ロック路線で英米の屈強な才能に敵う事は難しかったのかもしれません。しかし、時代が動き77年。アメリカへの進出を狙って大胆にディスコ路線に舵を切りました。この路線にまたしても意気投合したのはジャン・ミシェル・ジャールでした。ただし、このディスコ路線が契機となり2人は別れることになるんですが。 Patrick Juvet / Got A Feeling (1978)
実際に居をアメリカに移したパトリック・ジュヴェはNYの有名ディスコ「STUDIO 54」にてジャック・モラーリと知り合います。モラーリはフランス人ですが75年にアメリカでヴィレッジ・ピープルやリッチー・ファミリーを大成功に導いたディスコ・プロデューサー。そりゃあそちらになびくってモンですよね。この頃から楽曲も英語詞がメインになり、いよいよ世界進出ということに。 Patrick Juvet / I Love America (1978)
そして遂に世界的大ヒットが登場。モラーリ&ジュヴェのコンビはベタなテーマとベタなディスコ・アレンジで世界を席巻することになります。動画中サンセット大通りが出てくるように、ジューヴェはLAに住んでたのですが、音が東海岸ディスコだというのも面白いですね。 Patrick Juvet / Lady Night (1978)
以前「I'M SO GLAD」という戦前ブルース曲のカヴァー聴き比べをやりましたが、今回は「ON THE ROAD AGAIN」というエレクトリック・ブルースを題材にしてみます。オリジナルは1953年の発表曲ですから、エレクトリックといってもそんなジャカジャカとバンド・サウンドやってるわけじゃないんですが、現代にいたるまで長く歌い継がれるこの曲の変遷をお楽しみ下さい。(2016年4月1日更新分/選・文=大久)
とはいえ、この「ON THE ROAD AGAIN」が一躍有名になったのは、もちろん60年代末にキャンド・ヒートがカヴァー・ヒットさせた時。サイケデリック・ブルースの筆頭ナンバーとなったこちら、メイン・ヴォーカリスト(ヒゲ面の熊男のほう)ではなく、ギタリストの方がファルセットでナヨナヨと歌ってみたら大ヒット、という面白い結果となりました。
Rockets / On the Road Again (1978)
さらに10年を経て、またもや大胆な模様替えを施して大ヒットしてしまったこの曲。おフランス出身の奇妙奇天烈スペース・テクノ・バンド、ロケッツのテクノ・カヴァーです。いやー最高ですね。音も最高なのですが、やはりこのルックスは何物にも代え難い美しさ。衣装とメイクの点では米国のKISSも似たようなものですが、ヘアスタイルはKISSにも勝ってますね! このロケッツの盤は、アメリカではサルソウル・レーベルから発売されています。 Telex / On the Road Again (2006)
あれ、ブルース・クラシックの聴き比べなのに変だな、と思われた方。勘がいいですね。実は今回はこの曲のテクノ版をいろいろ紹介したいと思って並べてあります。スイマセン。で、こちらはベルギー出身なのにノイエドイチェベレに分類されるニューウェイブ・ユニットのテレックス。06年にいきなり大復活を果たし、発表した『HOW DO YOU DANCE?』のリード・シングル。ロービットのシンセ音にも奇妙なマッチングを見せる曲ですよね。 Hisko Detria / On the Road Again (2012)
こちらは無名の方ですがBandcamp周辺で楽曲披露しているHISKO DETRIAというアーティストによるカヴァー。12年に『STATIC RAW POWER KRAUT』というド渋なエレクトリック・サイケのミニ・アルバムを発表していて、そちらの収録曲です。ブルースがサイケになり、サイケがテクノになり、テクノがクラウトロックになる、というもの凄く分かりやすい音楽の循環、ですよね。21世紀にこういうジャケを新作で見ることが出来る、というのももう驚かなくなってしまいました。いい時代です。 Jack Broadbent / On The Road Again (2015)
メンバーも増員し、新体制となった86年に発表したノーマン・グリーンバウムのヒット曲カヴァー「SPIRIT IN THE SKY」がなんと全英1位の大ヒットに。ご覧のように70年代グラム・ロックのエレメンツをあちこちに鏤めながらも、80'Sギターポップの世界にちゃんと通用するポップ・ロックとなっています。当時「モリッシーに続く新たなヒーロー登場」みたいな宣伝文句も使われてましたね。
Doctor And The Medics / Hi Ho Silver Lining (1990)
とはいえ美しくも儚い1発屋の世界。90年代には早々にシーンから忘れられた存在となってしまいました。90年代にはマンチェスター・テイストを取り込んでこんなカヴァー(オリジナルは67年のジ・アタック。直後にジェフ・ベックがカヴァーしたことで有名な曲)をリリースしていますが、まあ案の定惨敗でした。この曲、サッカーの応援歌として当時有名になった曲なので、そこに便乗しようとしたのかも知れませんね。 Doctor And The Medics / You Spin Me Round (Like a Record) (2015)
ですが前述した通り、実はバンドは現在にいたるまで存続しております。昨年春に発表された新曲は、なんとデッド・オア・アライブの80年代を代表するダンス・ナンバー「YOU SPIN ME ROUND」のハードロック・カヴァーでした。ったく、こいつら何も変わってないですよね(笑)。素晴らしい。ちなみにオリジナルメンバーで今も残っているのはヴォーカルのドクターのみですが、オリジナル・ベーシストだったリチャード・シアールは91年にコーデュロイを結成しアシッド・ジャズからデビューした人でもあります。