てりとりぃ放送局アーカイヴ(2015年8月7日〜2015年8月21日分)

 アメリカで人気の深夜トーク・バラエティー番組に「トゥナイト・ショウ」があります。1954年放送開始、司会者の代替えを幾度も経ましたが、現在ジミー・ファロンという司会者(6代目)になっても人気が衰えることはありません。アメリカでは平日日付が変わる時間帯は皆このバラエティーを見る人も多いことでしょう。で、今回はその最新の司会者に変わってからの「トゥナイト・ショウ」特集です。ええ、アメリカの地上波のお笑いってのはこんなもんです(笑)。笑えるかどうかはこの場合どうでもよくて、こういうのにこんだけ金かけて、そしてこういうスタイルが老若男女に大人気、というカルチャーを今一度確認しよう、という特集です。(2015年8月7日更新分/選・文=大久)


Billy Joel and Jimmy Fallon on Tonight Show

 実は「トゥナイト・ショウ」は番組を自身のYOUTUBEチャンネルにて公開(とはいえ全編ではなく主要部分に限られますが)しており、世界中の誰もが楽しむことができます。で、まずこちら。ビリー・ジョエルがゲスト出演した回での、サプライズ・セッション。iPadのループ・サンプラー・アプリを使って即席でドゥワップしましょ、という場面。曲はお馴染みの「ライオンは寝ている」です。ビリー・ジョエル。お元気そうで何よりです。

Nip Syncing with Terry Crews

 司会者ジミー・ファロンさんはコメディアンでもあるので、歌だけでなく体を張ったお笑いにも意欲的な方です。同番組ではリップ・シンク(口パク)のコント・コーナーが定番でありますが、こちらは更にひとヒネリして、ニップ・シンク(乳首歌唱)にトライした場面。共演者テリー・クルーズは大バカな大絶叫CMで知られる筋肉タレント。


Evolution of Mom Dancing Part 2 (w/Jimmy Fallon & Michelle Obama)

 わざと古くさくてダサい服を着て、古くさいダンスを披露するというコーナーも同番組の人気コーナーです。で、この回はなんとファーストレディーのミシェル・オバマさんが登場。大間抜けな司会者にとことんつき合って夫人も大間抜けなダンスを披露しています。そういえば余談ですが、「笑っていいとも」に日本の総理大臣が生出演したときにも、こんなカンジのあか抜けたパフォーマンスはさすがになかったですね。

U2 Busks in NYC Subway in Disguise

 こちらはドッキリ企画。あのU2のメンバーが司会者を連れ立って、変装してNYの地下鉄駅構内でバスキング演奏したら、通行人は気付くか?というものです。誰がやってるかは知らなくても、こんだけ上手に歌歌ってたらそりゃ皆立ち止まりますよね。この場面がやらせではない、ということは、同じ場面を素人さんが自前スマホで撮影した動画でも確認できます。

Two Neil Youngs Sing "Old Man"

 日本でもよくある「物まね歌唱中にご本人登場」みたいなものです。ニール・ヤングの物まね(これがまたバカ上手)をする司会者にも驚きますが、本人登場、しかも本人の40年以上も前の曲を本人が「自分の若い頃風に」演技しながら歌う、という点にも驚きますね。

"Ew!" with Ariana Grande

 同番組では「現代の10代少女達」を演じるオバカなコント・コーナー「EW!」も人気。こちらは文字通り全米のティーンズの話題を完全にさらってしまう人気者、アリアナ・グランデとのコント。アリアナちゃん、今から3年前に当欄で触れた事がありますが、今や彼女も22歳。その人気は3年前とは比べ物になりません。ちなみに同コーナーでテイラー・スイフトと共演した時の映像がこちら。テイラーさんが、田舎者のダサ少女を演じています。


*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。




 レスリー・チャン(張國榮)。香港を代表する歌手/俳優さんです。本人は英国留学を経験し、カナダ国籍を取得してはいるものの、基本的にアジア・マーケットで大人気のタレントさん。悲劇的な最後(03年に飛び降り自殺)のせいもあり、シリアスなファンが日本を含め世界中に今も多くいますが、すいません当方はそれほどシリアスなファンではありません。ですが今回は彼が80年代に残したカヴァー楽曲に着目してみました。いやあ、ある意味日本以上に「80年代色」全開バリバリです・・・。(2015年8月14日+8月21日更新分/選・文=大久)



張國榮/风继续吹(1983)

 77年にドン・マクリーン「AMERICAN PIE」のカヴァーが話題となり歌手デビューしたレスリー。70年代には多くの英米有名楽曲カヴァーに加えあの「セクシー・バスストップ」のカヴァーなんかも残していますが、香港で歌手・レスリーの人気はバラディアーとして開花します。そのきっかけとなったのがこちらの山口百恵「さよならの向こう側」のカヴァーでした。
張國榮/戀愛交叉(1983)

