルでアートワー
クを担当した和田は、幼少時、三木が出演する「日曜娯楽版」やそこで流れる楽曲の大ファンだった。しかも後年、自らのプロデュースで「三木鶏郎ソングブック」を制作し、それを生前の三木はいたく気に入っていたという。ちなみに「三木鶏郎ソングブック」も
〈TVAGE〉シリーズの1枚として昨年発売済みである。 さて、本シリーズ、年内に複数タイトルの発売が控えている。引き続きご期待のほど。 (濱田高志=アンソロジスト)
古本屋で買った本『空飛ぶ円盤と宇宙』2
著:T・ベサラム/訳:久保田八郎/刊:高文社
(前回より続く)日本でUFO=空飛ぶ円盤の目撃談を紹介した本としてはおそらく最初期のものと思われる『空飛ぶ円盤と宇宙』なる本。刊行は昭和32年。巻末の広告を見ると、やはりUFO目撃者として名高いアダムスキー氏の著書も同じ版元から出ていたようです。おそるおそる読み始めてまず驚いたのは、著者名のTは〝トゥルーマン〟のTであったということです。これは〝正直太郎〟みたいなものでしょうか?
序盤はUFOとまったく無関係なT氏の細かい生い立ち、そしてT氏がいかに誠実で、周囲から信頼された人物であるかが本人の言葉で語られます。さらには工事現場で技術者として働く彼が上司から渡された派遣先への推薦状まで登場して、これから話すことをどうか信じてほしいという気持ちがひしひしと伝わってきます。言えば言うほど胡散臭くなるような気もしますが、信じてみないことには話が進みません。まったくうま
くできています。 そして本題のT氏によるUFO目撃談に入るのですが、ここはあまり重要ではありません。内容としては単身赴任先のネヴァダの砂漠でUFOを目撃、さらにUFOの乗務員と接触、アウラ・レインズと名乗る女性船長と顔見知りになったりするのですが、いくら正直者で通ったT氏の話でもそう簡単に信じられません。むしろ、職場で〝円盤男〟とアダ名されたり、別れて暮らす妻との仲が徐々に悪化していく描写のほうがリアリティーがあります。ある晩に円盤の表面に触れた作業服が一度のお洗濯でボロボロになってしまうところなどはホラーっぽくて面白かったです。 さて、事態はラスト8ページで急展開を迎えます。周囲の信用を得られず、頼みの綱の円盤も現れてくれ
ず、もはやこれまでと思われたT氏の元に1枚の手紙が届きます。差出人はなんとアダムスキー教授。彼のはたらきによってT氏の証言が広く公表され、おかげで周囲の理解も得られ、妻との関係も修復され、めでたしめでたし……『ニッポン無責任野郎』を思わせる大逆転に呆気にとられている間に本が終わってしまいました。訳者の久保田八郎氏は日本でかなり早い段階でUFOの紹介に務めた方で、実はこの本も氏の遺族が運営されているサイト(※)に、訳者あとがきを含む全文が掲載されています。ただ、手元の現物では明記されていた日本のUF
O研究者に関する部分がそっくり削除されており、彼らの名前を調べると内部分裂の後カルト化したという「宇宙友好協会」なる団体の情報に突き当たるのですが、それはまた別の話。ともあれ、僕のようなニワカが面白半分で手を出すにはあまりに闇が深すぎました。 先日、東京古書会館の即売会で、これまた巻末の広告に載っていた翻訳物のエッチな小話集「セックスティーン」シリーズを発見したのですが、そのときは決心がつかず買えませんでした。今になって後悔しているので、改めて入手した暁にはこの場でご紹介できたらと思います。 (真鍋新一=編集者見習い) ーーーーーーーーーーーー (写真上)原書書影。 (写真中)著者のトゥルーマン・ベサラム。 (※)www.gasite.org
居酒屋散歩11《神楽坂・野菜食堂サクラサク》
神楽坂の店は今回で3件目。この街には多くの飲食店があり、良いお店も多いということだろう。 神楽坂を上ってゆくと左手に毘沙門天があるが、その向かいのビルの4階。看板を見ながら行かないと通り過ぎてしまうかもしれない。エレベーターを下りるとすぐ入口。店内禁煙なので、入り口の喫煙コーナーを見ながらドアを押す。 ここは2013年に「コミック版・ドクトルマンボ
ウ昆虫記」をやった時が最初で、原作の北杜夫の著作権管理をしている新潮社で打ち合わせの後に飛び込みで立ち寄った店。「昆虫記」は、虫好きの手塚治虫の薫陶を受けた手塚プロの小林準治氏に漫画を描いてもらい、養老孟司氏の解説を入れたもの。まさに虫オタクの方たちで作った本。新潮社から坂を下りてきて、この店に何となく入ったのだが、そこは有機野菜が目玉の店で、中高年世代どっぷ
りの身としては、肉でなく野菜料理を肴に飲めるので気にいり、それ以後通うようになった。 先日行った時は、イラストレイターのT氏と二人で中に店内に。数人掛けのテーブルが幾つか並んだ明るく清潔感のあふれる洋風居酒屋といった感じだ。年のせいか早く来るのが習い性で、窓に近い4人掛けの席に落ち着き、ビールを飲みながら若い二人の編集者を待つ。何度も頼むのが面倒なのでいつもコース料理にしている。同世代だけの時は、野菜料理中心(メインがバーニヤカウダ)の8品セットに飲み放題を付けたコースにしている。ビールでもワインでもカクテルでもなんでも飲めるので、とてもリーズナブル。ただ今回は若い世代もいるので肉や魚の入ったコースを予約。ワインも手軽な値段なもの
が多いので、料理に合わせて頼むことにした。 ほぼ時間通りに来た二人が席について改めて乾杯。すぐオードブルが来て、ビールを味わっていると、魚のカルパッチョが出てきたのでワインをオーダー。4人なのでボトルにする。この店の特色である有機野菜のサラダや鳥のもも肉などをいただいているうちに2本目のワインが空に。若い二人につられて中高年のこちらもついピッチが上がってしまう。そしてメインのウニのチーズフォンデューに移るころには3本目のワインを味わいながら、ウニの中に野菜スティックをいれて野菜三昧。野菜のほかにもパンや餅もあって口休めが出来る。またウニの濃厚さが、ワイン自体を味わい深いものにしていて、どんどん進んでしまう。そして最後の〆のチーズの効い
たリゾットで満腹。と思ったのだが、若い二人につられて、さらにタルトを追加。酒は少し強めのグラッパをグラスで。 最後のコーヒーをいただきながら、今日は何種類の野菜を食べたのか考えたが、10種以上は確実に食べている。しかし色々出てきた割には、食べ過ぎたという気持ちが少しもなく、心地良い酔い心地。 店を出て不断だとほかの店に立ち寄るのだが、この時は前日に深酒をしてしま
ったのでおとなしく坂を上って神楽坂駅へと向かう。大久保通りを渡ってすぐの所に、なんと「さくらさく」という先ほどと同じ名前の店があった。こちらは魚を炙って出す居酒屋らしい。昔はこの店は同じ系列だったそうだが、今は別経営とのこと。この時覗いたら人もたくさん入っていて人気がありそうだったので、近いうちに覗いてみようと思っている。 (川村寛=編集者)
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