以前レトロなリズムマシン特集てのをやったことがありますが、今回はシンセを特集します。とはいえレトロなシンセというのは膨大なサンプルとウンチクがあるので、とても本稿であれもこれもとご紹介できる類いのジャンルではありません。そこで今回は「メロトロン」だけ、をご紹介してみたいと思います。メロトロン、いいですよね。音もいいんですが、なんと言ってもあの馬鹿馬鹿しい発想がもう素敵です。しかもその馬鹿な発想でもって一世を風靡したという点がさらに素敵。(2016年4月22日更新分/選・文=大久)
VIDEO MELLODRAMA: Mellotron/Chamberlin Documentary Trailer
以前のリズムマシン特集の際に、チェンバリンというブランドのブツをご紹介しましたが、そのチェンバリンが製造したリズムマシンが、あのメロトロンの大元のアイデアとなりました。鍵盤の数だけテープリールと再生ヘッドが存在しそれぞれを発音するというそのシステムは、当時はまさに画期的だったものです動画はメロトロンの製造逸話をまとめたドキュメンタリー映画『メロドラマ』トレイラー。
VIDEO Mellotron MkII
チェンバリンはアメリカのブランドでしたが、その最新機材を研究・発展したのがイギリスのブラッドレー3兄弟。チェンバリンが開発したリズムボックスを、リズムではなく鍵盤楽器として改良したわけですね。動画はメロトロンMK2と呼ばれる初期のブツ。なんといっても演奏している曲が素晴らしいわけですが(笑)実際にこの曲のオリジナル録音でメロトロンを演奏したのはリック・ウェイクマンでした。
VIDEO Paul McCartney shows the Mellotron
さて、当方のような鍵盤の素人がウンチクを語っても説得力がありません。というわけでプロによるデモンストレーション。ポール・マッカートニーがメロトロンを実際に人前で説明しデモ演奏を行なっています。とはいえ、即興のデモ演奏ではなく、後半で実際に披露される「Strawberry Fields」の生演奏こそがこの動画の最大の見所なんですが。
VIDEO King Crimson and Mellotron
さてさて、そのビートルズをオールドファッションな存在に陥れたとして知られる(笑/でも実際そのとおりだと思うのですが)キング・クリムゾンですが、彼らはメロトロン2台使いというバンドでした。動画はイアン・マクドナルドと友人だという、イングランドのキーボード奏者ロバート・ウェブによるメロトロン紹介動画。日本語字幕付きですので、初めての方にも判りやすいかと。
VIDEO Mellotron 4000D
いかがですか。メロトロンって現代に再現するにはあまりにも無駄が多すぎる機構であるとお分かりかと思います。今は21世紀。あんなアナログこの上ない機材をそのまま再現するのは無謀です。というわけで、2007年に蘇った最新式メロトロン。外身は往年のブツそのままに、内部を完璧にデジタライズして再生しました。でも笑っちゃうのは、テープ回転を司るモーターの制御がデジタル化されただけで、実際にはテープが内部で廻って発音するという機構はそのままなんです。実際にテープが廻ってる、それがもうロマンなんですよね。
VIDEO Electro-Harmonix Mel9 Tape Replay Machine
そしてもうひとつ最新機材をご紹介。なんとギターであのメロトロンの音が出せるという衝撃の小箱。これで3万円ほどするのですが、往年のオリジナル・メロトロンは100万円でも買えず、デジタル版も数十万円します。これで「何をどうする何の意味あんの?」っていう問題ではありません。ギターでメロトロンの音が出せる!それだけのロマンのために存在する呆れた小箱です。
*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。