[桜井順×古川タク]
古書雑感
寺山修司が亡くなってから、来年でもう三十年も経つそうである。すでに隔世の感すらあるが、昨年、蜷川幸雄演出による「身毒丸」再演(矢野聖人、大竹しのぶ、他出演)や「あゝ、荒野」の初舞台化(松本潤、小出恵介、他出演)が実現している。今年に入っても、2月にはJ・A・シーザー率いる演劇実験室◎万有引力が「奴婢訓」を久しぶりに上演予定であるし、5月は、そのJ・A・シーザーのコンサートがなんと、三
十年振り(!)に行われるという。彼の死後、何年経とうとも、その作品は、今もなお脈々と受け継がれているようだ。 先日、神保町の古書店にて、寺山修司の『不思議図書館』と『幻想図書館』(共にPHP研究所発行)の2冊が廉価であったので、思わず購入してしまった。この2冊は、七九~八二年にダイナース・クラブ・カードの月刊会員誌「シグネチュア」に連載されていたものの単行本化である。当
時、父親に送られてくるその会員誌に彼の文章を見つけた私は、すぐさま虜になった。その後、文庫で出ていたのは知っていたのだが、当時、単行本化されていた事はまったく知らなかったので、三十年以上経ってから、その存在を初めて知ったことになる。 通常、私は本に関しては、利便性のため、文庫至上主義者で、めったに単行本は買わないのだが、今回は瞬時に購入を決めてしまった。その理由は装丁とレイアウトで、彼が主宰した演劇実験室「天井桟敷」等で、その美術面を担当していた粟津潔によるものだったからである。寺山修司が本書で紹介している書物の挿絵をコラージュした表紙は、正に、同様のコラボレーションを想起させた。2冊とも文章は既に全て読んでいるため、まさに、この装丁の
ために買ってしまったといっても過言ではない。 内容は、彼の独自のセレクトによる「奇妙な書物の紹介」である。その一例を紹介すると、「髭女の人生」「巨人」「フェチシズムの博物館」「ハーレム-女の年代記」などの海外の書物を中心に、そのテーマの内面に潜む真実を掘り下げている。タイトルからも分かる様に、彼の創作物のエッセンスがここに散りばめられていると言ってもいいかもしれない。 最後に、この「幻想図書館」の『書物に関する本の百科』の章で、本の蒐集家に対して、こう記してある。「本を物として愛蔵し、知識を私有財産のように貯えたがるのは病気なのだ」と。とはいえ、この2冊は古本蒐集家にとって、魅惑的な本であるのは間違いない。 ︵星 健一=会社員︶
『ディスク・コレクション レア・グルーヴ』発刊記念放談
カレーについて語ろう 大塚広子 X 駒形四郎 X 馬場正道
「月刊てりとりぃ」に掲載された、『レア・グルーヴ』執筆陣の大塚広子(DJ)、駒形四郎(ヴァイナルジャンキー)、馬場正道(狩猟家)によるカレー座談会。そこでは三人が、 一、立ち位置が大手メーカーに対しインディーズ 二、軍隊モノ、学校モノ、プライヴェート・プレスなど開発者が多岐にわたる 三、凝ったデザインが多くジャケ買い気分をそそる 四、セカンド・プレス以降とのジャケ違いもある
などなど、レア・グルーヴ心をくすぐる日本各地の〝ご当地カレー〟への熱き(歪んだ?)想いを語り合った。ここでは、尽きぬ話の続編を! * 駒形 地元の名産品ネタ(具)を使ったカレーが、複数の地元企業から発売されることもありますね。 大塚 岡山では小倉産業の「清水白桃カレー」、哲多すずらん食品加工の「白桃ピオーネ・カレー」、サンキ商会の「白桃カレー」な
ど、白桃だけで数種類あります。 駒形 愛知県では、八丁味噌を使ったカレーが数種類。岡崎市の老舗味噌屋、カクキューで知られる合資会社八丁味噌が「味噌カレー」を出していますが、そのカクキューの八丁味噌を使っ
て、豊川市の料理旅館呑龍が「八丁味噌カレー」、「ハヤシもあるでよ」でお馴染みのオリエンタルが「肉味噌カレー」を出してる。 大塚 ライセンスしたネタをサンプリングしてる。カクキュー味噌は定番ネタですね。 馬場 「味噌カレー」はサイトに出ているのと駒形さんが持ってるのとジャケが違いますね。 駒形 実は黒枠ジャケが市販版、サイトに出ている茶色ジャケは直販版で、中身自体も違うんです。 大塚 うーん、同タイトルのジャケ、アレンジ違い! 馬場 レア・グルーヴですね(笑)。 駒形 同じ図版とテーマを使ったヴァージョン違い、というのもありますよ。昨年、スキー発祥百周年企画の一環でとして新潟県が監
修した「レルヒさんカレー」は、湯沢町編、妙高編、上越市の3ヴァージョンがある。 大塚 リミックス的な発想ですね。 馬場 なんだか、集めろって言われてるみたい(笑)。 大塚 集めたくなりますよ。私はカレーを、家でレコードのダンボールに収納してます(笑)。でも、本棚収納って手もあるんですよ。池袋東武や大宮のエキュートって駅ビルにある北野エ
ースは、ご当地カレーをたくさん置いてるんですけど、棚に縦置きなんです。 馬場 古本屋で本の背表紙みてるだけで何時間もすごせるから、カレーの名前見てるだけで楽しそう。 駒形 各都道府県のアンテナ・ショップも要チェック。「北海道どさんこプラザ」にはスープカレーのコーナーがあります。 馬場 でもやっぱり地方に行けば、ネットやアンテナ・ショップには売っていないレアなものにも出会えますよね? 駒形 ただ、ご当地カレーの使命は地場産品の消費拡大や県外へのアピール目的が多いから、自治体や組合がネットなどで自ら通販してるケースが多い。とはいえ、ディガーとしては〝まだ見ぬカレー〟があると信じて堀り続けるしかない。地方のデパ地下にある、地
元の名店コーナーも侮れません。味噌や醤油の老舗が開発してカレーを自分の店で売っていたりします。 大塚 やはり旅ですね。 駒形 今は現行商品を追っているわけだけど、レトルトは長持ちするから、そのうち廃版を探すようになり
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