 もちろん動画に出てくる映像・演技にも言いたい事は山ほどありますが(笑)、本稿ではそこには一切触れないことにします。香港、シンガポール、韓国で大人気となったレスリー・チャンが83年に発表したこの曲は、もちろん郷ひろみ「HOW MANYいい顔」のカヴァー。日本の昭和歌謡以上に「昭和」しまくったこのオケに脱帽です。同作収録のアルバム『一片痴』には浜田省吾のカヴァーも収録。
張國榮/H2O(1984)

 84年にアルバム『LESLIE』が発表されましたが、同作には郷ひろみ「ヒストリー」「ほっといてくれ」のカヴァーに加え、沢田研二「TOKIO」のカヴァーも収録。動画は同年「第四季劲歌金曲季选」という音楽祭出演時のライヴ。いやあ凄いです。まるでアニメの中に出てくる「アイドル歌手」キャラを見てるような錯覚に陥りますね。この曲がシングルとしてプッシュされたため、アルバム『LESLIE』のジャケは水中撮影になったとのこと。

張國榮/Monica(1984)

 そしてジャパニーズ・ロック路線で最大のヒットとなったのが、この吉川晃司「モニカ」のカヴァー。再度言いますが、映像の中身には今回は一切触れません(笑)。サンタモニカの空気を一切感じさせない、この湿気ムンムンの「モニカ」のカヴァーは中毒性高いですね。文献によればこの曲が大ヒットしたことで同国のトップ・アイドル、アラン・タムとのライバル関係が激化、以降ファン同士が喧嘩しまくるという事態になったとのこと。
張國榮/不羈的風(1985)

 大ヒットしたのだからその路線を続けましょう、というわけで吉川晃司のカヴァーをもう1曲。85年、デジタルロック色(笑)を強めたアルバム『FOR YOUR HEART ONLY(為你鍾情)』に収録されたこちらは吉川晃司「LA VIE EN ROSE」のカヴァー。実はとても不思議なことに、レスリーはこの曲を87年にももう一度カヴァーしており、その際には歌詞も新たに「停止轉動」という曲として再録音されました。
張國榮/少女心事(1985)

 同作にはなんと清水宏次朗「SAYONARA」のカヴァーも収録。この曲は清水氏が「ビーバップ〜」でブレイクする前年に発売したシングルB面曲なので、それほど有名ではないかもしれませんが、ここに目をつけるとは凄い。シンガー自身のキャラという意味ではジェントル&スイートなムードのレスリー・チャンと清水宏次朗氏は真逆だと思うのですが。

張國榮/第一次(1985)

 女性歌のカヴァー。中森明菜「禁句」に挑んでいます。オリジナルは83年発表で細野晴臣と萩田光雄のアレンジですから、NOBODY+大村雅朗のコンビで制作された初期吉川晃司楽曲群ほどの先鋭度/洗練度は元々ないとも言えますが、このほうがアジアン・ポップスとして馴染みますね。ちなみにこちらの曲も、87年に「背棄命運」と改作・改題されて再録音。また88年には中森明菜「ミック・ジャガーに微笑みを」のカヴァーも残しています。
張國榮/甜蜜的禁果(1985)

 杏里「CAT'S EYE」のカヴァーです。日本ではアニソン初のミリオンセラー・シングルとなってことでも知られる「CAT'S EYE」ですが、やはり時代感を完全に反映したこのアレンジは強烈です。オリジナルは作曲・小田裕一郎、編曲・大谷和夫ですが、その辺りは崩さずに香港版も録音されたようですね。

張國榮/請勿越軌(1987)

 ちょっと間が開きましたが(この間にも数多くの日本楽曲のカヴァーを残してますけど)87年に発表されたアルバム『SUMMER ROMANCE』に収録された、荻野目洋子「湾岸太陽族」のカヴァーです。同作には安全地帯「じれったい」のカヴァーも収録されていますが、さすがに87年ともなるとアレンジのほうもコナレて来たカンジが有りますよね(笑)。
張國榮/Hey! 不要玩(1988)

 最後はやっぱり吉川晃司楽曲で(笑)。人気の頂点にいたとも言える88年に発表された『Hot Summer』収録曲で、吉川晃司「PRETTY DATE」のカヴァーです。同作にはマドンナ「HOLIDAY」のカヴァーなんかも収録。当時のレスリー・チャンの楽曲制作には日本人スタッフが多数関わっており、本作にも松原正樹、今剛、佐久間正英等が制作に参加しています。



*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。