2016年2月5日(金)


ヒトコト劇場 #76
[桜井順×古川タク]









買い物日記[14]




 初めてレコード屋で見たときは驚いた。それ以来レコード屋で見たときは内容は関係なく必ず買うようにしている。CDと同じくらいの大きさ、5インチくらいのレコード。ビクターなら、ニッパービクターレコード。テイチクなら、テイチクポケットレコードという名前になる。おそらくこの二つのレコードは同じ時期に作られたのだろう。テイチクのレコードには表記がないが、ビクターのレコードには56、57、58年までの表記がある。このサイズなのにソノシートではなく、ちゃんとした塩化ヴィニール製なのが嬉しい。しかも音がしっかりしていて、45回転なのに割と長めの曲が入っている。
 レコードの内容は、ジャズ、ハワイアン、合唱、童謡、軍歌などと、いろいろ。池田操とリズム・キングの

「黄金の腕」、与田輝雄とシックス・レモンズ「カクテル・フォー・ツー」なんかは5インチとは思えないほど音がしっかりしている。ダーク・ダックスも素晴らしい。「第三の男」、「匕首マッキーの唄」、水原美沙子と歌う「十六トンの人生」、バックはすべて、グリーン・アイランド・オーケストラが演奏をしている。三つとも洋楽を日本語で歌っているけれど、「第三の男」には広瀬健次郎編という表記のみ、「十六トンの人生」には清水みのる訳、久我山明編という表記。「匕首マッキーの唄」には表記がない。
 沢たまきのレコードもある。エルヴィス・プレスリーが歌う「アイ・ウォント・ユー、アイ・ニ一ド・ユー、アイ・ラヴ・ユー」のカヴァー「貴方なしでは」。B面はディック・ミネとの

デュエット「バス停留所」。水原美沙子、水原一美はグレン・ミラーの「ペンシルバニア6ー5000」をカヴァーしている。ヴォーカル入りだからアンドリューズ・シスターズのカヴァーだろうか。バッキー白片はテイチクのポケットレコードで何枚もハワイアンを出

している。テイチクレコードの「ポケット」ヒット曲目には、まだ持ってない5インチがたくさん載っている。小さいレコードは音が悪いのかと思っていたけど、小さくて音が良いのだから可愛くて仕方がない。
(馬場正道=渉猟家)



70年代B級ハード・ロックの夕べ 02(改)


 「病気のために普通の人より2オクターブ高い声しか出なくなった」という売り文句につられて聴いたら実際には最高音A5音という、グレン・ヒューズやイアン・ギランより低かったというデヴィッド・サーカンプ率いるパブロフス・ドッグ。声質が中性的でブライトリーな声のため、実音以上に高く聴こえる。それでもラッシュやロバート・プラント以上に高いが。とはいえ、『禁じられた掟』

(75年)は、収録曲のほとんどが日本人好みな叙情的な美メロ満載で、結果的にファンになってしまった人も数多い(私です)。なお、フランスのバンド、タイフォンでも同様の現象が報告されている。ちなみに、2枚目の『条件反射』には、ビル・ブルーフォード(ブラッフォード)や、マイケル・ブレッカーがゲスト参加しているが、彼らの演奏が全然聴こえないのもポイントだ。結局、メンバーの

個性を活かしきれずバンドは空中分解。再結成して、しぶとく現在でも活動中。
 ツイン・ドラムを売りにして74年にデビューしたのがミスター・ビッグ(同名のアメリカのバンドとは別)だ。ハード・ロックとアナウンスされていたが、実際に聴いてみるとポップで英国臭を感じさせるメロディに、結果的にファンになってしまった人も数多い(私です)。ところがセカンド・アルバムでは、ドラマーがすでに2人いるのに、ジム・ケルトナーとサイモン・フィリップスという超一流ドラマーを2人も呼び、ドラマー4人も参加という迷走っぷりでバンドは空中分解。再結成して、しぶとく現在でも活動中。
 ポスト・レッド・ツェッペリンのキャッチ・フレーズでシーンに登場したのが、元フリードウッド・マック

のボブ・ウェルチによるパリスだ。76年にデビュー作『パリス・デビュー!』をリリース、ウェルチのヴォーカルはロバート・プラントっぽいが、芯が細いせいかいささかしょぼい。さらには、「ブラック・ドッグ」ならぬ、「ブラック・ブック」というタイトルもしょぼい。但し、ハード・ロックらしからぬメロディアスなメロディとツェッペリン・サウンドの融合に、結果的にファンになってしまった人も数多い(私です)。メンバーが、就職してしまったためバンドは空中分解。3枚目用の楽曲をウェルチはソロ名義で『フレンチ・キッス』としてリリース、200万枚の大ヒットを記録するが、健康を害して悩んだ末、12年に銃で自殺した。
(ガモウユウイチ=音楽ライター/ベーシスト)